小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#64 外郭大地へ浮上計画




























ルーク side






ルークは…

今の状況を、全く理解できていなかった…

意識は…しっかりとある。

なのに……目の前の事が理解できない。

なぜなら…


(アッシュ?いるの?)


ティアの声が聞えてくる。

でも 自分自身をルークと呼ばず…アッシュと呼んでいる。



そして…



極めつけは鏡に映った自分自身の姿だ。


「ッ!? 何でオレ…アッシュの服なんか着ているんだ??」


そう…

ルークとアッシュは顔は同じ…

自分自身が写る鏡の前で確認をすれば…

そう錯覚するのも無理は無かった。





side out














「アッシュ?聞いているの?」

ティアが近付いてきた。

「聞えている。大声出すな。」

アッシュはそう言うと…

視線をベットに移す。

そこにいたのは…

(オレ!!何で?オレ…寝てんだ?どーゆうことだ??)

ルークはますます混乱した。

(少し静かにしていろ)

アッシュはルークにそう言った。

「とにかく… これからのこと… 市長に、おじい様に相談して。」

ティアはそう言うと、部屋から出て行った。










そして、アッシュはルークの方をみる。

そこにはミュウもいた。

ルークの側を…決して離れなかった。




(どういうことだよ!なんでオレ……アッシュの中に??)


ルークは…理解したようだ。

自分は意識があると錯覚しているが、倒れている以上自分自身の体ではない。

そして…

直ぐ側にアッシュも感じている。

即ち…

アッシュの【中】にいることは間違いないということを。

(俺とお前は完全同位体…つまりお前は音素振動数まで同じな完全な俺の複製(レプリカ)だ。)

アッシュはそう言う。

(っ!!俺は!!レプリカなんかじゃ!!)

ルークは必死で否定する…

自分が…

自分の存在が…劣化した…なんて、

(完全なレプリカとオリジナルの間には、フォンスロットを通じてつながりが出来る。お前のフォンスロットが俺のほうへ開くようにコーラル城で細工をした。)

ルークはあのときのことを思い出した。

そう…ディストの会話も…

(お…オレ…は…)

ルークは…言葉が出てこない。

(あれから何度か…オレの言葉が聞えていただろうが。そして、今…こうして繋がっている。)

この世界は所謂意識の世界、

普通ならば見えないフォンスロットが…

見えていた。

確かにルークとアッシュは繋がっている…

そしてアッシュは無情にも告げた。



(お前は俺の【レプリカ】なんだよ!)



そして、憤怒をむき出しにする!

(俺だって認めたくないがなぁ!!こんなクズが俺のレプリカなんてよ!!)

アッシュは怒りに任せ、ルークに手を伸ばした!

(ッ!!!)

ルークは…抵抗しようとしたその時!!



「ご主人様をいじめちゃだめですの!!」



現実の世界で…

ルークの目覚めを待っていたミュウは動けないルークの変わりに、アッシュの行動を止めた。

そんなミュウをみたアッシュは手をひっこめ…

「こんな事があっても… そんなどうしようもない奴をまだ主人と呼ぶのか…?」

そう言うが…

「僕のご主人様はルーク様だけですの!だから僕はずっとここにいるですの!!」

ミュウの意思は固い…

あんな事があっても…

決して離れない!

そう言いはなったのだ。

(ミュウ…………。)

