小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#65 希望に勝る絶望
























ティアから聞いた話……

そして、ティアとアルを除く皆は無事にタルタロスにのり、外郭大地へと着いたようだ。

ユリアシティからその光景が見てとれた。



仲間達が外郭大地へ立ち………。



そして、更に数日が過ぎる…



アルは…

その数日間も……そしてこれまでもずっと……少女が眠りから覚めるのをずっと…ずっと待っていた。

そして自分の力で… 治癒の力で目覚めるのならと………。

あの初めて顔を見たときから、ずっと……第七音素の治癒の力を使い続けた

そう……際限なく力を使った。

しかし、アル自身は全くといって良いほど回復していないというのにだ。

あのアクゼリュスで使ったとき。

めまいがして倒れそうになった。

あの時は、イオンをはじめ、仲間達が止めてくれていたのだが。

今回は、状況が状況だった。



一度……使用するごとに、体中の力が抜けてゆく感覚に襲われる。



気力で……怪我している自分を抑えていると言うのにだ。

そんな感覚になれば……自身の体を支える事もままならない。

何度も……膝から崩れるように、倒れる。

力を使っても、サラが目を開けること……元気な姿を見せてくれる事はなかった。

その姿が……彼の行動に拍車をかけた。


力を使っては倒れ……使っては倒れ………。


アルは自分が倒れても…倒れても…


止める事は無かった


それは…その行動は、 自分の命を…まるで、この少女に捧げるかのように…とれた。



アルの胸中……それは、


自分が死ねば…悲しむものなど…もういない。


家族は…もういないのだから。


そう……サラが起きない限りは…。


だからこそ、サラだけは………。

残った、たった一人の家族だけは、

なんとしても……何に変えても。

そう………自分の命に代えられると言うのなら、喜んで差し出す。




ずっとそう考えていた。

だからこそ、アルは力を使い続ける事ができた…。

想いの力……それは時として大いなる力となる。

初めて、力に目覚めたときもそう。


……だが、それは必ずしも良い方向に向かうとは……限らないようだ。


彼の姿を見れば一目瞭然だ。

普通であれば……絶対安静の身で、このようなことをすれば……どうなるか。

わかる事……なのだ。

だけど……それでも。

譜術を使い続けた。

体の負担も省みず…

ムリヤリに力を酷使し………。

そして、仲間達がここを発った後も、そんな生活は…何日も続いた。






ある日の事だ…





「いい加減にしてっ!!」





ティアの…叫びが部屋に響き渡った。

それは倒れている彼を介抱して…また倒れて………。

それが、一度の訪問で……3回も続いた時だ。


「……………。」


アルは…黙っていた。

ティアの言葉が全く彼に届いていないようだった。

初めこそは………ティアにまた心配かけまいとしていたのだが…。

サラが…自分の家族が全くといっていいほどに………快復しないのを間近で見て。

徐々に… 彼の心が壊れかけていったのだろう…。






そして、優しい言葉では…心配するような言葉では。

今の彼には決して届かない。

心配しても………それは全く変わらなかった。

これまでも、何度もティアはしていた事だった。

彼の疲弊は見てわかるからだ。

それでも………。

だからこそ、ティアは心から叫んだ。

それは、これまでで一番の大きい声だ。


それは……ルークを怒った時よりも。


それは……ヴァンをしとめようとしたその時よりも。


それは……その叫びは一瞬だがアルの表情は変えらせることができた………。

まるで変化が無い顔……これまで、淡々としていた、彼の顔が………。

わずかだが……。

その姿を見たティアはわずかに安堵した………。


……………が。


「……………サラ。」



彼の行動を変えるまでには至っていないようだった。

一瞬だけ表情を変えただけで。

次の瞬間には再びサラの手を握り……そして、再び周囲が光あふれてきた。

………自分の力を…使おうとしたのだ。

それを目の当たりにしたティアは。




「ッ!!!」




バチ―――――――ンッ!!!!




