#79 ジェイドの過去と罪
暫く肩を押せ合っていたティアだったが…
すぐに体を起こすことになる。
なぜなら…
「あれ?ティア?」
ルークが通りかかったからだ♪
「るるっ!!ルーク??」
ティアは慌ててそちらを見た。
「ん?アルも一緒か。って!!どうしたんだ!?顔真っ赤だぞ??それにアルも!!」
ルークは風邪でも引いたのか??っと急いで近付く。
「ち…違うのよ!えっと…酒場でね…」
ティアはこれまでの事を説明する。
もちろん、ティアがした……アルとのことは省いてだ。 苦笑
「そっか… オレ…」
ルークは、表情を暗くする…
約束を果たせなかったのは、誰のせいでもない、自分のせいなのだから…
「そんな顔しないで、アルが見たら、また言われるわよ?」
ティアは笑いかけた。
「そ…そうだよな… うん… わかった…」
ルークはそう言うと。
「オレが背負うよ。ティアも少しとはいっても酔ってるんだろ?」
ルークはそう言うと、アルを担ぐ。
「ありがとう。ルーク。」
ティアはお礼を…
「ッ…//良いって、ずっと2人には世話になっているんだから…」
ルークはやはり礼を言われる事になれていないようだ…
そして、ホテルに入る…
すると…
「おや…?どうしたんですか。こんな遅くに…」
ジェイドがいた…
「あ…!じぇ…ジェイド!?」
ルークは、思わず声が裏返る。
「いや…ッ そのっ… ほ…ほら!3人でちょっと外に…」
って言いながら慌てていた…
「おや…?2人は眠ってますね〜 ………ふむ、これは飲んでますね… やれやれ、未成年だと言うのに困ったものです。」
気がつけば…
アルはもちろん最初からで…
ティアも、ホテルに着いたと同時に…
バタンキュウ〜〜〜ってな感じだった!
「それで…ティアとアルはともかく、貴方は…何処に言っていたんですか?」
ジェイドはそう聞く。
「へ???」
ルークは動揺している…
3人の中で酔っているのは2人だけ…
ティアとアルは同じ場所に…
そして、ルークだけは別の場所に行っていたのは想像がつく。
そして、何処へ行っていたのかも。
「…ネフリーから私の事…聞きましたね?」
本題に入った。
だが、ルークはとぼける体勢に…
「ききき… 聞いてない…」
入れてるって思ってるのかな…?
これで… 苦笑
「悪い子ですね…嘘をついて。」
ジェイドはすかさず見抜く。
と言うか、ルークの態度を見たら…ねぇ?
「あ…ジェイド…アンタ昔…言ったい何が合ったんだ?あんたとディストがやろうとした恐ろしいことって!?…フォミクリーに関係あることなのか??」
ルークは…
ネフリーから聞いたことで…疑問だったことをジェイドに聞いていた。
ジェイドは…
「…知れば…後悔するかもしれませんよ?」
静かに…そういう。
だが、ルークはどうしても知りたかった。
そのことを聞いても…
「それでも!オレは知りたい!!」
そうはっきりと告げる…
ジェイドは一瞬…目を閉じたが…
すぐに開く。
「そうですね…貴方には知る権利がある…」
そういう…
ルークも神妙な顔つきになる…
でもその前に…
「その前に、2人を運びましょう。床で寝ていたら、風邪を引いてしまうかもしれません。」
ジェイドが2人を指差してそういう。
「あっ!ああ!そうだった!!」
ルークは…忘れてたみたいだ…
まあ、2人はぐっすりと…ダウンしてるからね… 苦笑
とりあえず、2人はロビーのソファーに寝かせることにした。
部屋までは少し骨が折れるからだ。
そして…再び椅子に座ると…
「さて…どこから話しましょうか…」
ジェイドは…そういう…
「そう…ですね…私がネビリム先生を殺してしまったのです。」
「!!!」
ジェイドが…衝撃的な事実を告げた。
それは、幼少期のこと…
サフィールとジェイド…
二人が遊んでいた。
いや…ジェイドは感情があまりなく…サフィールのことは相手にもしていなかった。
だからサフィールが後ろをついて回っていた。
そして…ある時、追いかけていたサフィールは、足を滑らせ転倒し怪我をしてしまった。
泣き叫ぶ彼を…救ったのがネビリム先生…
第七音素(セブンス・フォニム)を使用した治癒を持って…
