小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#66 辿り着いた深層と少女の想い




























目の前の光景。

それは、今のアルにとって、理解する事ができない状態だった。

……心が壊れ【かけて】いた為だ。

だが……。

この身に伝わる温もりは……触覚を通してわかる。



その……感じは……



とても、暖かくて……



とても、心地よくて……



そしてなにより………



優しい………。




「ッ……………」



アルは……暗闇から……光に照らされた感覚と……

優しさに……包まれている感覚が沸き起こってきた。



そして……。


アルの目にも……光が戻ってきた。






目の前に広がっていたのは………。

体に伝わってきたのは……。

人の温もりだった。







そう……ティアが取った行動は………。

それは…そう……アルを自分の胸に強く……強く抱きしめたのだ。




「………ごめんなさい。」



ティアは……そうアルに言う。

涙を……うかべながら。


「………ほん…とうにごめんなさい。……私は…私たちは…アルをずっと誤解してた… 強い人なんだって………。 ……どんな事があっても何があっても……きっと負けないんだって………。」


目に溜まっていた涙は……。

ティアの頬に流れ落ちる。



「………………え?」


光を取り戻した……。

いや、光を与えられ……戻る事ができたアルは……。

呆然としていた………。

今……何が起こっているのか……理解できていないようだ。

そして……ティアの涙は…アルの顔に落ち…そして、伝って流れ落ちる。



「アルだって……アル……だって……。 私たちと変わらない… 普通の… 優しい心を持った男のコなのに… こんな時に………こんな時に 厳しく言って……放っておいて……あなたに鞭を打ってしまって………。酷い事を……した……。」





更にティアは続けた…

ティアは……アルを強く抱きしめた事で………

ティアは…全てを悟った。




アルは………。



【一度目の絶望】から…立ち上がることが出来た。


【家族のおかげ】で………。


しかし……そんな時…だ……。



【家族】に奇跡的に…再び会えることが出来た。

その事に…恐らくは言葉にならないほど… 自身で表現できないほど… 希望を感じたのだろう。

これで………、 助けられる事が出来る…っと、




しかし………




希望というのは大きければ大きいほど………。

それが奪われたとき……どうなるのか。





そう…【絶望】が、精神を支配してしまうのだ。






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自分じゃ………サラを助けられない………。

何で…?どうして…?

残ったたった1人の……家族なのに…?

何で…?

自分を……助けてくれた家族なのに………?

何一つ……恩を返せていないのに……?

どうして、自分は何も出来ないの……?




何も…………できない………。







なん…で?






【     な  ん  で  自  分  だ  け  生  き  て  る  の  ………?  】







そういう考えにまで……至ったのだ。


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………………………


彼にとって……。





【救えない】こと。






その罪悪感で押し潰されてしまったのだ。

そして、生きている事、そのこと自体…が…………そう自分の存在そのものを否定してしまうほどに……。



今の………。

彼に必要なのは………。




「お願い………。 私……私……貴方が……… アルが… いなくなってしまったら… わ…わた…し………」




ティアは抱きしめる力を強める………。

抱きしめながら涙を流す…

彼が…


【アルが必要なんだと。】


【傍に……いてほしい……生きていてほしい……生きる意味が無いなんていわないでほしい。】と。




「お願い… お願い… 戻ってきて……… いつもの…優しい…アルに… 死ぬなんて…言わない…で………。」 



その涙は…

アルの顔に落ちる。



「おね…がい……」



その涙が…

まるで、アルの心を…ゆっくりと癒していくかのようだ。

アルの心が……再び動き出す。










ティアが…

泣いている……の…?

なんで……?

泣かせたの…は、だれ?

いや……泣かせたのは…………。









…考える事をやめた頭が…心が……再び動き出す。

そして…アルは………。





“ドッ…………”




サラに使用していた第七音素の光が消えたとほぼ同時に……。

床に膝から崩れ落ちた…。

ティアに……完全に身を任せるように。




「……ッ!アル……ッ!」


ティアは……抱きかかえ。

アルの脈を……アルの状態を確認した。




「ッ……よ…よかっ……た………。」



アルは生きている事は間違いなかった。

一先ず安心できた。


だが…目を覚まさないという可能性は捨てきれない。


現に…目の前の少女が…そうなのだから、



「お願い…戻って…戻ってきて………戻ってき……て……。」



ティアは………両手でアルの手を握る。

包み込むように……。

アルの帰り願いながら……。









??? side





不思議なところだ……。

自然と……心が穏やかになる……そして、心地いい……。



「…ちゃ…」



そんな空間で声が聞えた…

ここは…?



