小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#69 滅びは必然



























そして、場面は変わり、


【市長の会議室】


「は……はじめまして…… オレ、ルークです。」

「オレも遅れてすみません… オレの名はアルといいます。」

「ミュウですの!!」


それぞれ挨拶をする。


「おまえは黙ってろって…」

とりあえず、ミュウを抑えるルーク。

うん… これまで程、強引じゃないね。 苦笑

「君のことは聞いていたよ。アル君、元気になって何よりだ… そして…」

テオロード市長は、ルークの方を見る。

「ふむ……君がルークレプリカか…なるほど…よく似ている。」

はっきりとそう言う…

「おじい様!!」

ティアは、声をあげる。

アルもあまりに無神経じゃないか!っと言おうとしたが…



(ティアが言ってくれなかったら俺が言ってたな…)

アルはそう思っていた。


「…ふむ、これは失礼、しかし アクゼリュスのことは我々に謝罪していただく必要はありませんよ…」

「…え?」


ルークは…疑問に思った。

しかし、アクゼリュスにすんでいたわけでもないユリアシティの住民なのだ…

謝罪は確かに必要ないといえば…ないが…



その後の言葉が…



場を凍りつかせる事になる。



「アクゼリュスの崩落はユリアの予言(スコア)に、詠まれていた…起こるべくして起きたのです」





「なッ!!!」

一同が驚愕する。

だが中でも…

一番同様を隠せなかったのはアルだ。

「どういうことだ!!そんな…そんなのって!!」

アルは…思わずつかみ掛かりそうになったが…

必死に抑えるように…

その場で叫んだ!

「そうです!どういうことですかおじい様!?私は…そんなこと聞いておりません!」

ティアも同様だった。

そして…

市長はゆっくり歩き出し…


「これは秘予言(クローズド・スコア)…ローレライ教団の中でも、詠士以上のものしか知らぬ予言(スコア)です。」


静かにそう語る。


「つまりは……全て… 知っていたんだ。……オレの故郷が滅びる事を…オレの……家族がっ…!!!何で…!
何故だ!!秘密??なんで!わかっていて、何でとめようとしなかったんだ!どれだけの人たちが!」

そう叫ぶ。

「…貴方はそう思うかもしれませんな… 記憶が…無いのですから、しかし、外郭大地の人間は予言(スコア)を守り穏やかに生きることが、ローレライ教団の教えです。全て予言(スコア)の遵守の為、その通りに歴史を動かさねれば来るべき繁栄が失われてしまうのです。」

そう市長が言う。

落ち着いていて……静かな口調で。

人がたくさん死ぬと言うのに………。

アルがこの時一番感じた単語。

それは【狂気】だ。

全て………狂っている。

「……今いる人たちを見捨てて…街一つ失って……それで繁栄?ふざけるな!!」

アルは…怒り…

それを強く感じた。

「アルっ!!落ち着いて!!」

ティアは…アルを抑えた…

「あ………。」

そして……両の肩を掴んで、落ち着かせようとする。

「ご…ごめん… 今市長に言っても…どうしようもないよね………。」

ティアが抑えてくれたおかげか…

アルは、怒りを…自分の中で押し殺した…


「…これが、この世界の成り立ちなのです… 貴方も、記憶が戻ったとき… きっと思い出すでしょう…」

市長がそう言うが……。

「オレは……そんなのが真実だって言うのなら……だったら、思い出したくなんかない…」

そうはっきりと言った。










そして、……このことを聞いてある事を思い出す。


「じゃあ…モースが戦争を望んだっていうのは…」


そう……モースが起こそうとしているその訳だ。

アルが…言うと…

「予言(スコア)に詠まれている……から…?」

ルークが…そう呟く。

「その通りです。第六譜石の最後にはこう記されています。【ルグニカの大地は戦乱に包まれ…その後…人類は未曾有の繁栄が訪れるだろう…】と」

ルークの言葉を肯定する。

「でも!兄さんは外郭大地のセントビナーの大地を崩落させようとしているのよ!?」

そう言うが…

「セントビナーは絶対に崩落しない!何しろ戦争はあの周辺で行われるのだからな…」

市長はきっぱりと断言するが……。

「……絶対なんてない…そうは考えられないのか?」

アルは…そう呟く。

「ん…?」

テオドーロはアルの方を向いた。

「予言が絶対なら……。人の意思はどこにあるんだ? 今この瞬間!オレが思ったこと行動したい!行動すると思ったこと全てコントロールができるっていうのか?その予言ってヤツは!……それにヴァンが滅ぼしたい。滅ぼそうとしているのなら… なぜ、【起こるかもしれない】と、考えられないんだ?」

