#91 戦争勃発
アルビオールにて……。
「全く……あなたと言う人は……」
ジェイドがアルに苦言を言っていた……。
脱出は無事にすみ、ほっと一息を入れていた時だ。
「はは……オレはさ……。心配はして無かったよ。だって、皆を信じてたからね…?」
アルは、笑いながらそう言うが……。
「……信じてくれているのは嬉しいですが。だからと言って、無茶をしていいと言う事ではありませんよ?」
ジェイドは…そう返す。
「それに……心配ばかりかけるものでもありません。」
ジェイドがそういい…見たのはティアだ。
「あ……。」
アルはティアを見た。
ティアは、僅かだが震えていた。
なぜ震えているのか?自分自身にはそれが歓喜でなのか……不安でだったのか、今はわからない。
だが、コレだけはわかる。心底、心配してた。
そう言う表情だった。
「う……ん……。ごめん……。でも、ああするしか……無かったんだ。もう…人が死んでしまうのは見たくないから……。」
アルは…そう呟く。
心配かけたことも……そうだが、
でもそれ以上に……アルが思っていたのだろう。
その事はティアにだってわかっている事だ。
だけど……そう簡単に割り切れるものじゃない。
それほどまでに……大切な人……だから……。
「もう…………。」
ティアは……抱きしめた。
無事だった事を……確認する為に……。
「っ……。」
アルも、抱き返した。
「はは……。」
ルークは、そんな2人を笑顔で見つめ…。
そして、
他のみんなも、今回ばかりは茶化さず……見守っていた。
「ッ……。」
暫くして……アルは腕に違和感があることを覚えた。
「アル?」
「大丈夫ですの?」
「ん……。ああ、大丈夫……。ちょっと痺れてる感覚があるだけだよ。」
アルはそう言うと…。
ジェイドは腕を取った。
「………これは。」
ジェイドが…腕を見ると…直ぐに顔が険しくなる。
「地上に戻ったら直ぐに医者に見せましょう。それまで安静にしていてくださいね?【絶対に】。」
絶対…のところを強めに言う…。
「う……うん。もちろん……。」
アルは今回ばかりは大人しく従った。
そして……
アルビオール内では…悲しみの声も少なくない。
そう……自分達の街が崩落してゆくのを…間近で見ていることしか出来ないからだ。
「……あの街、これからどうなるの?」
アニスが、それを見ながらそう聞く。
「暫くは…魔界の液状化した大地に浮かんでいると思うけれど…長くはもたないわ。沈んでしまうでしょう。」
ティアが…そう言う。
「……あの力をもっと使えたら……防げるっていうのに…。」
アルは歯軋りをしていた。
人為的のセフィロトツリー。
それで、暫くは落下速度を抑えれたものの…完全に止める事はできなかった。
今の力では間違いなく無理だと言う事…何より、
「そんな無茶はもう許さないわ………。」
仲間が……ティアが、それを許すわけがなかった。
釘をさすようにそう言う。
犠牲になるも同然の力を使うことなど…・・・。
「……うん」
アルは、頷き……街を眺めていた。
「ワシ達の街が…なんと言う事だ……。」
命あるだけでも奇跡なのだ。
それはわかってはいるのだが……。
どうしても……。
「住む所がなくなるのは可哀想ですの……。」
ミュウにも……経験があることだ。
自分が……ライガの住処を奪ったのだから……。
だから……。
「な…何とかできねーのか?」
ルークも…みんなに聞くようにそう言うが…。
「何にも思いつかないよ……。ちょー無理……。」
「そんなことねーだろ?あっほら!パッセージリングってのを操作するとか!あれなら、アルに負担がかからねーだろ?」
ルークがそう言うが……。
「私達は…操作方法を知らないわ。」
首を左右に振る。
でもルークは!
