小説『鸚鵡貝は裏切らない【完結】』
作者:魚庵(ととあん)(・胡・晴・日・和・)

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「……な!?男まで連れ込むたぁ、いい根性してるな!?誰だよ、てめえ!」

 のぶは驚きを隠せない……って、当たり前だ!

 いきなり綾に掴みかかる。

「久しぶりだねえ……MG……奇跡のお猿さんよォ!!」

 何だって綾まで挑発すんだよー!!

「やめてよ、綾!」

「リョウ?……そうか、てめえ『ナイトの白騎士』か……」

「懐かしい名前だね。そんな名前忘れてたな」

 え!?ナイトって、綾の六本木のお店だよね?『夜騎士団[Night-Knights]』……って言うか『白騎士』って綾

のあだ名!?……『黒騎士』とかもいるのかしら?いや、それより今睨み合ってるのは、かつての不良同士の喧嘩

になってる!?再熱!?待ってよ!今そういうタイマン……いや対面じゃないはず……

「……あん時は、人が遊んでた女、次々にかっさらいやがって……」

「人聞き悪いこと言うなよ。鬼瓦に売られる前に、営業してただけじゃないか」

「枕営業だろが!腐れホストが!!それで次は七恵かよ!?性懲りもなく……」

「人の女に次々手を付けてんのは、お前の方じゃないか。だいたい、女の扱い教えてやったのは俺だろ?」

「はぁ?白騎士が何寝ぼけた事抜かしてやがんだ!!」

「……何だ、俺が誰かわかってないのか?ふざけた猿が!!」

 顔を突き合わせて言い合ってた二人だったが、綾はのぶの顎を掬い上げると…………キスした!がっぷり濃厚

なヤツを!!

 のぶは目を剥いて抵抗するけど、綾は頭を押さえて離さない。

 ……ちょ、ちょ、ちょっとォ……なななな何だろな、見てるこっちが恥ずかしいんだけど、妙にドキドキしち

ゃって目が離せないよ……

 だってコレ、端から見たら、美形な男同士のキスなんだけど……え〜やだぁ、きゃあああ……萌えるわ!たぎ

るわ!もう何て言うのかしら……綺麗過ぎて鼻血噴きそう!!

 ああああ!もしかしてコレが巷のオタクな一部女子に人気の『やおい』ってヤツ!?ヤマなし、オチなし、イミ

なし、って言うらしいけど……そうね!そんなモン要らないわね!!コレだけでときめくモン!テンション上がる

モン!……こ、これからどうなっちゃうのかな……押し倒しちゃったりするかしら?……ゲイカップルなんて

散々2丁目で見てきたけど……美形ホモは見応えあるわぁ……あ。綾は女だった。……ていうか、綾っていやら

しいキスするのね……私ともあんなのやってるのかな……ていうか、イイんだけど!コレっっ!!

 などとドキドキと胸の鼓動を高鳴らせ、凝視してたら、区切りがついたのか苦しくなったのか、綾は「チュ

ッ」なんて可愛い音を最後に立てて、のぶの唇を解放した。

 のぶの方はバッタリその場に膝をつき、両手をつき「海乃と最後にキスした唇が……」と呟いて……な、なに

ーっ!?

「お!うーちゃんと間接キスだ」と、綾は唇をペロリと舐めた。ずるいずるいずるいずるい!!嗚呼そうだった!

間接キスじゃん!!無理矢理にでものぶにキスしとくんだった!

「下手くそなキスしやがって……俺の指導が悪いみたいじゃないか!んー?と・が・わ君?」

 ギロリと涙目で綾を睨んだのぶの顔がみるみる固まる。

「……まさか、あ、アヤ先輩ぃ?」

「ご名答。やっと思い出したか!!」

 青ざめたのぶの顔が赤く染まる。……なんたって、初めての女だもんね……って、端から見ればただのゲ

イ。逆に面白い!

「だっ……、先輩、男って……、白騎士で……オナベ?いやそれで七恵の……えええ!?」

 可哀想に……のぶはすっかりパニック状態だ。無理もないか……自分の筆下ろしを手伝ってくれた先輩が、実

は自分と敵対するホストでしかもオナベで、幼馴染みの彼女の間男で……なんて、一度に飲み込めないよ

ね……

「だからー、お前が12ン時、性の手ほどきをしてやったのは、俺様、オナベの白騎士で、七恵とは14ン時からセ

フレしてんだけどね……もうひとつ、教えてやるよ。お前の大好きな橘海乃とは幼馴染みだ!」

 にんまりと笑う綾に、のぶはまさに失神寸前だ。


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