#88 城砦都市セントビナー・崩落
場面は変わり、
【城砦都市セントビナー】
ここ、セントビナーでの地盤沈下の影響が色濃く現れており……。
そのことについて、色々と問答を繰り返しているようだった。
「ですから!今は軍がこの街を離れるわけにはいかないのです!キムラスカ軍はカイツールを突破しているのですよ!?」
「だから……まずは 動けぬもの、乳飲み子だけでも避難させろと言っておるのじゃ!アクゼリュスの二の舞だけは避けねばならんじゃろう!」
とまあ……。
こんな感じで続いていた。
簡単に言うと、
街の住民の避難となれば、大規模な作戦となる。
無用な混乱を避け、安全に街の皆を避難させなければならないのだ。
ましてや、街の外には魔物もいる。
そうなってくれば、どうしても軍隊の力は必要となるのだ。
だが……。
将軍が言うとおり、今はキムラスカ軍が、カイツールまで迫っている。
そこで、この城砦都市であるセントビナーの軍がいなくなれば?
瞬く間に進行されてしまうだろう。
だから……。
この話は平行線をずっとたどっていたのだ。
だが………。
「まあまあ……お2人とも落ち着いて、」
まず、ジェイドが……。
「そうだよ!今は時間が無いんだ。いつここが崩落してもおかしくない状況なんだから!」
アルも同様だった。
この場には、軍関係者しかいない。
だから、ここまでストレートに言ったようだ。
「だが……。」
迷ってはいるのだが……。
そう考えていた時。
ジェイドの顔を見ると一遍!
「お……おおっ、ジェイド坊や!無事じゃったのか??」
長老である、マクガバン元帥が驚きながらそう言う。
どうやら、ここでも ジェイドは死んだと思われていたようだ。
「元帥……坊やはやめていただきたいですね。それよりも街の住民の避難が先決です。軍が動く事も皇帝陛下からの許可はでています。まもなく援軍も到着予定です。」
皇帝陛下……ピオニー陛下からの許可がでていて、尚且つ、援軍もくるのであれば……。
街の住民の避難も滞りなく行う事ができるだろう。
将軍も承諾し、街の軍に命令を下した。
そして、ルークたちも一斉に取り掛かった。
街に避難命令が出されて……。
街では少なからず混乱……不安……恐怖………。
それらが住民を襲っていた。
「落ち着いて!子供やお歳よりは馬車で!」
「さぁ!こちらです!!」
軍関係者だけじゃない。
皆手分けして、住民を落ち着かせながら誘導をしていた。
「皆!落ち着いて!大丈夫だから、力のある人は、子供や高齢者を守ってあげて!皆で助かるんだから!」
アルも、声の限りそう叫ぶ!
だが、如何せん人数は多い……。
「きゃあっ!」
子供が、押されてしまい……。
倒れてしまった。
「っ!っと!」
アルが倒れてしまった女の子を抱えあげる。
「……大丈夫?」
緊張しているのがよくわかる……。
だから、笑いかけた。
安心できるように……。
「う……うん!」
よく見ると怪我をしているようだ。
「……偉いね?よく泣かなかったよ。……ん。」
足を擦りむいているようなので、簡単な治癒を施す。
「あっ……。」
女の子は、痛みが和らいでいくのがわかったようだ。
「はい、もう大丈夫だよ。」
そういいながら、立たせてあげると………。
「あっ!ありがとうございます!!」
この子の母親らしき人が慌ててこっちにくる。
「大丈夫ですよ。さあ、逸れない様にしっかりと手をつないであげてください。」
アルはそう言うと、避難再開を促した。
女の人は一礼をすると、列へともどっていく。
「あっ……お兄ちゃん!」
女の子が振り返りながら……。
「どうもありがと……!お兄ちゃん!!」
笑顔でそう返した。
アルはそれに手を振って答えると……。
すぐさま、他の誘導に戻っていった。
そして……。
大きな混乱も無く順調に行えているのを確認すると……。
「やれやれ……助かったわい。地盤沈下が進んでいる時は生きた心地がせんだったわ。」
