小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#68 断髪・そして、決意



























アルは、あの日を境に自分の体を傷つけるような行為はしなくなった。

サラも……目は確かに覚まさないが、体自体は健康体そのものだと言う。

だから………。


「待ってるから……ずっと……ね?」


アルは、サラにそう言い聞かせる。

約束は……きっと守る。

アルはそう心に刻み付けていた。

約束……それは勿論。


“ガチャ……”




「アル…?」



そこに、ティアが入ってくる。

「あ……ティア?どうしたの?」

アルがティアの方を向いた。

「いや… 私もサラちゃんのこと…気になってね?」

ティアは…そう言う。

少し……言葉に同様が見られた。

「ティア……ありがとう。」

アルは、そう言う。

「え?」

ティアは少し驚いていた。

「大丈夫……だって、サラと約束したから……きっと目を覚ますからって。オレも……必ず守るって約束をかわした……。だから大丈夫だよ。心配をしてくれて、ありがとう。」

そう言って笑顔で……ティアに笑いかけた。

「………そんな、私は何も……。」

ティアは、少し顔を赤らめていた。

だが……直ぐに笑顔になる。

ティアもアルも……。

その光景は……微笑ましくて、まるで数日前のことがまるで嘘のよう……だ。











そして暫くして、


「そういえば……サラちゃんと約束したって何を約束したの?」


ティアがそう聞く。

アルが何気なく言った言葉。

それが【約束】だ。

「えっと………。」

アルは……ちょっと照れて……。

「ゴメン……サラと2人の約束だから……少なくとも起きるまでは……」

言葉を濁しながら……そう言う。

少し恥かしいのだろうか?

ティアはそう思って……。

「ふふ……そう……。わかったわ。また いつか……教えてくれる?」

そう言って笑っていた。

「う……うん。…そう……そうだね。」

どもりながら……アルも顔を赤らめていた。


約束……。


その中で……いや、どの約束も大切だが……

今アルが最も想っているのは……。


【おねえちゃんをなかせちゃだめだよ。】


その言葉だった。

即ち……今、目の前で支えてくれている女性。

ティアの事だ。

こんな自分を支えてくれた……。

救われたんだ。

だから………。


(オレも……もう 泣かせたくなんかないよ…… ティアにはずっと笑顔で……。)



アルは……そう考えていた。

















ルーク side




さらに数日立ち…


ルークは…




「う…あっ」

ルークは…アッシュと繋がる事で、仲間たちの動向をアッシュを通してみる事が出来ていた。

しかし、

アッシュの方が、一方的に接続を立ったのだ。

その拍子で…

「うわぁああ!」

ルークは目を覚ました。

「みゅっ!!!」

ミュウは驚きながらルークの方を見る。

「ご・・・ご主人様!!」

そして、喜びながらルークの肩に乗る。

「ご主人様!目を覚ましたですの!?良かったですの!!心配したですの!!」

ミュウは…

喜びながらルークの頬に頬擦りしていた。

そんなミュウを見て…

ルークは…

「ああ、ミュウ…ありがとな…」

ミュウの頭を撫でながら…そう言っていた。

旅を通して…

誰かに礼を言ったことなど、恐らく初めてのことだ。

ルークは…自然にそういえるようになっていたのだった。



そして、暫くミュウを撫でていた時…




「――――――――――――♪」





歌い声が…聞えてくる…

「あ…」

ルークは、その歌い声の元へ…



「ルーク…?目が覚めたの…?」

ティアは歌うのをやめ…

ルークの方を見ていた。

「こんな所に花が…」

白く…美しい花が広がっている場所で…

ティアは歌っていた。

その花を見ていると…

「セルニアの花よ。魔界で育つのも…夜に咲くこと花くらい… ここは外郭大地に覆われているから。」

そう告げた。

…悲しそうな顔をするのは仕方のないことだろう。

「…!! そ…そうだ!外郭大地に戻らないと!!セントビナーで崩落するって…アッシュが!!」

ルークは慌てて、ティアにそう告げる。

「? どういうこと? 貴方…ずっと眠っていたんじゃ?」

ルークはティアの肩を掴む!

「わかるんだよ!オレとアッシュは繋がっているから!はやく地上に!!」

ルークが慌ててそう言うが…

ティアは…

「ふぅ… それが真実だとして、どうやって崩落を止めるって言うの?」

そう聞く…

ルークとは対照的に…冷静に…

「ッ!そ…それは…」

ルークは言葉に詰まる…

そんなルークを見てティアは…

「貴方ちっともわかってないわ。人の言葉に左右されて何がおきているのか自分で理解しようとしないで… それじゃあ、アクゼリュスのときと同じよ…」

そうルークに告げる。

そう…あのときもヴァンの言葉で…

それしか見えてなくて… 結果的に最悪の事になったのだ。

「……本当…だな… ヴァン師匠が言ったから… アッシュが言ったから…ってそんなことばかり言って… オレ…今まで自分しか見えてなかったんだな… いや…自分すらも見えてなかったんだ…」

ルークは… これまでの言葉…自分自身を振り返って、そう呟く。

「オレ…オレ…変わりたい、変わらなきゃいけないんだ!」

そう…ティアに告げた…

しかし、ティアの反応は…まだ、冷たい…

「貴方が、変わったところで、アクゼリュスは…アルの家族は戻ってこないわ。」

「っ!!!」

そう告げ…そして、

「そう…何千と言う人たちが亡くなったという事実を……それだけの罪を背負って…貴方はどう変わるつもりなの…?」

そう言った…

計り知れない罪だ…

何千…

償いきれるのか…?

どうすれば良い??

