エレクトリカル4 次郎!!
「おう、爺さん気を付けてな。」
「ヒック、送ってくれてありがとうなー。」
お〜う、船酔いで体かユラユラ揺れるわい。
いや、酒で酔っ払っとるだけかヒャヒャヒャ。
今回ワシが捕獲で訪れたのはバロン諸島。
危険区に指定されているバロン諸島じゃが、素人に毛の生えた程度の美食屋では返り討ちに合う事も多い。しかし、一方で玄人の美食屋は依頼でもされん限りここにはこん。
そりゃそうじゃ。
しかし、数年に一度だけ、彼奴らが群れをなしてこの島を目指す!!
その目標は南海の輝石、ラフマンゴー!!
あの果実は、一定周期毎に実がなるんじゃが、あれ自体とてもうまい。さらに、あの酒で作られた酒は絶品じゃ!!
コクがあり、あまり悪酔いしないんじゃよ!!
人工のラフマンゴーの捕獲レベルは1以下じゃが、天然ものだと1ケタでは足りんな。
・・・そういえば、あの旨い深海の珍味が来るのもそろそろじゃの。
今から辛口の熱燗を用意しとかなければのウヒヒヒヒヒ!!
さぁ、島に本格的に上陸すると、ふぅむ、どうやら先乗りした者がいるようじゃのう。足場が踏み固まっておる。それに、妙に密林が殺気だっておるわい。まぁ、そんな事どうでもいい、ワシも捕獲に取り掛かるとするかの。ここらの捕獲レベル程度ならグルメ界から見れば霞んで見えるほどじゃから別に気にしなくてもええわい。
ワシも足場を辿ってゆくと、そこには・・・おるわおるわ屍やら何やら。見事に返り討ちにされねおるわい。
ラフマンゴーを嗅ぎつけて来たわいいが、返り討ちにされた素人どもじゃろうなぁ。
〈ギャーギャー!!〉
「・・・ムッ。」
オカシイ。
怪鳥どもが大慌てでどこかに逃げ出しおった。
ここらへんなら、ガララワニか、沼ヘビ程度、捕獲レベルなら10と言ったところじゃが、今日はどうにも森がさわぎよる。
生態系を破壊しかねん程のガララワニでも出てきたか・・・?
いや、一龍の兄ィからはそんな話は聞いとらんしの・・・。
〈ドォォォォン!!〉
激しい衝突音が轟き、森の奥からガララワニが飛び出してきおった。
まぁ、すぐにノッキングしてやったが、これでハッキリした。
ガララワニでさえ逃げ出すようなあの生物がこの島に上陸しとる。
・・・タイミング悪いのー。まぁ、問題はないが、すぐにノッキングしてやればいいことじゃい。
いたわい、いたわい、やはり海を渡ってきていたか“デビルクロコダイル”。ありゃあ、素人どころか並の美食屋でも危ない敵じゃから当然か・・・む?
ワシの視界にデビルクロコダイルとは別の人影が写った。
あれは少年じゃな。美食屋か?
髪はボサボサ、服はボロボロ、まるで一ヶ月近く遭難していたような姿じゃな?
んあ!?あのワニが今まさに少年ごとかぶりつこうとしているのはラフマンゴーの木ではないか!?いかん、貴重な野生のラフマンゴーがあのワニに潰されてしまう!!何よりワシの酒が!!
老いた体に鞭打ち、自らの足にノッキングガンを打ち込み、“速度”を強化。デビルクロコダイルに高速で接近し、ノッキングポイントに針を打ち込んだ。
「ヒョヒョヒョ。危なかったの〜少年。怪我はないかね?」
結果的に少年を救う形になってしまったか。まぁ問題なかろうて。ワシはラフマンゴーを捕獲できるし、少年は命が助かった。誰の目から見ても万々歳じゃわい。
「・・・うぁ。」
おぅ、少年の顔が歓喜に包まれて行く。
今更己の命がある事を実感し始めたのか?
そう思った時だった。
「俺を弟子にしてください!!」
・・・何ともまぁ、予想を斜めゆく返答が返ってきた。
やったー!!やったー!!次郎さんだよ!!生次郎さんさ!!
一方の次郎さんだが、しばらく静止した後、「ま、まぁ、面を上げなさい。」と言って俺を立たせてくれた。
「後で決める」とかいった後、俺がよく食べていた木の果実をもぎ取り、持ってきたバックにいれ始めた。
話を聞くと、この果実はラフマンゴーといい、実をワインにするとかなり絶品らしい。
漫画であれだけ飲んだくれてたからよほど酒が好きなのかとと思っていたが、次郎さんお酒大好きだな!!
まぁいい、これは点数を稼ぐチャンスだと思い、探索中に見つけた果実の群生地に連れていくと、興奮して飛び上がっていた。
でも次郎さん、
「これでしばらく飲んだくれることができるわい!!」
というのはいかがなものでしょうか。
一龍さん多分キレますよ。
でも、次郎さんはそう言いつつ、実っている実のほんの少しをとっただけで、全部は取らなかった。
「そんな独り占めするような真似はせんよ。」
さすが師匠。そこにシビれる、憧れるぅ!!
その後、ノッキングされていたデビルクロコダイルを調理して食べました。
ワニはゲテモノらしいけど、市販の牛肉や豚肉とは一味違った芳醇な肉の旨味が広がり、一言うまい!!だった。
一晩そこで夜を明かした後、迎えの船に乗っけて行ってもらった。
フラフラと酔いどれる次郎さんを介抱しつつ、ふと後ろを振り返ると、今まで生活していたバロン諸島がドンドン小さくなってゆく。
あの島で生きることの素晴らしさ、辛さ食べることの有難さを知ることができた。
ありがとう。
何故か俺の口からはそんな言葉がこぼれ落ちてた。
最後に・・・
もし、神様がいて、今度会う事になったらこう言ってやりたいと思います。
おんどりゃあ、よくもやりやがったなチクショウメー!!!!!
後、俺も船酔いしました。
酔っ払い2人に船長は呆れ顔でしたがいい思い出です。