小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#78 2人の乾杯




























その夜…

皆はそれぞれ休む事にしたが…


“ガチャリ……。”


「いらっしゃい…。空いてる席へどうぞ。」

「あ…はい。わかりました。」



アルは町にある酒場に来ていた。

夜も遅いせいか、客は、数えるほどしかいないようだ。

アルは、カウンターの席へ座る。

「何にしますか?」

バーテンダーのの人がそう聞くと…。

「…すみません、適当に何か、いただけませんか…?」

アルは、そう言う。種類の類はあまりよく知らないためだ。

「わかりました。こちらのカクテルを…」

バーテンダーの人は慣れた手つきで準備をすると直ぐに出してくれた。

アルは、その差し出されたグラスに手をつけず、ただじっと見つめていた。


「…………これが…ファンさんが言ってたの……かな。」

そう酒………。

彼が最後に言ってくれた言葉だ。

一緒に飲もう……と。

アルは、悲しい記憶に再び触れたためなのか……。ただ、見てみたいからなのかわからないが。

暫く……眺めていた…













暫くしての事だ……。


“ガチャリ………。”


酒場の入り口が開く音がする。

「アル………?」

やってきたのが………。

「………ん?あれ…ティア……。」

仲間のティアだった。

「どうしたの………?」

今は各自休憩の時間だ。

だから、ティアがここにいても別段おかしくはないが……アルは聞いていた。

「ん……。アルがここに来ていたのが窓から見えてね。それより、何してるの?」

ティアは周りを見渡しながらが近付いてきた。

「あっ………うん。ちょっと…ね。」

そう言ってカウンターに向きなおす…。

「……??」

ティアは横まで来て…何を飲もうとしているのか確認すると!

「……それって、お酒じゃない。もうっ!あなたもまだ、未成年でしょ!まだ早いわよ!」

さすが軍人のティアだ。

………規則にはお堅いようだ。

そういわれた言葉だったが……。

アルはティアに、向きなおすと

「はは… でもさ……ティア。……わからないじゃん?」

アルは笑いながら……そう言う。

その笑い声には……ティアには。わずかだが、悲しみが含まれているような感じがしていた。

「………え?」

「だってさ………。オレは、記憶ないから…ね? ……本当の年齢だってわからないから。」

そう言って……表情も少し寂しそうな顔をしていた。

そのことを聞いて……ティアは理解する。

「あ………ッ。 ……アル。……その。 ッ……ごめんなさい…」

だからこそティアは…謝った。

また……… アルの事を、忘れていたんだって……。

「あ……ッ!ゴメン!謝らないで?普段から普通にしてくれていて、普通に接してくれてるの……凄く嬉しいんだ。 あの……これはね…。アクゼリュスの………。……ファンさんと、約束してた事なんだ… 「いつか、酒の飲み方を教えてやる」ってね…」

アルは、酒を少し持ち上げて…ティアにそう言った。

「そう……だったの…」

ティアはそういいながらアルの隣の席に座る。

「うん………。 まあ、ああは言ったけど、ティアが言ってたと同様に、オレの事、皆未成年だって言っていたから…… ははっ、間違いはないと思うんだけどね?」

アルは少し含み笑いをすると……。

次に目を細くさせて……

「………少し、この旅でゆっくりできる時が合ったら… 飲んでみようかな…って思ったんだ。あの時の約束… 果たせなかったって思われてたら悲しいから…オレも飲み方を知って… そして、皆の下に届けて…一緒に飲もうかなって…」

「……」

アルは笑っていたけれど……やはり悲しそうな顔をしている…

何もいえなかった…。

言いたい……けれど、またアルを傷つけてしまうかもしれないと思ってしまって、何も言葉に出なかったようだ。

「ッ…ああ!ごめんね?きっと…また、心配かけちゃったんだ。……大丈夫だから!ティア。オレは、もうあんな事にはならないよ。絶対に………心は強く持ってる。ルークにいった手前もあるからね。それに……」


アルはティアの顔を見て……。


【二度と……ティアを泣かせたりしない……したくないから……。】


心でそう思った。

口には……やっぱり、出せないようだが…… 苦笑



すると…



「………すみません。私にも彼と同じものを…いただけませんか?」



ティアがそう言う。

「え………?」

アルは少し驚く…

さっき、止めようとしていたのはティアなのに…?