マクガヴァンは、安堵からかそう呟いた。
「これなら十分間に合いそうですね。よかったです。」
ジェイドもそう言う。
「……ありがとうよ。ジェイド坊や。」
「マクガヴァン元帥……ですから、坊やはもう良いでしょう?」
ジェイドがため息混じりにそう言う。
「ほっほっほ!ワシはもう引退した身じゃよ!いつまでもワシにとっては坊やじゃよ。」
そう言って笑っていた。
その時。
「ジェイド!!」
ルークが……2人の方へ、走り寄る。
「あっちで呼んでるぜ?あ……」
ルークはジェイドにそう伝えるとマクガバンのほうを見る。
「もう住民は残ってないですか?オレもう一度確認してきましょうか?」
ルークがそういった。
すると……マクガバンは笑顔で、
「ああ、もう大丈夫じゃ。後はここにいる我々だけで。」
そう答える。
「そうですか、なら……急いで!」
「おーい!ルーク!」
次にアルが傍に、
「さっき言ってた、子の親は見つかった?」
そういいながら駆けつける。
どうやら、避難誘導の時にルークにもそういった事があったようだ。
「ああ!大丈夫だ!父親が見つかって、無事に避難しているよ。」
ルークはそう言う。
「そっか、良かった……。あっ!それより、早くこの場所から離れた方がいい!!」
アルが慌てながらそう言う。
「何かあったのですか?」
ジェイドがそう聞くが……。
「説明は後で!今は時間が無い!早くここから……。」
そう言っていたその次の瞬間!
“ドゴオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!”
凄まじい地震があたりを襲う!
皆が騒然としていた時、
更に不運に見舞われることになる。
“ビギビギビギビギビギビギ………ズゴオオオオオオオオオオオオッ!!”
地盤沈下が始まったのだ……。
街に亀裂が入ってゆき……。
ルークたちと、マクガヴァン・軍隊の人たちが切り離され……。
そして、街が沈みだしたのだ!
「マクガバンさん!!!」
ルークが、飛び降りようとしたとき!!
「ルーク!!」
ジェイドが腕を取りそれを止めた!!
「くそっ!!!遅かった!!」
アルは、遅れた事を……一瞬悔いていたが……。
すぐさま行動に出る!!
「ジェイド!ルークを……みんなを頼んだよ!」
そう言うと……。
「ッ!アル!?何をするのですか!」
ジェイドはルークを掴みながら…。
そう聞いたが、遅かったようだ!
“ダッ!!”
アルは、沈下していっている方へ飛び出したのだ!
「ばっ!!バカやろう!!何してんだよ!!アルーーーっ!!」
ルークは思わず叫んだ。
自分自身がやろうとしていた事の無謀さを……理解したのだろう。
だから、ジェイドに止められた。
だけど……アルは……。
“ダンッ!!”
アルは無事、下に着地すると……。
「オレが、時間を稼ぐから!皆は、助ける方法を考えて!!」
大声でそう言う。
「時間を稼ぐ…?」
ジェイドは……一瞬混乱しそうになった。
それはそうだ、崩落していく大地。
それを防ごうと言うのだから。
だが、直ぐに考えるのをやめる!
時間が惜しいのだ!
「アルーーーッ!!マクガヴァンさんッッ!!!!」
ルークは叫び続けた!
そして……
他の皆も異常に気がついたのか。
すぐさま駆けつける!
「あッ!!アルッ!!」
ティアは勿論。
イオンも……ナタリアも……アニスも……皆驚いていた。
自分から飛び込んだ。
その事実を聞いて更に……。
「私が……ッ!私も下に降りて譜歌を使います!」
ティアは、落ち着きながら……言おうとしているが。
やはり気が気でないようだった。
「駄目です!もう距離がありすぎます!!」
「どうしたらっ……!!!」
「ちッ!!またアイツ…無茶しやがって!」
「くそっ!マクガバンさん!!アルッ!!!!」
立ち尽くしていたとき……。
“ビュオオオオオーーーー!!!”
影ができた。
頭上の空に巨大な影が横切ったのだ……。