小説『鸚鵡貝は裏切らない【完結】』
作者:魚庵(ととあん)(・胡・晴・日・和・)

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「知ってるけど……何でのぶが知ってるのよ……」

 ちょっとドキドキしながら問い返す。

「だってあいつの普段着ハダカみたいなんだもん。ちったぁ俺の身にもなれだよな!でさ、酒飲むとピンクに

なんの。エロいしょ?そんな女居ないって!」

 そういう事か、ビックリした。

 でも、私が思い出して別な気持ちでドキドキするから止めて!

「でね。あいつ、目ん玉、紫色してんだ……吸い込まれちまう」

 今度は本気でビックリした。私でさえ、気付かなかったのに……よく見てたんだね。

「初めはさぁ小っこくて可愛かったのに、急に女にやりやがって……あのクソ女!……勝手にどっか行くなっ

つの!」

 私は、今にもテーブルを枕に寝ちゃいそうなのぶの肩を叩きながら顔を覗き込んだ。

「好きだったんだね」

「違う!こんなにこんなに好きになったら居なくなったから……どうしようもない」

「……そんな風にクダ巻いちゃうから、他の女が慰めたくなっちゃうんでしょう?」

「それは違うって」

 のぶは正気な目をして私を見据える。

「お前だから言うんじゃん」

 ……ドキッとした。やっぱりこいつ、顔だけはイイ!

「やっぱ七恵と居っと落ち着く。お前が居れば、その隣にはあいつが居るみたいな気になる」

 ニコッと子供みたいに笑うのぶに、私は「イケる!」と思ってしまった。

 大丈夫。私とのぶは同じ気持ちを同じ割合で持っている。

 だからのぶを捕まえる。

「じゃあ、私が傍に居てあげるよ。海乃と一緒に」

 のぶの頭に頭を乗せて凭れた。のぶは小さく「うん」と言って目を閉じた。

 ばかっ!寝るな!!誰がアンタを連れて帰るんだよ!?




「ほんっとーにいいんだな!?」

「おー!どっからでも来いっ!」

 私はちょっとセクシーを気取ったベビードールを身につけて、ベッドに仰向けに寝た!

 今日のエッチは一味違うよ!なんたってロストヴァージンですから!

「あ、待ってて。お湯入れるから」

「お湯?」

「冷たいとモノっぽくて興醒めすんだよ……よし!」

 と、新しい綾の分身クンを手に持って示した。……ンだけど、それってシリコン製でバッチリ肌色で……ソ

ノモノじゃないか!!

 ……血の気が引いた。

「いやーっ!!やっぱりいやーっ!!そんなのいやーっ!!」

 起き上がってベッドの端まで後退った。だってコレは想定外!

「ばか!あほ!今更何言ってんだよ!?」

「だって嫌だよ!そんなキモチワルイもの!!私が可哀想じゃん!」

 綾はディルドを放り投げた。

「じゃ、止めよう。そんなモンなくても俺らは愛し合える心を持ってるじゃないか」

「……俺らはね。……わかった。言い出したのは私だわ」

 諦めて腹をくくった。綾の頬を両手で包んだ。

「だから……優しくしてね」

「生憎、コイツには神経通ってないんだけどね、善処します」

 深いキスをしたまま、ベッドに身を沈めた。



 甘い波に乗せられて、汗ばむ背中を反らせたその刹那……

「いっ……たーいっ!!」

 思わず綾を蹴飛ばした。

 何!?コレ!壊れる!!挿入って、貫通って、性行為って、何よ!?

「力抜いて、我慢しろ。そういうモンだから」

「無理!」

 ズリズリと上の方へと身体を逃がそうとするのを、ガッチリ肩を捕まれて引き戻される。

「綾、綾……やっぱり無理」

「何がだよ」

「針穴に毛糸は通らないわ!」

「大丈夫。通るから」

「だから無理ーッ!……ねぇねぇここで止めといたらどうなる?」

「のぶと寝た時同じこと言って、それでも止めてくんなかったら出血して、初めてだったのか!じゃ責任とる

しかないな、ハニー、これからはお前にゾッコンになってやる!って展開を迎えてめでたしめでたしだが……

どうする?」

「……死んでも嫌!」

「じゃ今のうちに俺で死んどけ!」

「ぎゃーっ!!」



 ……女は凄い!

 こんな凄まじい芸当こなしながら、愛を貫くのか!!


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