アルは…そう聞いた。

どこかで聞いたような言葉だ…

【人間の自由と意思を勝ち取る】

そう……あの時のリグレットの言葉だ。

今なら…今なら彼女が言わんとした意味が良く分かる…。

全ては、予言に頼りきったこの世界が元凶だったのだ…。

「ふ… ならば、実際に見てくれば良い。君たちの心配が杞憂だということがわかるであろう。ユリアロードで外郭大地へ行って見なさい。」

「……言われなくてもこの目で見てくる。そして……。」

アルは最後まで言う事は無かった。

市長はそう言い残したあとは。

部屋の奥へと消えていった…。













皆、とりあえずティアの部屋へと戻ったが……。

アルもルークも…ティアも言葉がでない…

「なんだよ… これ…」

ルークが呟く…

「狂っている…… ティアには申し訳ないが、教団も…この世界の考え方も……何もかも全部っ………」

アルは、拳を握り締めた。

「…きっと、ホドの消滅も…詠まれていたんでしょうね…」

ティアは…ベッドで膝を抱えながらそう呟いた。

「っ!ホドって!」

ルークが思い出しながらいう。

「確か、ヴァン師匠(せんせい)がレプリカを作ろうとしてるって…」

「兄さんが?」

「え…? 何でそんなこと知ってるの??」

アルも聞いたことがないことだ。

「うん… アッシュを通してみてた時、ジェイドがそんなことをいってたんだ。」

・・・・・・・・・・・・・・・・

「そう・・・ にいさんはそんなことを…」

ティアは…目を瞑り…そして、開いて、

「ホドは16年前の戦争でアクゼリュスと同じように崩落した島よ… 私とにいさんの故郷…」

「「!!」」

2人は驚きながら…ティアを見た。

「ちょうど… アルとルークの間…その扉の前で、にいさんはいつも言ってた…ホドを見捨てた世界を…許さないって…」

そう言うティアの目は……どこと無く寂しそうだった。

冷たい目をした兄を見ていたことを思い出したのだろう。

「ッ…………。」

アルは…何もいえない…

身にしみるほどに…

知っているからだ。

その許せない…

その感情を…

確かに、【罪を憎んで人を憎むな…】

そういわれたとは言っても……

家族と……約束した……といっても……。




「だから…師匠(せんせい)は…」

ルークは…ヴァンが崩落させようとしている事の意味を悟った。

「私が外郭大地へ行く前に…兄さんが珍しくこの街へ帰ってきたことがあったの…  その時に聞いたの…… 外郭の消滅…… 兄さんは・・・何かとてつもない事をたくらんでるって思った… そう、人が沢山死ぬほどの事を…」


“グッ………”


ティアは…服を握り締める。

「でも……例えホドが予言で見捨てられたせいで、滅んだとしても…その復讐の為に 今を生きる人たちを…罪もない人たちを巻き込んで良いはずがない! だから…私は兄を刺し違えても…止めようって。」

俯かせた…

「ティア…」

ルークは…心配しながら…ティアを見つめた…

「でも…私しくじった見たい…アクゼリュスを救えなかった……。
アル… ルークだけのせいじゃ…ないの… 私にも……責任が……。」

「ティア!」

アルは…最後まで言うのを止める…

「…もう起きてしまったことは…何を言っても…変わらないよ。でもね…」

アルはティアの肩に手を乗せる。

「え……?」

ティアはアルの方を見た。

「ティア……オレはティアに救われた。」

アルは…ティアの目を見た。

その目は不安で……そして罪悪感が出ていた。

「今なら……ヴァンの気持ちも良く分かる……よ。それにね……。ちょっと歯車が違ってたら………。オレが皆と出会わなかったら……。それで、ヴァンに会っていたとしたら……。オレはヴァンに賛同してたかもしれないほどに…ね…。でも…」

そしてアルは、ルークとティア…両方を見た。

「……変わろうとしてるルーク…。 そして、必死に止めようとしてくれているティア……。オレを支えてくれたティア……。この2人がいてくれてるから… オレはオレでいられるんだよ……。」

そう言った…

「アル…」

ティアは……驚いたような表情をしていたが……。

アルの優しい顔を見て……表情が穏やかになっていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「アル…お前ってやっぱり強い……な、ティアもそうだけど…」

ルークは、悟ったようにそう言う。

「…え?オレが… …そんなこと…」

アルはそう言う。

一度は堕ちかけた自分が?と思っていた。

が……ルークは続けた。

「……いや、強すぎだよ。アルってオレと同じで、自分が誰かもわからない。そんな経験をしているはずなのに……な。はは………これじゃ、比較されても仕方ないし、それに………敵う分けなかったんだ…。」

ルークは苦笑いする…

「ルーク…」

「オレもだ。…オレの事を……その…赦してくれた…アルに。………そしてティアに側にいてくれたおかげで変わろうって心から思えるようになったんだ…ありがとう…2人とも… オレ・・・絶対に変わるから。」

そう言った…

「は……はは……。ルークに…お礼を言われたのって、今が初めての様な気がするよ…。」

アルはそう言いながら笑う。

「気がする……じゃなくて、初めてのことよ?」

ティアも同様だった。

「え・・・?そう・・・だったか・・・??」

ルークは頭をかきながらそう呟く。

「良かったですのっ!僕っ!心配してたですのっ!皆仲良くなってよかったですの!」

ミュウはそんな3人を見ながら…

喜びながら飛び回っていた。

この旅を通じて……一番嬉しかった瞬間なのかもしれない。






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