ルークは…そんな優しい…ミュウをみて…。

思わず涙ぐんだ…。

「ふん…好きにしろ…」

アッシュはそのまま、市長の所へと向かった。


「ミュゥッ!!」


ミュウは胸をはっていた。

自分が…

起きない間ずっとご主人を守るのだというかのように。




そして…



ティアの部屋の外では…

「…」

アッシュを待っていたかのように立っていたのは…

「あの…私の事…覚えてまして…?」

ナタリアだった。

「…」

アッシュは…視線を逸らし…無言で立ち去っていった…

「あ…」

ナタリアはそんなアッシュの後姿を…悲しそうに見つめていた。










そして、別の部屋では……。

「アル… 調子は…どう。」

あれから…アルはずっと看病していたのだ。

自分も禄に回復などしていないというのに、

アルはサラの隣を片時も離れていない。

ティアが休むように促してもだ。

まるで…そう、ルークから決して離れないミュウのようだった。

「あ… ティア? うん… 相変わらず…だよ。綺麗な顔をしたまま…眠ってる。」

アルは…笑顔でティアにそう言った。

顔……表情は笑顔……なのだが………。

ティアには直ぐにわかる。

アルなりに…ティアに心配かけまいという風にしているのだ…

どう見ても…笑顔の奥に悲しそうな表情をしているのがわかるのだ……。

「………そう。 私は……私達はおじい様の所へ行っているわ… 何かあれば呼んで。」

ティアはそう言う。

「あ… うん。ティア……ありがとう。何から何まで…。」

アルは…悲しそうな顔が一瞬消え……感謝している……本当の笑顔になっていた。

「このくらいさせて… 私は…それ以上は…何も…」

逆にティアは…悲しそうな顔をしていた…。

今の今まで……彼は私達を守ってくれた。助けてくれた。

でも……本当に苦しいときに、傍にいる事しかできない自分に……無性に腹もたった。

そして、その表情はアルには見せないようにしながら…

部屋を後にする…


ティアが去った後……。

「ねぇ……サラ?聞こえる……かな? しってる?オレ……お兄ちゃんな?ずっと……ずっと……サラに会いたかったんだよ?……お話を…しよう…よ?元気な顔…見せてほしいな……。」

ずっと、サラに語りかける……。

「きっと……怪我をしてるんだよね……?今……治してあげるから……。」

そして……両の手に力を集中させる……

譜術を使うために。

第七音素……あの時アクゼリュスで使用した。

大規模な治癒の力だ……。



“パァァァァァァ…………。”



部屋中に光が満ちてゆく……。

それは優しい光……癒しの音素。

だが……

彼の今の状態で、それを使用すると言う事……。



それが意味するのは……………………。












【会議室】



会議室にティアが戻ってくる。

「ティア。アルの様子はどうですか?」

ジェイドがそう聞くと…

「まだ… 思わしくないわ。心の方も…体も………。」

ティアが顔を暗くさせながらそう言う。

「そうですか………」

ジェイドはそれ以上言わなかった。

ジェイドは…良くも悪くも全て淡白に仕事をこなす為、思ったことは何でも口にする性格なのだが…

今回ばかりは言葉を濁した。

「アル…元気になってくれるよね… その…サラちゃんも…」

アニスも辛そうだ。

「…大丈夫だ。生きていれば… きっとまた会えるんだ。必ず良くなる。それに…アルは強い男だ…きっと…」

ガイはそう言った。

彼を…信じている…

とも聞えてくるようだった。

「………僕も信じています、ですから、一先ず…この先の事は、僕たちだけで話し合いませんか?…アルに伝えれば…余計な心労をかけてしまいますから…。」

イオンがそう言うと…。

「ええ、それが良いでしょう。仮に、彼がここえ来たとしても、強制退去を命じますよ。幼い家族も彼を必要としているはずです。彼と……彼女が回復するまでは…ね。」

ジェイドはそう言い……今後について話し出した。

このような状況なのだが……今は今後についても大切な事なのだ。

第二、第三の崩落が起きてもおかしくない状況……。

アルには……本当に申し訳ないのだが………。

やらざるを得ないのだ。

この場でいる誰もが同じ気持ちだった。


























さらに暫くして…

次にアッシュがはいってきた。

「ちょうど良かった。今市長に話を聞こうとしていたところです。」

ジェイドがそう言うと…

「ええ!いいんですか?あの人……敵だったんですよ?」

アニスが不安そうに言う。

すると!

