#89 蘇るセフィロトツリー
アル side
アルが下に飛び降りたのは全く考えが無かった訳ではない。
アルは、直ぐにマクガヴァン達の下へと急いだ。
「皆!無事ですか!?」
アルは一通り見渡す。
どうやら、誰も怪我らしい怪我はしてないようだ。
それは幸いだった。
怪我人がいれば、治癒の力を使わなければならない。
だが……これからすることを考えれば……。
あまり【力】を使いすぎるのは得策ではなかったからだ。
「全く!お前さんは無茶を……。」
間近で飛び降りるのを見ていたマクガヴァンは、驚きつつそう言う。
「大丈夫です!考えなしじゃないです、それに…」
上を見て、
「皆がいるから大丈夫!きっと何とかしてくれますから!」
そう言って笑った。
そして、マクガヴァンの隣にいた男の方に向く。
「えっと……貴方は将軍の。」
アルは、マクガヴァンの後ろにいた軍の将軍に目を向けると。
「は……はい!私はグレンと申します。」
グレンは……慌てながらも自己紹介をした。
自分より若いであろうこの男の凄まじい勇気に…驚いていたのだ、
「あ…はい、グレン将軍。お願いがあります!こちら側に取り残された人たちを出来るだけ一箇所に集めてください!もう、あまり時間がありません!」
アルは早口になりながらそう告げる。
「わ…わかりました!」
いつもなら、何をするのか・自分に手伝えない等細かく、
聞くのだが……。
時間が無いのは明らか……
そして、このアルという男の剣幕に何も言えず、直ぐに行動に入った。
そして、皆が一つの場所に集まり…。
互いが互いを養生していた。
本当に特に問題なさそうだった。
それを確認したアルは……。
「よ……し………。」
深く……深く……深呼吸する。
(故郷……アクゼリュスでは、オレは何も出来なかった……。)
そんな時に思い起こすのは故郷での事……。
(ただ……感情に任せて……意識を失って……、……仲間に支えられ、守られ…… 最後はただ、崩落するのを眺めるしか無かった……。)
傷ついた身体を支えてくれた皆……そして、護ってくれたティアの譜歌。
何も……出来なかった自分。
今は……あの時とは違う!
(もう…!あんな思いは二度とゴメンだ!!)
“ゴッ!!!!!”
アルの周囲に……
風が巻き起こるような現象が起こる!
「こ……これは?」
マクガヴァンは、目を見開いてその姿を見ていた。
感じるのは音素の力。
だが……矛盾しているが今まで感じたことの無いものだ。
「第一……いやっ、第二…?」
グレンも驚愕しながら、それを見ていた。
「違う…ぞい……全ての…音素じゃ、第七を含めた……。その様なことができる者など……ワシは聞いたことが無い……。」
結論付けたようにそう言う。
それしかないのだ。
1つ1つは見に覚えのある力。
だが、何処か違う。
それは当然だった。
全ての音素を含んでいるのだからだ。
……マクガヴァンはジェイドが言うとおり、マルクト帝国の元帥。
それは元マルクト軍の元帥だ。
そしてジェイドの師匠でもある。
今は老いぼれてはしまったと自覚はあるが……。
知識の量は負けてない自信は健在だった。
だが……目の前の光景は……。
その間も……アルは集中を続ける。
「集え…地水火風光闇………根源たる力たち……。」
集中を続けるが……。
これまでにない、力を使う為か…。
体中に痛みのが走る……。
だが……。
(今は……これしかない!大地を支える事ができるのは、セフィロトツリー……頭の中で……確かに……使えるのは確認済み……だ!)
思い起こす……。
それは、魔界にいた時の事。
アルは、ルークが目覚める間……。
安静にしながらも、ティアに頼み、ユリアシティの図書室で色々と調べていた。
どのようにして……大地を浮かせているのか?
そして………オレに……そのようなことができるのか?
それを考えていたのだ。
当然……街を崩落で失ったのだ。
それを防げるのであれば……。
サラが言ったように……助けを待ってる人たちを……助ける事が出来る。
そして、自分自身にも出来る事もわかった。
いや……出来る、と言うほど生易しいものではない。
………生身で行えばかなりの危険があるのも十分にわかっていた。
だが……それでも!
「……吹き上げるは星の息吹。纏え……母なる大地にへと…。……今我が願いに答え……この場に具現せよ………。」
アルは……最後まで言い終えると!
「………今この場に解放せよ!【セフィロトツリー!!】」
そう言い放つ!
“キィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!”
それに反応したのか?……風が吹き上げる!
「お……おおおおっ!!!」
マクガヴァンは…決して目をそらさず…
アルを見ていた。
神々しく光るその男は……、
まるで……神のような……。
信仰心がそこまであるわけではないのに……。
そう感じてしまうようだ。
「これ……は?」
グレン将軍も。
周りに吹き荒れる優しい風?を触りながら……愕然としていた。
そして……その風………セフィロトは……。
街をやさしい光で包み込むと……。
大地の下に回りこんだ……。
その瞬間!
“ズズズズ……………。”
落下速度が変わった!
街の皆は突然の速度の変化に戸惑う。
慣性が利いている為仕方の無いことだろう。
だが……まだ、落下しているとは言え……。
確実に速度は落ちていた。
「お……お前さんは一体……!」
驚きながら…アルの方へ近づくと……。
「っ!!!!」
黙っていたアルの異変に直ぐに気づいた!
アルは……まるで、全身からにじみ出ているかのような大量の汗……。
そして、セフィロトを出したと思われる……全ての音素を集中させた腕が……。
不自然な感じになっていたのだ。
見たことも無い症状……。
だが、原因はわかる!
腕を……構成する音素が……ズタズタになってゆくのがわかる。
「や…やめるんじゃ!!もうこれ以上その力を使うでない!!お主が死んでしまうぞ!!!」
全ては今使っている力が原因なのだろう。
それは一目瞭然だった。
だから……。
「だ……ダメ……。今……止めたら……ッ……街が反動で……崩壊してしまうかも…しれない。」
アルは……それを拒否する。
「し…しかし、それでお主が死んでしまたらどうするんじゃ!若い主がワシらの為に死んだとあっては……ワシは……!」
マクガヴァン元帥は……
引退したとはいえ、軍人。
そして、この場に残されているは殆どが軍人だ。
覚悟は出来ている。
だから………。
だが、アルはその言葉に……笑顔で答える。
マクガヴァンの考えを呼んだかのようにだ。
「だいじょう……ぶ……ですよ…… だって……みんなが……助けてくれる……から……」
辛そうなのだが……。
心底信頼しているのがわかる。
いったいどうやって!?……とは聞けなかった。
そのときだ!!
落下していく街の上空に……突然影が出来たのは。
「あはっ…………。」
アルはその影を見て……
自然と微笑んでいた。
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