「おにぃ…ちゃ…」




また…だ。


アルは、目を…ゆっくり開ける。

そこには見えたのは…


「さ…サ……ラ……?」


立っていたは……間違いなく……。



「おにいちゃん!」



サラ本人だった。

そして……それを間違えるはずも無い。



「サラッ!!」



必死に…抱きしめる。

サラも…抱き返した。

アルの目には……枯れたと思っていた涙が……再び流れ落ちていた。






暫く…抱きしめていた時…



サラが……アルの目を見て……。



「おにいちゃん… おねえちゃんをなかせちゃ、だめだよ。」



サラは…そう言った。

「え…?」

アルは驚きながらサラを見る。

「わたしね…?だいじょうぶ、だから! もう!なにもしんぱいしないで!」

サラは、笑顔のまま……そうアルに言う。

「サラ………。」

サラは元気よくそう言うその姿は……。

あの時の笑顔と何も変わっていなかった。

「あのね……おにいちゃん……。おかあさんと…おとおさんも…まだきちゃだめっていわれたから………。おにいちゃんのそばにいてあげてって……。」

サラは一瞬だけ…泣き顔のような表情を作る…

そして、


「あっ…!そうだ!あとね! わたし…わかるんだ!………おにいちゃんといっしょにいたい!っていうひと…いるんだっ。おねえちゃんだってそうだよ! それに、ほかにも…きっと、おにいちゃんのこと…まってる、おにいちゃんにたすけてもらいたいひと… きっといるっておもうんだ!」


サラはアルの両手を掴む。


「だから… おねがいだよ。わたしみたいな おもいをするコが………そんなの、いやだよ。おにいちゃん。 たすけてあげて…? おねがい……。」


そう言う。

懇願するように…

アルは、必死に涙を拭う。

自分も……家族を失った事を理解している……なのに……。

こんなことを……言われたら……。

泣いてばかりいられなかった。

そして、サラの目を逸らさず見つめた。


「わ…わかった………。 約束する……よ。うん……今度は絶対…破らない。だから………。」


サラを再び抱きしめる。

「絶対… 絶対に…また目を覚まして……? また… 一緒に遊ぼう…? それだけでいい……それだけ、おにいちゃんと…約束して………。」

そう言って、涙を流す。


「うんっ!もちろんだよっ!だから!おにいちゃんもね!!わたしは、げんきなおにいちゃんが…やさしいおにいちゃんがだーいすきなんだから!」


サラは元気よくそう言う。


そして……。

なんだろう……。

何かが聞こえた気がした。

アルが、そう感じていると……。



「………そろそろ じかんだ……」



サラがアルから離れてそう言っていた。



「サラ…?」



アルはそれの意味を理解して……悲しそうな顔をするが…


「だめッ!おにいちゃん!だめだよっ!そんなかおしてちゃ! いったでしょ?おねえちゃんをなかせちゃだめって!それに……おんなのひとを なかせるなんて そんなことするひどいおにいちゃんじゃないよね?」


アルの顔の前で指を立てて、そう言う。



「あ… ああ!そうだよ……約束……したんだから!!」



アルも、表情を直ぐにもどし…笑顔に戻す。



「うん!おにいちゃん!えがお、ばっちりだよ!」



サラはそう言うと…

世界が真っ白になっていく…





「きっと…きっと やくそくまもるから わたし… おきるから! おにいちゃんも…ね?」

「ああ… 必ず守るよ… 約束…だ。」



そして……サラと指切りをする……。

互いに……守るために。



そして、その世界が完全に消え去っていく。





「今度こそ…必ず…守って見せる…よ…」



そう言う…

もう見えないサラに向かって、



「えへへへ……… やっぱり……おにいちゃんやさしい……。だいすき……。 ありがとね… おにいちゃん…」



もう……何も見えない。

見えないはずなのに…

……サラからそういわれている気がしていた。









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