「【ルーク】は!!」

ナタリアが声を荒げる…

そして……自分の言った事をすぐさま訂正する。


「…アッシュは敵では私たちの敵ではありませんわ…」

そう言った…

思わずルークといってしまったのは…

仕方が無い事だろう。

そして、

「僕もアッシュは信じて良いと思います。」

イオンも同意見だ。

「そうですか〜?イオン様がそうおっしゃるなら…」

アニスは不安気味だったが…


「我々はどうしても…外郭大地へもどらなければなりません。その為の人手は大いに越した事は無い…」


ジェイドは眼鏡を上に上げる…

そして、市長の方を向いて。

「テオドール市長、タルタロスを外郭へ戻すことが出来るとおっしゃいましたね…?」

そう言う。

そう…

この先も海を越えることの出来る乗り物は不可欠なのだ。

タルタロスがあるのと無いのでは…今後にも影響が間違いなく出る。

そこで、市長に聞くと可能との事だった。

今回はその詳細を聞くために集まったのだ。

「タルタロスにフォニム活性化装置を取り付けた。一度だけならアクゼリュスが合った場所のセフィロトを刺激して…再びツリーを伸ばすことが出来るだろう。」

そう言った。

俄かには信じがたい事だ。

崩落した大地を目の当たりにした以上…仕方ないだろう。

「そんなことが可能なんですかー?」

だからこそ、アニスはそう聞いていた。

そして、代わりに答えたのはイオンだ。

「セフィロトというのは、セルパーティクルが吹き荒れている場所です。それを…人為的に強力にしたのがセフィロトツリー…つまり柱です。」

そう言うと…

「それが消えたからアクゼリュスは崩落したんですよね…」

アニスはそう言う…

「はい…ですが、柱は消えてもセルパーティクルが全て消えたわけではないんです。」

イオンが説明をする。

「要するに、活性化させたセルパーティクルをタルタロスの帆で受けて外郭まで押し上げてもらうんだろ?」

ガイが、簡略的にそう言う。

それは的をいている。

ジェイドも頷いた。

「しかし…これだけのものを…ユリアの時代に作ったとは… どれほど技術が発達していたのでしょうか…」

ジェイドは頷きながらも…この技術に少なからず驚嘆していたようだ。

ティアは…逆に…顔を俯かせて、

「それほど発達していても…それでも魔界を捨てて…外郭大地に住まなければならないほど…その時代の世界は荒廃していたの…」

そう言うと…

一同…沈黙した…



「…あんたらも外郭へ移住したらどうだ?」

アッシュはそう言う。

この世界よりは…間違いなく住みやすい。

しかし…

「知っているだろう。我らには監視者の役目がある。街を離れるわけにはいかん。」

拒否をした。

そう言うと…

イオンは表情を暗くし…俯いた。

(監視者って…?)

アッシュを通して話を聞いていたルークは疑問を浮かべていたが…

「好きにすれば良い…俺たちは上に戻る。」

ルークを無視し、アッシュが話を進めた。

「………私は。 ここに残ります。」

ティアが静かにそう言った。

「そうですか…… ここは、あなたの故郷ですからね… あと………」

ジェイドは立ち上がり、ティアの方を向きなおす。

「……彼の…… アルの事、よろしく頼みます。」

そう言った。

「え… あ… はい。」

ティアは少し、遅れ気味で…そう言った。

ジェイドがそこまで心配するのは珍しい事だ。

イオンは… ジェイドが何故そこまで思っているのか…わかる気がしていた。

アルをあの街から連れ出したのは彼だ。

医療機関へ連れて行くという名目上…


そして、今は亡きアクゼリュスの住民とも、彼を救うと約束した…


これ以上約束を反故にすれば……… 軍人として恥だと思っていたのだ。

それが本当か定かではないが…

イオンは、そう思っていた。

「ティア……。」

そして、イオンも口を開く。

「あ……はい。イオン様。」

ティアは、次にイオンの方を向く。


「僕からもお願いします……。僕も……彼の傍にいてあげたいのですが………。」


イオンは表情を曇らせる。

イオンは……この中でも最もアルとの付き合いが長い。

イオンは彼の優しさに、……その強さに……何度も救われている。

そして、礼を言っても……。

彼は笑って……自分の方こそ……と、返してくれる。

アルは……イオンにとってかけがえの無い……【友達】なのだ。

導師とか……そんなの関係なく……。

だから……この場所に本当は残りたい。

これは嘘偽り無い。

だけど……イオンにはまだ、やるべき事がある。

導師として………。

それにもし……この場に彼がいたら………。

絶対に先に行って……と言うと思う。

間違いなく。


「……はい。任せてください。」


ティアはイオンの目をまっすぐに見て……そう約束した。


「イオン様………。」


アニスも心中を察し……言葉があまり出てこなかった。

イオンは戻らなければならないのは事実。

そして、導師守護の自分とすれば、引っ張ってでもつれて帰らなければならない立場なのだ。

だけど………アニスにも痛いほどわかるのだ。


「ティア!」


だから、アニスもティアに声をかけた。


「アルを……支えてあげてね?私からもお願い!」


そう言う。


「アニス…………ええ、任せて。」


ティアは、同じように うなずいた。


責任……重大なことだ。


「彼は……アルは、私が……必ず。」


ティアはその場にいる全員にそう約束した。












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