小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#85 マルクト帝国皇帝 ピオニー・ウパラ・マルクト九世




























そして、翌日……。

【謁見の間】前にて

「……こういうのって……やっぱり何度やっても緊張するな……。」

アルはそう呟く。

「あれ?アルってそうだったのか?そんな顔してなかったと思ったけど?」

ガイが意外そうにそう言っていた。

「普段は、多少はごまかしてるけどね……。キムラスカの陛下にも会って……あの時だって十分緊張してたよ?」

そう返す。

「まぁ、アルはポーカーフェイスなんですわね?ちっとも気づきませんでしたわ。」

ナタリアは少し驚き気味でそう言う。

「はっはっは〜 これはギャンブルをする時はアルと一緒が吉かもしれませんねぇ〜。」

ジェイドも………。

「ちょ……ちょっと!内心バクバクなんだから!あんまし 茶化さないでよ!」

そうは見えなくとも……。

実際はそうなのだろう。

「はぁ……いいから 入ろうぜ?ピオニー陛下を待たせるわけにもいかねんだからさ。」

そんな皆を尻目に……ルークがそう言う。

「ほら!ルークも言ってるよ?いこう!」

しめた!!ってな感じでアルもそそくさと前へ……。

そんなアルの事を笑いながら……。

そして、ルークの事も見ながら……。

皆は謁見の間へと入っていった。


謁見の間……。

その玉座の方へと向かい……。

そして、傍についたと同時に。

「よぉ〜〜!アンタ達だったのか?オレのジェイドをつれ回して返してくれなかったのは?」

陽気な声があたりに響き渡る……。

「………へ?」

アルは……スットンキューな声を思わず出してしまい……。

「……は…ぁ?」

ルークも、似たような感じだった。

「フッ……コイツ、封印術(アンチフォンスロット)なんて喰らいやがって、使えないヤツで困ったろ?」

そんな 状態を露知らず……。

ピオニー陛下は続けた…… 苦笑

「ええっと………いや、ジェイドは……その、凄く助かってます。オレの故郷……アクゼリュスの時だってそうですし……。」

アルは身構えていた為、思わぬダチ喋りな感じに少しテンパリながら……そう言っていた。

そんなアルを見たジェイドは……。

「んんっ……陛下?客人を戸惑わせてどうされますか……。」

咳払いを一ついれ……そういった。

「っは!違いねえ、アホ話してても始まらんな。本題に入ろうか……ジェイドから大方の話は聞いている。」

そう言い……。

話を進めようとしたとき。

「このままだと!セントビナーが魔界に崩落する危険性があります!」

いの一番にルークがそういった。

それを聞いたピオニー陛下は……。

「……かもしれんな。実際セントビナーの周辺は地盤沈下を起こしているそうだ……。」

そう肯定した。

「ッ!そ…それならっ!」

アルも動揺する。

あの……アクゼリュスの崩落の瞬間がまた、頭の中によみがえってきたようだ。
「そうですわ!街の住人を避難させなければ!」

ナタリアも同様だ。

だが……。

「ふむ……そうしたいのは山々なのだが…… 議会では渋る声も多くてな。」

ピオニー陛下はそう言う……。

「何故ですの陛下!?自国の民が苦しんでおられるのに!」

ナタリアは納得がいかない……そう言っていた。

それは 勿論。

「そうだ……そうです!あんな……あんな出来事はもう起きちゃいけない……起こしちゃいけないんだ!」

アルも……叫びに似た声を上げる。

「………キムラスカ軍の圧力があるのですよ。」

ジェイドが……そういった。

そして……

それに続くように、陛下の側近が……。

「キムラスカ・ランバルディア王国より声明があったのだ。【王女ナタリアと第三王位継承者ルークを亡き者にせんと…アクゼリュスごと 消滅を図ったマルクトに対し、遺憾の意を評し強く抗議する…。そして、ローレライとユリアの名の下直ちに制裁を加えるであろう】……とな。」

そう……説明した。

これは……即ち。

「事実上の宣戦布告……ね。」

ティアはそう呟いた。

つまり、宣戦布告をしている以上……いつ戦争がおきてもおかしくない常態だと言う事だった。

「でも……ルークもナタリアも無事だから…。」

アルがそう言うと、

「そうです!父は誤解しているのですわ!」

そう言う……が。

「果たして、誤解であろうか?ナタリア姫。我らはキムラスカが戦争の口実に、アクゼリュスを消滅させたと考えている。」

そう切り替えしたが……。

ナタリアは凛と表情を変えず。

「我が国はそのような卑劣な真似は致しません!」

はっきりと……否定した。

「アクゼリュスは、オレが……!」

ルークが自分を指しながらそういおうとしたとき。

「ルーク!」

ジェイドが間に入りとめる。

「……事情は皆が知っています。」

そういった。

【大方事情はジェイドから聞いた…】

先ほどのピオニー陛下の言葉だ。

なら、全ては知っていると言う事だろう。

「原因は…この際重要ではない。」

「そっ!セントビナーの地盤沈下がキムラスカの仕業だと議会が思い込んでいるのが問題なんだ。」

ピオニー陛下もそう繋げた。

議会が……思い込んでいるのが問題……?

崩落は……敵国の所作……。

なら……何時でも起こせる……?


「ッ……。そう言う事……か!人為的に崩落させようとしてると考えているとしたら…救助に差し向けた軍を街ごと消滅させられるって考えているのか?」


アルがそう結論付けながらそう言うと……。


「「「あッ!!」」」


皆が驚きながら声をあげる。

そして……。


「………その通りだ。」


ピオニー陛下も否定しなかった。


「それならっ!!」


ルークが一歩前へでる!


「オレ達に 行かせてください!オレは……この国にとって大罪人です!今回の事だって俺のせいだ!」


ルークが……そう言う。

「「ルー……ク……。」」

アルは…勿論ティアもルークを見つめていた。


「だから……オレに出来る事はなんでもしたい!皆を!助けたいんです!!」



はっきりと……。

今度は誰から言われたわけでもない。

自分自身がしたいことを……。

償いを……

口に出し……叫んだ。



「ふむ……。」


ピオニー陛下は……そんな言葉を聴き……考え込む。


そこに、

「セントビナーの救助作業は私の部隊とルークたちで行い、北上してくるキムラスカ軍はノルドハイム将軍が牽制なさるのがよろしいかと愚考しますが。」



ジェイドがそう言う。

すると……

ピオニー陛下は“フッ…”っと笑みを零し。

「そう言うことだ。どうだ?ゼイズマン。ジェイドもこの件に関してはこいつらを信じて良いと言ってるぜ?」

そう側近のゼイズマン言う。

それを聞いたゼイズマンは…。

「ふむ、その方向で議会に働きかけておきましょうかな。」

そう返事をする。
どうやら……つながったようだ。

「恩に切るぜ?じいさん!」


その声に皆が喜ぶ!


「じゃあ!セントビナーを見殺しになんて…!」


「勿論しないさ。とは言え…助けに行くのは貴行らだがな。」


そう言うと、立ち上がり……。


「さて……議会を召集しなけりゃならん…。」


そういいながら……。

皆の前に来ると…。


「……オレの大事な国民だ救出に力を貸してほしい。頼む。」


そう……言っていた。


「全力を尽くします!」

「二度と……あんな事を起こさない。同じく……です。」


そう言うと……。

ピオニー陛下は笑みを零し……。

議会室の方へ……


っと…その前に振り向き、


「じゃあ、ジェイド!……後でな?」


そういい、再び向かった。

「はい。」

ジェイドは一言返事をし。

謁見の間を後にした。







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