のぶが第二ボタンをくれた。
「……付き合ってくれるの?」
……どうしよう。まさか、私に転ぶとは……
「わけねえだろ。下級生が群がって盗られそうだったから、予め取っておく」
よ、良かった〜……
「何だ。残念……海乃に渡す?」
「いいよ、それは別のモンやったし、俺は橘からコレもらったから」
ポケットから出した左手の小指に、制服の赤いリボンが結んであった。
「卒業しても友達って、指切りしようとしたら……くれた」
のぶは顔全部で笑ってた。小指のリボンは、運命の赤い糸なんじゃないの?海乃は彼女なりに、大胆にまっ
しぐらにのぶを想ってるんだな。
リボンのない制服の海乃を捕まえて、のぶに何をもらったのか訊いた。
「制服の第一ボタン。一番の友達だからって」
嬉しそうにコロコロ笑う海乃に、つまり私は二番目の友達か……と思ったけど、たぶん二個とも引きちぎっ
た二番目のボタンが、海乃の手にある方なんだろうね。
私たちは卒業したのかな。何から?
たぶんこの先、少しずつ「友達」の枷を緩めていくだろう。
少なくとも、私はね。
「というわけで、卒業祝い頂戴」
早速、親愛なるセフレ殿に連絡を入れる。
折角だから、雑誌に載っちゃうくらい綺麗なラブホテルに連れていってもらうことにする。
綾さんはご機嫌な様子で、ラメラメのスーツで来た。ヤル気満々だ。
「何?急にオトナに目覚めた?嬉しいな♪」
「うん。私、教えて頂きたい事がありまして……」
ラブホと言うには、清楚な部屋のダブルベッドに、私の方から綾さんを押し倒してキスした。
「脱いでよ」
長い睫毛の瞳がパチクリと見開かれた。
「何の冗談だよ!?七恵はレズビアンになりたいわけ?」
「何を今更?私が好きなのは海乃だよ。言われなくたってレズじゃん」
「……そっち側に行く気なんだ?」
「そうだよ。綾さんがそっちじゃないのはわかってるけど……私とは本気じゃないでしょ?」
綾さんはニヤリと笑って、私の腕を外して起き上がる。
「とうとう、うーちゃんに手ぇ出したくなったか……やれやれ、とんだ喰わせもんを育てたかな」
ネクタイを外してズボンを脱いで「プレスして」と放り投げた。私は何となく折り目に沿って畳んだ。
「だったら『レズ』なんて言うな。あいつらはそんな風に自分達を呼ばない。……教えてやるから」
Yシャツを脱いだ綾さんの身体は、硬そうな黒いメッシュのシャツに包まれていた。
「何着てるの?」
「ナベシャツ。これで締め上げて胸を潰す。俺たちのユニフォームだ」
「……脱いでいいの?」
「七恵が脱げって言っただろ!この下にはお前と同じ身体がある。だから脱がないんだ」
バリバリと前を合わせたマジックテープを剥がして、床に落とした。
綾さんの肩や背中……張りつめた筋肉質のしなやかな肢体が露になる。
胸が高鳴る……誰かの身体にときめくなんて初めてだ。
ちらりと振り向いた胸元には、形の良い、やはり筋肉で盛り上がったような膨らみが並んでいた。
面白そうに笑みを浮かべ、指を引いて手招きをする。
「来いよ。抱かせてやる」
私は踏み出した。
……とか、ヤっときながら……出来るもんじゃないのね……
隣でピヨピヨと寝息を立ててる海乃を、いつものように抱きしめた。
あ。海乃ったら、胸でかくなった……触りたいのになぁ……どうして手を出せないんだろう……大事で大事
で壊せない。あんなに傷つけてやりたいとも思ったのに……
皆な、身体の繋がりで安心を得たりするのに……
どうして私は女なんだ……
……何で、セフレまでいて、本命には純愛してんだ!バカが!