小説『鸚鵡貝は裏切らない【完結】』
作者:魚庵(ととあん)(・胡・晴・日・和・)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>




『じゃじゃーん!!

 七恵ちゃん、とうとう見つけましたね!!


 そして!


 七恵ちゃんの真実の本音は

 全て聞かせてもらいました♪


 ……そっかぁ、そんなに大変で

 辛いコトがあったんだ?

 大丈夫だよ!!


 わたしがずっと一緒にいるよ。

 わたしね、痛いのも辛いのも嫌いだけど、

 いくらでも我慢できるから、

 すぐに『我慢』じゃなくなるの。

 辛いコトは、わたしが全部引き受けてあげる。


 だから、ずっと仲良くしていましょう?



 うんうん、そっかぁ、そんなに幸せで、

 楽しいコトがあったんだ?


 もう〜……話して欲しかったなぁー

 嘘にしちゃう前に!


 でも、七恵ちゃんの喜びが全部伝わった。

 ごめんね。

 せっかく内緒にしてた良いことなのに。


 わたし、七恵ちゃんとは

 嬉しい事や楽しい事を、一緒に覚えられたらいいなって思ってるの。


 わたしね、今、毎日がとっても楽しいの。

 こんなに楽しくて嬉しい毎日って

 今まで無かったのよ!


 ずっとずっと、一緒に居てね。




 でもコレは、オウム貝が吐き出した嘘かもしれない。


 ホントのわたしは、七恵ちゃんの中に居ます。



 大好きな大好きな七恵ちゃん……


 お誕生おめでとう。




PS

 見つけたらすぐ教えてね!



海乃  』





 10年の時を経て届いた、それは海乃からのラブレターだった。

「……のわけ、あるわけなかろが!」

 ボロボロに朽ちて折り目のついた紙を握りしめ、咽び泣く私に、綾はバッサリと悪態の刃をふりおろす。酷

い!酷すぎるよぉぉぉ!

「何でそんなこと言うのよ!だってホラ、全部聞いたって書いてあるのよ!?私、夜な夜なこのオウム貝に、海乃

への熱い想いを訴え続けてるのよ!?それでいて大好きって言ってくれてるのよ!?」

「コレは、うーちゃんがいつ書いたものだ?」

「10年前」

「お前はいつからラブラブ独白を続けている?」

「10年前」

「考えなくとも、聞かれてないってわかるだろ?」

「わあってるわよぉ!綾のばか!!」

 後ろからギュッと抱きしめられる。

「……なんでこんなにうーちゃんが好きかねえ?」

「綾が居てくれたからじゃん。何言ってんの」

「カミングアウトもうまくいって、よかったな」

「それは、綾のお陰。ありがとう」

 抱きしめついでにギュッと人の胸を掴んでる両手を剥がして、代わりにギュッと握りしめた。油断もスキもあ

ったもんじゃない。

「ミサオがね……」

 そうだ!ミサオちゃん!それに横浜のオカノ……

「何かわかった?」

「居ないんだよ、ミサオ。医院はやってるが、店は任せきりで出ていないんだ」

 あり得ない!店が本業だって言ってたのに。

「連絡するようには言ってあるんだがな……」

「ねえ!じゃあブタ……じゃなくて晴香は?」

「……今まで居所言わなかったんだぞ?連絡先なんぞ知るか!七恵だってちかちゃんはどうなってるんだ

よ?」

「私の会社の名刺は渡してるんだけどね……私は知らないんだ」

 八方塞がりの私たちは苦笑いしか出来なかった。

「……ホントに土曜サスペンスになったな」

「やっぱり船越さんはのぶかあ……美味しいところはいつもあのサルか……」

「俺が行って来ようか?のぶんとこ」

「……なんて?」

「七恵の間男です!って」

「やめてよー!そんな手の内明かしてたまるか!」

「……うーちゃんは『見つけたらすぐに教えてね!』って言ってるぞ」

「…………ここで海乃を使うなんて、キタナイ!」

 でも、もうのぶにも嘘をついてもいられないよね……のぶは惚れられてると思ってるもの……すまん。




-105-
Copyright ©魚庵(ととあん) All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える