小説『鸚鵡貝は裏切らない【完結】』
作者:魚庵(ととあん)(・胡・晴・日・和・)

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 次の日、のぶは鬼瓦の一件で呼び出された。心配した海乃と私は、職員室の脇でのぶが出てくるのを待って

いた。

 ドアが開いて、ペコリと頭を下げてのぶが出てきた。私たちが近寄ると、ニカッと笑って「ノープロブレ

ム!」とピースした。

「アイツ、お前等の事何も言わなかったみたいだ。安心しな!」

 私はとりあえずホッと胸をなでおろしたが……

「誰もそんな心配してないよ……お咎めなくて良かった……のぶが」

 ……なんて言う。自分よりのぶの心配ですか。キュンと来るじゃん!……のぶが。

 のぶは片手で海乃を抱き寄せて、ふわふわ頭に顎を乗せた。

「先公には訊かれたよ、橘の髪はどうしたんだって……但馬の見立てですって言っといた」

 私は海乃からのぶを引き剥がして小声で言った。

「何やってんのよ!友達宣言はどうしたのよ!?」

「お前がいつも橘にやってることだろがよ!真似しただけだ」

 何ですと!?私、そんなこんなヤラシイ事、海乃にしてるの!?

 思い返す。そんな事は……そんな事は……してる……ヤバい!しまくってる!

 友達として……これはアリでいいのか?

 女の子同士で手を繋いでも抱き合っても、それは「仲良し」で通用すると思って油断してたけど……同じ事

を男にされると、全然友達に見えない……でもそれって、下心が見えるからで……そうしたら、そうした

ら……



「私の気持ちはバレバレなのっ!?」

 古くさいほどきらびやかな見たこともない丸いベッドに座り込んで、しかもぐるぐる回りながら、かれこれ

30分とかそのくらい、がたがたと訴え続けていた。

「……で。うーちゃんは何て言ってた?」

 同じく回る丸ベッドの上では、上着とネクタイを脱ぎ捨てたスーツ姿で胡座をかいた綾さんが淡々と、私の

話を聞きながら靴下を脱がしていた。

「笑いながら『戸川くん、七恵みたい〜』って」

「何!?その純愛ごっこは!?笑えるな、相変わらずうーちゃんは……はい、反対の足出して」

 私は既にブラにパンツにキャミソールというあられもない姿で、生まれて初めてのラブホテルにいた。

 処女の分際でセフレなるオトナな関係を約束してしまったハザマリョウというホストに、私は電話して……

会うなり「待ってたよー」とラブホに連れ込まれた。……こんなキンキラした部屋だとは驚いた。

 ……何をどうしていいかわからないけど、何かムード良くされちゃうのは恥ずかしくて、物珍しいベッドサ

イドのパネルをいじったら、ベッドが回りだしたのでそのまま話を始めたわけだが……

「気持ちは見つかった?友達の女の子が好きだって気持ちの方ね」

 初っぱなから直球で来られて、私は泣き出してしまった。

 泣きながら話してる途中で「はい、バンザーイ」とか「腰あげて」とか言われるままに、気付けはTシャツ

とGンズが脱がされていた。

 オトナって、そういう事に及ぶ為にはどんな機転も利くんだな。

 私ももういちいち怖がってる気もなくなってたし、よし、ヤってやろうと思っていた。

 のぶが言ってた、好きな娘には出来ないあんなことやこんなことを、覚えたい好奇心に気持ちを切り替え

た。

 ……が、気に入らないのは、綾さんのその呼び方だ!

 私は靴下を脱がせるのに差し出す足を、回し蹴りで送り込んだが、片手で止められてしまった……カッコ悪

い……

「行儀悪いなあ七恵は……」

「……うーちゃんて何よ!!綾さん、海乃を知ってるの?」

 掴まれた足先から靴下を抜き取ると、その足を引っ張られて身体丸ごと仰向けに倒された。両肩を上から押

さえ込んで、綾さんは舌を出す。

「知ってるよ。うーちゃんの身体は隅々まで知ってる」

 嘘ーッ!?

 許せない嫉妬心と一緒に……ちょっとだけ綾さんに抱かれてる海乃を想像してしまった。……ヤバい……萌

える……

 ……て、それどころじゃない!

 綾さんの舌が口ん中に忍びこんできた……!!


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