ジェイドは、どんな譜術も使える自信があったのだが…第七音素(セブンス・フォニム)の素養だけは全くなかったのだ。
そのとき…
ネビリム先生を見た時、初めて人を…他人を尊敬すると言う感情が出来たのだ。
そして、それだけにとどまらず、ネビリム先生は…あらゆる事を皆に教えていた。
そして、
「いい…?ジェイド。強い力は人を不幸にすることもあるの。貴方は必要以上のものを求めすぎている。それは…いつか貴方の身を滅ぼすかもしれない…」
あらゆる事を知りたがるジェイドに…不安感、そして、心配した先生は…そう言い聞かせる。
だが…
「でも、僕は全てを知りたい。第七音素(セブンス・フォニム)だって、扱えるようになるはずだ。」
そういって…理解してもらえない…
「ジェイド…」
ネビリム先生は…
時間が有るたびに…説得をしようとしていたが…
聞き入れなかったのだった…
そして…
悲劇は起こった。
燃え盛る学塾…
そして、倒壊していく…
そんな中に…
生き物の存在を拒むかのような場所にいたのは2名…
「せ…せんせ…僕…僕も第七音素を使ってみたくて… こんな…こんなつもりじゃ…」
爆発から庇ってくれたのは…
もう1人いた人物…
ネビリムだったのだ。
もはや…虫の息…
いや、生きているのが奇跡としか思えないほどの致命傷を負っていた。
そんな先生を見て思いついたのが…
「それが、フォミクリー…?それで、ネビリムさんは…?」
ルークがジェイドにそう聞く。
「失敗しました。レプリカは不完全のまま暴走し…本物の先生は亡くなった…」
その時、サフィールが泣き叫びながら…復活させようと…
完全なレプリカを2人で…っと叫び続けていた…
「私は…私の才能を買ってくれた軍の名家であるカーティス家に養子に入り…軍人になってからは、戦場で戦死者達のレプリカ情報を抜き出して…死霊使い(ネクロマンサー)などと呼ばれるようになった…」
彼の呼び名は…
全ては、ネビリム先生を復活させるためにしていた行動だったのだ…
だが、傍で見ていればそうは見えないだろう…
「気持ちは分かる…俺も大切な人がそんなことにあって…レプリカを作る事ができたなら… でも、ならどうして生物レプリカを禁止にしたんだ?」
ジェイドにそう聞く。
以前ジェイドは言っていた。
自分自身で禁忌としたと。
だが…
彼の行動とは正反対なのだ。
「…何度目かの実験で失敗して、私が死に掛けたとき、私を止めてくれたのですよ。…陛下がね。」
「…ピオニー陛下が…?」
ジェイドは…頷く。
「薄々気がついてはいたんです… レプリカは過去の記憶がない。それは決して…ネビリム先生ではないのだと… 私は許しを請いたかったのです。自分が楽になるために…」
はじめてみせる…弱々しい…表情だった。
「ジェイド…」
ルークも言葉を失う。
「私は一生…過去の罪に苛まれて生きてゆくのです。…喋りすぎましたかね… もう眠りなさいルーク。2人は… この場所に寝具を持ってきてもらいますから。」
そういう。
「あ…うん。ありがとう、ジェイド…」
「出来れば…ここには来たくはなかったのですが・・・」
ジェイドはそういって苦笑いをする…
「ジェイド…話してくれてありがとう。初めて…アンタに近づけた気がするよ。」
そういって笑いかけた。
「そうですか…」
ジェイドも…心なしか笑っていた。
「あ…そうだ、後…」
ルークは、笑顔を消した。
「何でしょう?」
ジェイドはなにやら聞きたそうなルークの表情を見てそう聞く。
「…アルのことなんだけど…アルも…レプリカ…なのかな?」
ルークはそう聞く。
「…どうしてそう思うのです?」
「…いや、ただ…なんとなく…だけど… 記憶がないって言うだけで、決め付けてるのかもしれないけど…」
ルークはそういう。
アルは…
自分の記憶がないことを…少なからず、気にしていた。
同じ境遇なのだ。
よく…それは分かった。
おそらくは、仲間達の誰よりも…
アルは…心配かけまいとしていたが…
それが見て取れたのだ。
「…もし、そうなら…」
故郷のこと…あんな思いをしただけじゃなく…
オレと…同じ思いをする…?
