小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#67 帰還
























その体験はまるで夢のだったかのようだった。

そして、アルが気がついたのは…

もう丁度 外郭の時間軸で深夜に相当する時間だ。



「あれ……は……夢?」



サラと話したの…全部…?

そう考えていた時…。

右手に感触があるのに気がつく。

その…右手の方を追っていくと…


「………あっ。」


右手の感触は…自分の手を握ってくれているからだと気付いた。

そう…強く…強く、握ってくれている。

寂しくないように………。

………安心できるように。

そう感じる事が出来るほどに…。



「ティ…ア………?」


手を握ってくれているのは…

ティアだった。

彼女は今…眠っていた。

よく見て見ると……目には…涙の後がまだ乾かず残っていた…

そして、眠っているはずなのに………。

握られている手は…凄く強かった…

そして、ティアを見ていると……。




(…なかせないで……)




サラの言葉が頭の中に流れ出た。

そして………。

「お……オレは、いったい何を……?」

今までの自分を…霞んだ頭で必死に思い出そうとする………。

そう……。

サラの事を想って…想って………。

仲間のこと…ティアの…ことが全く見えていなかった…。

仲間のこと……大切な人たちのことを……完全に……。

そしてその上…。

気まで失って…

「オレ………オレは………。」

心配かけたことに………再び罪悪感が戻ってくる。

だけど…



(おにいちゃん……おねえちゃんをなかせちゃだめだよ……)



この言葉が…何度も頭の中で流れる………。

再生を繰り返し、言い聞かせるように。


「そう……だよね。オレ……ティアに心配をかけた。泣かせちゃった……これ以上はダメ…だよね。」


アルは、そう呟いた。

そして、心に決める。

勿論… ティアが目を覚ましたら…心配をかけた事を謝る。



でも、それ以上に…


「お礼を…言わないと……… こんな……弱かったオレをずっと……ずっと見ていてくれたこと……。」

そう強く想ったのだった…

ティアが…強く…想ってくれたことは、今のティアを見ていれば凄く伝わる。

気を失っても…懸命に手を握ってくれていた。

戻ってきて…そう言ってくれたことも………。

まだ…自分が必要とされている…その事を教えてくれた事を…

だからこそ…礼…なのだ。

大切な……人への………。





















そして、暫くしての事だ。


(…礼を… ぞ… ユリ…の末裔…)


頭の中に………。

(なん…だ?)

声が…聞えてくる。

消え去りそうな…小ささの声が聞える。空耳かと思ってしまうほどの大きさの………

(……皮…だ……。 まさ…我が……… ………くんだ… …の 末裔が……… とは………)

まただ………。

周りには誰もいない。

部屋の外にだって人の気配はまるで無い。

と言う事は………。

「あのときの……… いや、ずっと…オレの中にいるの……か…?」

語りかけるように…そう言う。



(………覚……?……ふむ…… 早……… ないが… やはり…放して……だな…。全……は。)



いつもいつも抜けて聞えてくる為、内容が殆ど把握できない。

でもわかる事がある。

どの時かは全くわからないが、

いつかは教えると言う事を……。

「……いつか、教えてくれるんなら。オレは……その時まで待つよ。今のオレには、やらなきゃならないことがいっぱいあるから。」

アルはそう言った。

サラとの約束……。

夢であったとしても、鮮明に覚えているのだ。

そして、いつもより落ち着いている自分に気付く。

いつもなら…この得体の知れない相手から情報を聞き出すことに必死になっているはずだった。

なぜ、今のように冷静なのか。

それはサラが言ってた約束……。



(わたしみたいな おもいをするコ…なんて、いやだよ)



つまり…

ヴァンを…止めて…

家族(しあわせ)を奪われるようなことを止めてくれ…そう言っているんだと、確信できる。

それほどに…心優しい子(サラ)だから…

しなきゃいけない…

家族に…頼まれたんだから。


(ふ………………だら……な…………)

そして…

声はそれっきり聞えなくなった。
























それから…

ティアが目を覚ましたのは明け方だ。

「あ……あれ……?わたし……は………。」

いつの間にか眠ってしまった事に…気がついた。

そして、今どういう状況だったのかも。

「ッ……あ……ある……はっ!」

ティアは体を無理やり起こそうとした時。


“トスッ…………”


頭に……優しい感触があった。

その感触は……。

「おはよう………ティア。」

アルが……ティアを支えた。

「……………え……っ……?」

ティアは……目の前の事を理解するのに、時間がかかっていた。

そして、アルはティアの顔を覗き込むと……。

笑顔になって…。

「その……心配かけてゴメンね…。 いや、違う。……ありがとうティア。こんな オレを… 心配してくれて。……支えてくれて。本当にありがとう。」

アルは、ティアに頭を下げた。

心からありがとうと…。


「ア………ル……………?」


ティアは信じられないような顔をしていた。


「うん……オレ……だよ。………やっぱり、すっごく心配をかけてたんだよね… ほんとにゴメン………今は、大変なとき……なのに。」

アルは、そう言った。

今のティアを見ていて……。

心配する気持ちが凄く伝わってくる。

だからこそ…

今のティアの顔を見て。

改めて確認する…


そうやって頭を下げていたその時…



「お……帰りな……さい…… ほんとに…良かった…ま……また、会え……ッ!」



“ギュ………”


ティアは…頭を下げたままのアルの頭を…抱きかかえた。



「あ…っ……///あのっ!その…」

当然、

アルは普段の感じに戻っていた為、抱きしめられた事に気付いて、慌てる。

その事は十分ティアにもわかっていた。



【いつもの優しいアルが帰ってきてくれたのだと。】



だからこそ……。


「ごめん……なさい。お願い…… 少し…顔………上げないで………。」


ティアはそう言った…。

その声は………。



「え…?あ… うん…」



アルは、直ぐに悟った。

そのティアの目には…。

嬉し涙が流れていた…。

その顔を… 戻ってきてくれたアルにあまり見せたくないし、見られたくなかったみたいだ。






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