「ヴァン師匠なら知ってるだろ!何とか問い詰めてさ!」
「おいおい!そりゃ無理だろうよ。お前の気持ちもわかるけどよ…。」
ガイがそう言うが…。
ルークはついに……。
「わかんねーよ!!!!!!」
爆発するようにそう言う。
「ルーク……。」
気持ちは……よくわかっているつもりだが……何もいえないようだ。
「アクゼリュスを……あそこを滅ぼしたのは俺だ!だからこそ!何とかしてーんだよ!!せめて…ここだけでも!!!「ルーク!!いい加減にしなさい!」ッ!!」
そんなルークに割って入るように怒鳴りつけるのはジェイドだった。
「ここにいる皆…同じ気持ちです!ここには、そのアクゼリュスが故郷だったアルもいるんですよ!」
ジェイドは…そう言う。
「あっ………。」
ルークは……言葉を失った。
「焦るだけでは……何も出来ませんよ?」
最後は…怒気を抑え……。
言い聞かせるようにそういっていた。
それを聞いたルークは……もう何もいえなかった。
そして、地上へと戻ると……。
「被害は……ここだけではすまないかもしれません。」
アルの腕を介抱していたイオンが口を開く。
「どういうこと……?」
アルがイオンに聞くと…、
「……同じセフィロトが支えているルグニカ平野の一帯にも……崩落の危険性があります。」
全てを支えていた木がなくなった以上……
間違いない……だろう。
「何か……手を考えなきゃですね…。」
……1人は思いつめた顔をしていた。
ルークだ。
「ルーク……さ……。あんまり思いつめないでね。」
アルは…声をかける。
「あッ……。」
ルークはアルのほうを向いた。
「気持ち……本当に良くわかるから。だから……だからこそ、オレもあんな無茶したんだから。戻ったら絶対に怒られるとも思ってた。……ほら、皆に心配されるってわかっててもね?気持ちは一緒だよ。だから、1人で抱えないで。」
アルがそう言う……。
「ッ……ああ。」
アルの行動……。
それを思い返せば一目瞭然だった。
ルークは……申し訳なさそうな表情を崩さなかったが……それでも出来る範囲で笑みを見せる。
「そうじゃよ……。」
そこに同意したのはマクガヴァンだ。
「それにの…ジェイドは滅多な事では人を叱ったりせん。それはお前さんを気に入ればこそ…だ。」
核心についた言葉だ。
「あ……そういえばそうかも……。」
アルも…そんな感じがすることがわかった。
失態をすれば……嫌味を言ったり冷たくあしらったりしていたが……。
今回はそうじゃなかった。
初めて……かもしれないのだ。
それを聞いていたジェイドは…。
「元帥!何を言い出すのですか……。」
少し慌てたようにそう言う。
「あっら〜〜?もしかして図星??」
アニスも長い付き合いだ。
そのあたりの機微はわかっていた。
「んんッ……。」
ジェイドは何も言わなかった。
だけどそれこそが証拠のようだ。
「ははは………。」
だからこそ、皆から笑みがこぼれていた。
だが、それは一時の事だ。
直ぐに戦慄することになる!
「なっ……なんだ!?あれ!!」
まず初めに気がついたのはルークだ。
アルビオールから下を見ると…。
様々な爆音と叫び。
それが聞こえてきたのだ。
そう……まさにアルビオールの真下で。
無数の兵士……そして戦艦。
そして…………
数多の鬨。
爆撃……。
そう……。
両国の戦争だった。
「戦争が……どうして…どうして戦いが始まっているのです!」
ナタリアは驚きながら見つめていた。
「不味いですね……このままでは下手をすると両軍が全滅しますよ。」
ジェイドも…深刻そうに言う。
「そうです… この下を支えている木はもうないのですから。」
イオンも同じように……。
「くっそ…… このままじゃ……。」
アルも……
「なんで…このタイミングで…大地が崩落しかかっているのに……。」
そう言うと……。
「ッ!これが…兄さんの狙いだったんだわ。」
ティアが…そう言う。
「えっ…?どういうことだ?」
ルークがそう聞く。
「兄は外郭の人間を消滅させようとしていたわ。予言でこの戦いを知っていた兄なら……。」
ティアはそう言う……。
「この下のツリーをなくして、いっきに両軍を崩落させるっていうのか!」
「ッ……狙いがこの世界そのものだというのなら……脅威なのは両国の軍隊……。それが知られるまえに図った?」
戦力を削ぎ…そして、大地を崩落させる。
「確かに……それは効率のいい殺し方ですね。」
ジェイドも軍人だ。
作戦を考える上では……。
この上の無いものだ。
悪魔的……といっても過言ではない。
「冗談じゃねえ!!どんな理由があるのか知らねえが!師匠がやってることは無茶苦茶だ!!」
ルークはそう叫ぶ。
確かに……叫ばずにはいられないだろう。
その話を聞いていたナタリアは。
「私が行って停戦させます。位置的にキムラスカは本陣をカイツールに構えているはずですわ。そこにいる司令官に、直接停戦を命じます。」
ナタリアが凛と答えた。
それが……唯一の方法……だろう。
「……わかりました。ここは二手に分かれましょう。私はピオニー陛下に停戦を提案します。受け入れられるかは……疑問ですがね。」
そう言うと……。
まずはセントビナーの住人を安全な場所へ送り……。
カイツールには ナタリア・ルーク・ガイ・ティア・アル。
グランコクマには ジェイド・アニス・イオン
この二手に分かれた。
勿論……アルはまずは、病院へ……。
そこでの診察の結果は……皆には決して言わなかった。
医者にも驚愕された程の……。
特に腕周りの血中音素が極端にズタズタで……。
本来は絶対安静の身。
だが、アルは首を横に振った。
だって………。
今は休んでいられないから……。