#83 真実は……
宿屋に着き……。
「では、こちらへ…」
軍の人たちが手を貸してくれて、ガイは一足先に部屋へ運び込まれた。
皆も後に続こうとした…が。
「…ルーク。」
イオンが…遮る様にルークの前に立つ。
「イオン?早くガイを!」
ルークは深く気にせずに、イオンにそう言う。
しかし…これから話す事…それに衝撃を隠せなかった。
「いずれ…わかる事ですから、今お話しておきます。」
イオンは…表情を曇らせる。
「カースロットというものは…決して意のままに相手を操る術ではないんです。」
イオンが…そう告げる。
「…え?でも ガイは…正気って感じじゃなかったし…そんな状態にしているのに?」
アルも不思議に思いそう言う。
あの時のガイの目を見ればよくわかる。
……虚ろな表情だったからだ。
「…どういうことだ…?」
ルークも聞いていた。
間近で攻撃を受けたのはルークなのだ。
不思議に思ってもしかたない。
「カースロットは…記憶を揺り起こし、理性を麻痺させる術。つまり……。」
イオンは、正面に向きなおす。
「もともとガイに…貴方に対する強い殺意がなければ攻撃するような真似はできない…」
「「「「!!」」」」
その場にいた人…全て驚愕の表情をする…。
中でも…ルークは……。
その後…少ししてルークは……。
思いつめた顔をして…宿屋から出て行った。
街を佇んでいるあいだに、日は落ち……。
夜のグランコクマ……。
その…水の都の橋で…一人。
「……………」
ルークは。
過去の……軟禁生活での事を思い出していた…。
それは本当に…つまらないものだった。
毎日毎日同じ事の繰り返しだ。
それが……成人の儀まで続くと考えたら本当に地獄のようだと感じていた。
そんな中での事だ……。
自分を救ってくれていた人物の一人…。
それが……
【ガイ】だった。
それは……他愛も無い話から始まって…。
そして、剣について…。
生活の面でも……。
だが…。
よくよく…思い出してみると…。
時々…本当に時々見せるガイの冷たい目…。
それを思い出していた。
館にある【剣】を見上げていた時……特に感じた。
あの時…本当はどう思っていたのか?
ガイは…いったい……どう思っていたのか。
考えても…わからない。
唯…わかる事。
それは、あの時の…。
ガイが襲ってきた時の『目』……。
昔の時の『目』と同じだった事だ。
(ガイ……。)
ルークは……。
どうしていいのかわからない……。
だから……時間を忘れて……ずっと佇んでいた。
そこに……。
ゆっくりとした足取りで…近づいてくる者がいた。
指を…ルークの傷に近づける。
“キィィィィン………”
第七音素の輝きだ…。
ルークの傷は見る見るうちに塞がっていった……。
「うわっ……!」
振り向くと…
そこにいたのは2人と1匹。
ティアとアル…そして、ミュウだ。
ルークは、それを確認すると……。
「一人にしておいてくれないか……?」
そう言った…。
「約束したわ…。ずっと貴方を見ているって…」
ティアは…そう言った。
「オレもな、約束だろう?1人になんてさせないよ。」
アルもそういった。
ティア同様…ほっとけないようだ。
「僕も!ご主人様のそばにいるですの!!」
ミュウも………。
だが…ルークは…。
「ほっといてくれよ……。」
聞く耳を持ってくれない…
そんな姿を見たティアは…。
「はぁ…貴方馬鹿?」
突然!暴言だ……。
「ええっ!ティア!ちょっ!!」
流石にアルは…声が出ちゃった…。
突然の暴言だし?
「なんだとっ…?」
ルークも同様だったようだ。
「自分がほんの少しの悪意も受ける事のない人間だって思っているの?」
ティアは
「そ…そーいうわけじゃ…。」
ルークは言葉に詰まる…。
(なるほど……ね……。ティアの言いたい事…。)
大体…わかった。
慰め…をしようとしてるのだろう。
でも……。
(ちょっと…ねぇ?やっぱし、不器用みたい……だね。)
苦笑いがとまらなかった…。
「ガイだって人間だもの。貴方に仕えててカッとなる事もあったんだとおもうわ。」
そう言う…。
「……うん。それは間違いないと思うぞ?ルーク。身に覚えあるし?」
アルもそういった。
…あの街でのこと…だろう。
「うぅ………。」
ルークは…流石に萎縮していた…。
「はは…。ごめん。ちょっと意地悪したな…。100%蟠りがないって言ったら…うそになるけど…オレはルークを信じているからね。もちろん、ガイも。…ね?ティア。」
そう言ってティアの方を見る。
「その通りよ。だからこそ…ガイは貴方の事を待ってくれていたのよ。いえ…迎えに来てくれた。」
そう言ってルークを見直す。
「ガイは…貴方を殺したいほど憎んだ事があった。それは間違いないと思うわ。」
そうティアが言った。
それはカースロットが証明している。
間違いの無い…事実だ。
「……でもルーク。……今このメンバーの中で…たぶん、いやっきっと。最初っからルーク……君を信じていたのはガイだけだと思うよ。じゃなきゃ、1度地上に上がって、戻ろうとするなんて無いって。」
そうアルが繋げた。
「……あの力……。カースロット。理性を麻痺させるって言うなら…そう言う信じてる事も……思っていることも全部無しにされてしまう…ってことだ。ちゃんと話をしたら…すっきりするって。だから……」
アルは…神妙な顔つきになる…。
「ははは……ありがとう、アル。慰めてくれて…な。」
ルークは…俯いていた表情が明るくなった。
「でもな…… ティアは相変わらずきついな。そんな言い方されたら…こっちは余計に傷つくだろ?」
ティアにそう言う。
「ははは……まぁ…確かに…。いきなし 『貴方馬鹿?』…だし…。」
アルも苦笑い…。
「あ…ごめんなさい…。そう…きつかったのね…。」
ティア本人はさほど思ってないようだった。
「あはははっ」
アルはそんなティアを見て笑う。
「もう…アルっ笑いすぎよ!」
そんなアルを見てティアはムッとしていた。
「ははは……ティア、アル。」
笑っている二人を呼んだ…。
「?」「ん?」
2人が向きなおしたのを確認すると…。
「ほんとに…ありがとな……。」
素直に…そう言えていた…。
自然と…みんなの表情が笑顔になっていく…。
「みゅ?みゅ??」
ミュウは…。そんな3人の顔を交互に見て……。
先ほどの暗い感じがうそのようだったのを見て……。
「みゅう♪」
ミュウも一緒に笑顔になった。