#90 落ち逝く大地から
ルークたちは突然現れた飛行船に驚きながらも着陸したため、搭乗していた。
そして、操縦席にいたパイロットが…自己紹介をする。
「私は当機アルビオールの専属操縦士、ノエルです。ピオニー陛下の要請で参りました!」
操縦しながらそう言う。
「やはりそうですか……!」
ジェイドも初めは驚いていたが……。
グランコクマで、ピオニー陛下の言葉を思い出していた。
それは、【心強い助っ人】だ。
ルークも喜びをあらわにする。
「これで助けられるな!」
だけど……まだ問題はあった。
「………安心するのはまだ早いわ。魔界と外郭大地の間にはディバイディングラインと言う力場があるの。そこを超えると……大陸の落下速度は急激に速くなる………。」
ティアが……。
そう告げる。
「ええええッ!!」「みゅううう!!!」
その言葉を聴いて、アニスとミュウが悲鳴に似た声を上げた。
「これ以上スピードが上がれば大陸に追いつけられなくなります!」
ノエルも……そう言う。
「んだと!!」
「後…どのくらいで到達するんだ!?そのディバイディングラインには!」
ガイがそう聞くと…。
「もう数十秒しかありません!!」
ノエルは、アルビオールを巧みに操りながら落下し行くセントビナー目掛けて進めた。
「ッ……アル……ッ。アル…………ッ!」
ティアも……冷静に状況を伝えてはいたが……。
言葉にすればするほど……。
不安で押しつぶされそうになっていた。
それは、他の皆も同様……。
「大丈夫です。」
そんな中…ジェイドがそう言う。
「え?」
「なんでだ?ジェイド。」
皆がジェイドのほうを見た。
「アルが言っていました。【自分が時間を稼ぐ】と、…そう言っていました。どのようなことをするのかはわかりませんが、考え無しに行動したとは考えにくいです。……今は彼を信じましょう。頼みますよ?ノエル。」
そう言うと……、
皆はうなずいた。
「ッ……。そう………よね?」
そして、ティアは自分自身にも言い聞かせる。
「アルは……アルだったらっ!」
拳を……握り締めた。
彼のことを……信じると!
そのときだ!!
“キィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!”
突然!大陸が光りだした。
「おわああっ!!!なっなんだ??」
ルークは思わず叫び、大陸の方を見た。
その光はセントビナーから出ているようだった。
目もくらむ……光となって セントビナーから解き放っていた。
「これは……この光は……いったい……。」
ジェイドも詳しくはわからないようだ。
だが……感じる!
「さ……様々な力の集合体…?第一……第二…………それに、第七も……まさか……全て…?」
ティアも…光を見ながら驚いていた。
だが……もう一つ感じるものがあった。
「この感じ……あれだ……!あのアクゼリュスで見た……あれと同じ…。」
ルークがそう呟いた。
あれとは恐らく……セフィロト……。
「………それに、魔界から外郭へ向かった時に感じたあれと同様なものです……。セフィロトを刺激して吹き荒れたあの力と……。」
それはタルタロスを外郭へと押し上げたときの光だ。
セフィロトを刺激し、帆で受けて上へと向かった……。
ジェイドは心底驚いていた。
これは恐らくは……創生暦時代に用いられたであろう力なのだ。
セフィロトを作るあの………技術……。
そして、そのようなことが出来る人物……。
それはもう1人しかいないっ!
「っ!いけません!あのような力!生身の人間がもつはずがありません!ノエル!急いでください!!」
ジェイドは咄嗟にそう叫んでいた。
恐らくは【アレ】を行っているのはアルだろう。
確信があった。
アルの言っていた【時間を稼ぐ】と言う言葉。
そして、今あの場にアルがいるという事実。
そして……。
「!!島の落下速度が緩まりました!今なら十分に追いつけます!!」
ノエルがそう叫ぶ。
そう……。
アルが言った事に嘘偽りは無い事実。
本当に……。
「時間を稼いでくれましたね……。」
ジェイドは驚き……そう呟いていた。
そして……
アルビオールは無事に落下する大陸に追いつく事ができていた。
そして、アルビオールが着陸すると……。
「アル!!マクガヴァンさん!!皆大丈夫ですか!!」
ルークがいの一番に飛行船から降りる!
「お…おおっ!アンタ達…。本当に…来てくれたのじゃな。」
マクガヴァンはそう言っていた。
それはアルの言葉を思い出しての事だ。
「ま…間に合った!良かった!話は後で!早く乗ってください!」
ルークが飛行船に指をさすと…
ジェイドが誘導する。
「!!そうじゃ!お主!あの少年を止めてくれ!もう……大丈夫のはずじゃ!これ以上は……本当に危ない!」
マクガヴァンはルークの肩を掴みそういった。
「!!アルッ!?」
ルークは直ぐ言っている事を理解する。
「アイツは!どこにいるんですか!!」
ルークがそう聞くと。
「あそこじゃ!」
マクガヴァンが場所を示すと…。
「はい!彼の事はお任せください!皆さんは急いで中へ!」
ジェイドがそう言うと、
頷き……そして、皆乗り込んでいった。
“ゴゴゴゴゴ…………。”
全ての音素が集う領域。
その中心に男が……アルがいた。
「アルッ!!!」
そこに…一番初めに駆けつけたのは。
「………よかった。オレ…………信じてた…よ?」
アルは…その姿を確認すると微笑む。
それは……
「もう……本当にいつもいつも…無茶ばっかりして……。」
ティアだった……。
吹き荒れる領域に近づく事はあまり容易ではないことだ。
ましてや、安定しながら出ていればなおさら…。
ティアは譜歌の力を纏ってこの場まで駆けつけたのだ。
「あははっ……。だって……皆を信じてるから……。どんな無茶をしても……助けてくれるってね…?」
アルは、そう言うと……。
徐々に光が消えていく……。
「ティア……聞いて……。」
ティアが肩を貸し…そして、アルとともに立ち上がったとき。
そう言う。
「え?」
「オレが、コレを…止めたら、落下速度が…通常に戻る……。」
そう言う……。
「アル!ティア!」
続いて、ルーク・そしてジェイドも駆けつける!
「落下速度が……急激に戻れば……その影響で……大陸が崩壊する……かもしれない。」
アルは…そう続けて……。
「だから……お願い…。オレより……他の皆を……早くっ…!」
アルが言わんとする事は直ぐにわかった。
「大丈夫です!皆はアルビオールに……飛行船に乗り込みました!後は貴方だけです!」
ジェイドがそう言うと……。
「!……そっか。……良かった……さすが、皆……だね?」
微笑み……。
そして、
力が……
消えた!
“ズズズズズズズズ……!!”
消えたと同時に大地が震えだした!
落下速度も速まり……大地の端から崩れていく……!
「ッ!!皆さん!急ぎますよ!!」
「ええ!」
「任せろ!!」
3人は、アルを抱え……
そして、落下するセントビナーから 無事に脱出することができたのだった。