ルークは…

答えが出ない。

「わからねえ…だせえな… オレ… 謝ってすむなら、いくらでも謝る・・・ オレが死んで…アクゼリュスが復活するなら…ちょっと怖いけど…死ねる。でも!
現実はそうじゃねえだろ??だからオレ!!自分に出来る事から始める!!」

そう聞いたとき…

ティアは後ろを向く…

「やっぱり…わかってないと思うわ。……今の状態で、 ……精神が、……心が元に戻っている状態で… 簡単に死を選べるんですから。」

ティアが言っているのは………

恐らくは…………。

ルークはそんなティアを見て…。





「直ぐに信じてくれとは言わない…」




そう言い、ルークは…静かに目を閉じる…





その時…



「ティア…?歌声が、聞こえなくなったけど…何か…ッ!!」




アルも…降りてきたのだ。

「ッ!!」

ルークもアルに気がつく。

そして…ルークは…顔を俯かせた…

「その…お……オレ…」

言葉が…上手く出ない…

ティアには…あんなに簡単に…話せたのに…

アルには…全くといって良いほどに…

言葉がでなかった…

その時!



「ルークっ!?」



アルのほうから、ルークに駆け寄った。

「大丈夫なのか!? もう体の方は!?」

ルークの両肩を掴んでそう言う。

本気で…本気で心配していた…

そんな目をしていた…

「え…あ…ああ………」

ルークは…

何を言われるか…

ずっと恐れていた…

故郷…アクゼリュスを滅ぼしたのは…自分だからだ…

だから…きっと… 何をされても・・文句はいえない。

そう覚悟していたのだが…

アルは、唯…

ルークが目を覚ました事を…

純粋に喜んでいるようだった。

「そっか……よ……よかったなぁ………。」

ルークの返事を聞き… そっと胸を撫で下ろす…



「何で…?」



ルークは…思わず聞いてしまう…

本心では……聞きたくないのに……。

「えっ?」

アルはルークの方を見る。


「何で… お前は… アルは何も言わないんだ…? オレ・・・・ オレっ・・・・・・・・・」


それ以上…ルークは何もいえなかった…

いや…言葉がでなかったのだ。

ルークを見て……。


「あ… そうだよな… …は…はは… ティアをおなじ事…ルークにも言われたよ…」


アルはそう言う。

そう…ティアのときにも同じ事を聞かれた。

何故平気なのか?

ルークも同じことだ。

何故…?許してくれるのかが…

わからないのだ。

「…ティアに………?」

ルークはティアの方を見る…

「ええ… 私もアルに聞いたわ… 似たような事をね。」

そう言う…

「ルーク… 確かに…家族を…その事は許せない事だ。」

そうはっきりという…

「…あ…」

ルークの表情が…

落ちる…

「でも…最後に…家族に言われたんだ。」

ルークの両肩を…掴んでルークを見る。

「罪を憎んで人を憎むな…そう…ね。」

ルークを見ながらそう言う…

ルークも目を…目を逸らさないようにアルを見た。

「罪を…?」

「そう… 罪を犯した人を…ルークを憎むのではなく、何で…そうなったのか… 突き詰めれば、何故ヴァンは… そう至ったのか… それを…見つけて…理由とその根源を憎む…。オレの全部を懸けてね?…その根源がなくなれば…きっと、もう こんな事…おきないと思うから…」

そう告げた…最後は・・・悲しそうな顔をしていた・・・

「あ…アル……」

憎むのは…簡単だ…

憎悪を相手にぶつければ良い。

そして…

許しを請うのも簡単だ…

唯…言葉にすれば良い。

謝罪を…口にすれば良い…

でも…許すのは…?

どうすれば良いのか・・・わからない・・・

唯…とても…とても難しいのは・・・わかる・・・

アルは…そう言ってはいるけど・・

それは…ルークを許すも同然なのだ…

家族に…そういわれたとは言っても…

ルーク自信は…どうして良いか…わからないのに…




「アル…」

ティアがアルを呼んだ。

「え?」

アルはルークから視線を外し、ティアを見た。

「ルークは…変わりたいんですって… そうよね…?ルーク。」

ティアは、アルを見た後・・・

ルークの方を見る。

「変わる… …そうだ… オレは…変わらなきゃいけないんだ… アルや…ティアの…優しさに… 甘えたりしないで…自分自身が…」

そう言って…

ティアの方を見る。

「…ティア、確かナイフ…持ってたよな…?」

そう聞く。

「…? ええ。」

ティアは疑問を浮かべながらも頷く。

「…ちょっと、貸してくれないか?」

そう言うと…

ティアは…投げナイフを取り…ルークに渡した。

「…?ルーク?」

何をするのか?

っと尋ねようとしたが…

ルークは…


何も言わず…


ティアのナイフを、自分の赤い長髪にあてる…


そして…



“ザンッ……………”



髪を…切った。


「「ルーク…」」

そんなルークを…2人は固唾を呑んで見つめる…


ルークは…切り落とした髪を見ながら…


「今までのオレとは…さよならだ…」

そう言って… 髪を…風に任せてとばした…

断髪の儀だ…

自らの過去との決別…

変わるために…



「これからの…オレを見ていてくれ… アル…ティア… 直ぐには上手くいかないかもしれないけど…」

そう言うと…

…目が…更に真剣なものへと変わる…

「でも…オレ、変わるから。」

そう…言い切った。



「そうね…」「うん…」



アルとティアは…頷いた。



「見ているわ。あなたの事を。」

「オレは…ルークの言葉… 忘れないから… ルーク、君を信じているよ…」



2人は、ルークにそう告げる・・・



ルークの放った髪は…

辺りを…泳ぐように漂い…

そして、魔界の赤い空へと消えていった…








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