「………私も付き合う。アル、私はね。……あのユリアシティであの時、決めていた事もあるから。」

そう言って、ティアはカクテルを受け取る。

「………え?決めていたって?」

アルは首をかしげながら聞くと……。

「ふふ………秘密……よ……。あっ、アルが話してくれたら……私も話すわ。」

そう言って微笑む。

「そ……///そっか……。うん……えっとその時に聞くよ。」

酒場は全体的に薄暗い。

ティアにアルの赤い顔が見えていたかどうかは……

……わからないが。


「ふふふ……。」


ティアは優しく微笑んでいた……。

そして、グラスを前にし………

「え…あ…うん。」

アルも少し遅れて前に出す。

そして……。




「「乾杯…」」




2人は杯を酌み交わした…












…………………………………………………………………………………………………………

……………………………………………………………………………………………………


暫くして……。


………………………………………………………………………………………………

…………………………………………………………………………………………










「ティア…ありがとう……」

アルはボソッと呟く………。

「えっ……アル…?」

ティアはアルの方を向くが…

「zzz…………。」

アルはもう眠ってしまっていた。

「はぁ……アルってば、 あれだけで、寝ちゃうんだから……。」

ティアはそんなアルを見てため息を出していた。

アルは顔が真っ赤だ。相当飲んだのか?って傍から見たら思うんだけど……。

実を言うとティアが言っているとおり。

アルが飲んだのは、ジョッキ半分ほどだ………。

その経緯はというと……。




最初の一口で顔を真っ赤にし…



次の一口の頃には、くらくらしていて…



そして…今に至る… 苦笑





「まあ… 私も少し酔っちゃってると思うけどね…」

ティアも顔に手を当てながらそう言う。

顔が熱いのがよくわかる。

「て…ティ……あ…、ん……zzz」

そんな時、アルから声が……。

「ん?」

アルはまた寝言だろうか…?

再び声がしたため、ティアはアルの方を向いた。

アルから出た言葉……それにティアは更に顔が熱くなる。



「………守る……から…。 大切な……人……だ…ら…… …だい…す…き……。 だか…ら………んん……。」



「ッ////!!」

ティアはアルの寝言を聞いて…顔が熱くなるどころか心臓が飛び上がりそうになる。



「はっはっは… なんとも、頼りになる騎士(ナイト)様じゃないですか。」


カウンターのバーテンダーの人も微笑ましく思わず笑ってしまっていた。

って言うか聞いてみたいだ。

「ちょッ……//!もうっ!!」

ティアは慌てながら…。

恥かしかったのか、ほんの少しだけいた後……アルを連れて、酒場を後にした……。


……もちろん、代金は払ってますよ?


後でアルに請求しなきゃね♪







道中……と言っても、酒場を出てのところだ。

肩を貸しながら、出て……でも、アルは寝てるからティアが引っ張ってる感じ?だ。

いくら軍人とはいえ……ティアも飲んでいる。

そんな状態で、アルを担いで帰る……のは流石に厳しいようだ。

「ティ……ア…………zzz」

そんな事は知らずに、アルからは寝言が続いている…。

……出てくる内容は、ティアの事が多い。

……アルは本当に彼女に深く……深く、感謝していたようだ。


そして……


「………もう。 アル…?私だって…私だってね? ……貴方には十分過ぎるほど、助けられているのよ…?感謝だって………。あなたは、わかってるのかしら……ね……?」


ティアはアルの寝顔をチラっとみると…そう言う。

「うぅん……、むにゃ……zzz」

でも、返ってくるのは寝言だけで………答えは無いようだ。当たり前か…… 苦笑


「ふぅ……」


ティアはため息を1つすると………。

「少し、あのベンチで休もうかしら…」

酒場の近くにある公園の前のベンチにアルを降ろした。

………外は雪景色だ。

外気温はかなり低い。

あまり外で休んではいられないが………。

さっきの説明どおり。

ティアもアルコールを飲んでいる以上は。

少しは酔っている……。

まあ、いつもの力など出るはずもない。

そして… アルの肩に寄り添う。


「外の気温は低いけど… こうすれば暖かい…かな// ………火照った体に丁度良いかもしれないわね…っ//」



火照っているのは飲んだからだ…っと言い聞かせながら… 苦笑


「それにしても……… 綺麗な顔………。 アルの寝顔って……あの時はそれど頃じゃなかったから…。」


ティアはアルの寝顔を見ながらそう呟く。

ユリア・シティでは、こんなにゆっくり見る余裕などは無かった…。



「………アル?私はね… ユリアシティで、決めてた事があるのよ………」



アルは眠っている。

聞いているはずも無いが。

そのままティアは続けた。




「1つは、ルークが変わるって言ってた事… それをずっと見てるって言ったこと、………それは、アルも同じ…よね?」



ふふっと笑いながらそう言う。



「もう1つは…貴方の事………。」



ティアは……顔を赤くさせ……そして、アルの顔を見つめて……。



「ずっと……ずっと支えたい…って……。そう思ったの…よ……。」



そう言って、次にアルの顔を覗きんだ。



「うん……オレ……も ……ティ…ア… 支える………。ずっと……君を………zzz………。」



それは、アルにすれば寝言の続きなのだが…。


ティアにとって………


そのアルの言葉。


それは奇跡的タイミングでの言葉だった。






「本当に……本当……もう…っ、貴方って人……は……。」




ティアは…アルに顔をぐっと近づける…。


それはティアの顔にアルの寝息が顔に吹きかかる程の距離………。


だが……距離は短くなる。


距離は…どんどん…短くなり……




そして…










ゼロに……なった……………………………。




























彼女と彼が…


触れたかどうか…傍からはわからないほどの距離だった。


知っているのはティアだけ。


それはティアだけのもの………だった。



「ッ…// あ……、私ってば……相当に酔ってる…わね………// 」



ティアは、顔を放すと…



赤面した顔に、雪を当てる。



冷やすため…だったが、その雪は直ぐに溶けて無くなっていた…。








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