特に故郷は…オレが…
「ルーク。」
ジェイドはルークのほうを向く。
「おお???」
考え込んでいた時に突然言われ少し驚いた表情をする。
「アルにそんな表情(かお)をしているのを見られたら、また言われますよ?」
そう言って眼鏡を上げる。
「え…?あ…ああ、そう…だよな…」
ルークはすぐに理解した。
「彼は…違います。おそらくは…まあ、確証はありませんがね?」
そういって笑っていた。
「……そっか、アンタにそういわれても……信じにくいけど… 安心は出来たよ。矛盾してるかもしれないけどな。」
そう言った。
そして…
「今度こそ寝るよ。ありがとうジェイド。」
そう手を上げて…
眠っているミュウを肩に乗せ…部屋へと戻っていった。
ルークが去った後…
その場で起きているのはジェイド・・・
だけではなかった。
「……狸寝入り…ですか?」
視線を…向ける。
「…は…はは、何時から気がついたの…?」
目を開けたのは…アルだった。
「すぐに気がつきましたよ。特にルークが貴方の話をしていた時なんか特に・・・ね。」
そういって、眼鏡を上げる。
「そっか…ルーク…イオンの言ったとおりだよ。本当に優しい…」
アルはルークがあがった方を見る。
「私から言わせれば貴方もなんですがね?」
ジェイドは苦笑いをしていた。
「…ははは… あれは、ルークを安心させるために言ったのかな?」
アルはそう聞く。
「いえ…事実です。貴方ほどの使い手のオリジナルがいたとして… そのような存在がいたのなら、必ず私の耳に届くはずなのです。特に…レプリカ…フォミクリーをしている可能性があるのなら…ね。」
複製術であるその技術。
強大なものを意図的に量産できればすぐにでも最強の軍団が作れるのだ。
レプリカ情報はどんどん減っていき…そしてあるリスクもあるのだが……
「そのようなことをしている敵国がいたのならば…すぐに脅威となっていたはず、もしくは落とされている国があってもおかしくは有りません。」
ジェイドが…ここまで、俺の力にそう感じていたとは知らなかった。
「…そっか。」
少し複雑だ…
自分のことが脅威だと遠まわしに言っているようなものだ。
でも…他の人に言われたのなら、悪い気しかしないだろうが、言ってくれているのはジェイド…
かけがえの無い仲間の1人だ。
…安心できた。
ルークの存在を知って…
自分もあるいは…?
…っと考えなかった。と言えば嘘になる。
「ルークの言った通り。安心できるよ。ジェイドが言ってくれたらさ… ありがとう。」
ルーク同様に;・・・ 礼を言った。
「はは…」
2人の姿がダブったのか…
ジェイドの表情は…笑顔だった。
「後さ…ティアはオレが運ぶよ。オレに付き合わせちゃったからこうなったから。」
そして、頭をかきながらティアのほうを見る。
「そうですね… 任せましょう。貴方はもう酔いは醒めたようですから。…また、私がお教えしましょう。ちゃんとした飲み方を…ね…」
そういう。
「はは…よろしく頼むよ…でも…当分は…ムリかもだけど…」
あの頭の痛さ…
くらくらして
平衡感覚がなくなる感じ…
うう〜〜ん…
トラウマに・・・?
ははは…
2人して笑っていた。
その後…
ティアを抱え…部屋へ向かう。
当然女性の部屋。
ティアは自分の部屋の鍵は持っているだろうけど…
アルは持っていない。
ってか、当たり前だろう。
ティアがとっている部屋は女性のみの部屋だ。
…アルがもっていたら、おかしいだだろ? 苦笑
…ティアのためと、連れてきたはずだけど…
部屋に差し掛かったところで気がつく…
「うう〜〜ん・・・流石に押しかけるわけにはいかないし…フロントの人ももういなかったし…」
困っていた… 苦笑
その時。
「ん…んー…」
ティアの目が…薄っすらと開いた。
「あ…ある…?」
焦点の定まらない眼でアルを見ていた…
「あ…ティア…眼が覚めちゃった?ゴメン…」
でも好都合だったかも…?
これなら部屋に入れてあげる事が…
「私…あれ?…って//」
ティアはすぐに自分の状態に気がついた。
これは…所謂…お姫様抱っこ?
「あ…アル!あ…あの!もうおろしてくれていいわよ///」
自分でも顔が赤くなっているのが良く分かる。
でも…
「まだ、顔が赤いよ?オレがつき合わせちゃってなんだけど… 部屋ももうちょっとだし、このまま送って行くよ!」
そういって笑顔で答えた。
「あ…う…///」
笑顔を見て…何もいえない…ようだった。苦笑
顔が赤いのは…
酔っているから…
そう結論したアルに感謝しないと… 苦笑
それでも、アルがしてくれているのは、お姫様抱っこ…
女の子なら憧れることだ。
その…好きな人に……
「・・・・・・・・・/////////」
ティアはさらに顔が赤くなりそうだったため…
ずっと…狸寝入りをしていたのだった。
そして…部屋の前へ…
「あの……えっと、此処から先は…ちょっとムリだから…お願いね…。」
そういっておろす。
女性の部屋だ。
そりゃ……ねぇ? 苦笑
「あ…ありがとう…//」
ティアはそう言うと……、部屋へと入っていった。