乾いた音が…部屋中に響き渡る。

ティアは……思い切りアルの頬を叩いた。

彼を止めるために……。





「え……………?」





暫くして…

まるで、叩かれた彼は時間軸がずれているようだ。

ティアに叩かれて………数秒して、遅れて彼は叩かれた事に気がついた。

なぜなら叩かれた頬を触っていたからだ…



「ハァッ ハァッ…」



なぜか、叩いたティアの方が…明らかに息が切れかけていた。

アルの表情は…僅かだがかわりつつあった。

だが…

何が起こったのか…全く理解していないようだった。

そして、今の状況を………。



「いい加減にしてッ!もう……もう!これ以上無茶をすれば貴方のほうが…アルが死んでしまうッ!」



ティアが、アルの両の肩を掴み…

揺さぶりながらアルに言い聞かせる。

彼に伝わるように、……力強く。



「………え?オレが………死……ぬ………?」



アルは…

ゆっくりと、ティアの言ったことを繰り返した。

そして…。

虚ろな目のまま、ティアを見ていた。

普段見せる目じゃない。

ティアの事……わかっていないようにも見えた。

そして、彼の口から出た言葉。

それは、ティアに再び衝撃を与える事になった。



「別に………いい……じゃないか。」



そう……虚ろな目をしながら…そう言ったのだ。

その声は低く……暗いものだった。



「ッ!」



そんな目をされて…

そんな事を言われて……。

ティアは言葉に詰まる。

言葉が出ない。




「街も………家族も…助けれなかった。 そして……残ってくれた最後の………家族……も…… これ以上…オレに出来る事なんて…… もう無い………から……。」



アルは…そう言った…。

ずっと……ずっと泣いていた彼だったが。

もう、今は涙すら出ない。

完全に…枯れてしまったかのようだった………。















ティア side






ティアは頭の中で…必死に考える。


何故…?

彼は………。

彼は……あの時………。

サラちゃんが、見つかったと知らせる前は、まだ…目は…こんな目じゃなかった。

寧ろ…ルークの事を心配する事が出来るほど………。

街を壊した本人であるルークに謝ろうとしようとしたほどに………心がよくなっていたはず……だった。

そして…彼は、



「罪を憎んで人を憎むな…」



そう言っていた。

それはガーランドさん…。……レイさん。

彼の家族に……【両親】に言われたんだと。

そう言って…いた。

その彼の目には………。

精一杯生きよう!

そう言う表情に満ちていた。

そんな彼を見ていて…安心したし、凄く嬉しかった。

彼が… あの憔悴しきった彼が…立ち直ってくれた…。

仲間達も心配していた。そんな彼が………。



そう思えたから…



でも…



今の彼は…本当に……見る影も無い………。

初めは… サラちゃんを助ける為に…無理をしているんだ…。

そう思った。

だからこそ… 強引に彼を止めるような事はしなかった。

だけど…それが、一度に3回も…………

………もう、ティアは見ていられなかった。







この場所にいるのは ティアとアル……そしてサラの3人だけ。

だけど……。

もう1人招かれざるものが……見えた。

それは、彼の後ろに…死神の幻覚が見えるほどに………だ。

彼は負のオーラを纏っていたから……。

それは決して…比喩なんかじゃない。









ガイの言葉も聞いていた。

そして、大佐の彼への信頼も知っている。

だけど…




(彼は… いくら凄い人だって…強い人だって言っても……周りが言っても… 心は普通の人と変わらない…)




ティアは…そう思ったのだ。

強く…強く… 彼を叱れば…

きっとわかってくれる、

目を覚ましてくれる。

そう思い込んで、手を上げた…

そして、心から叫んだ。

だけど…それは僅かに、表情が変えるだけだった。






side out




アルは……虚ろの目のまま……。




「……………もう… 生きる…………ことなんて。」




!!


アルが…

決して言ってほしくない言葉を…言いかけたその時!!




「ッ!!!」




ティアは、再び弾かれるように動く。

何故………?とずっと彼のことを考えていたはずなのに、

言葉を聴いた直後。

直ぐに…動く事が出来た。

それほどまでの………言葉だったのだろう。









ティアにとって…………








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