「いや、だから、もう終わったもん。もういいよ」
「よくない!気持ち良くなんなくてどこが終りだ!」
「気持ちいいなんて気分になれないよ!もう疲れた」
プイッと顔を背けたのに、頬を掴んで面と向かされる。
「阿呆!俺だって疲れてるわ!だいたい『ぎゃー』とか言われたままで終われるか!!」
「だって!メリッて、ブチッて……絶対どっか破れたよ!切れたよ!絶対血ぃ出てる!!」
あの痛さがまざまざと思い出される。
「そッれッがッ目的だろ!?」
……ええ、はい、確かに……
「もう平気でしょ。て言うか、俺が治まんないから」
「何言ってんの?神経通ってないくせに……ただ遊びたいんでしょお」
「それがさぁ……不思議なんだけどさぁ」
綾が自分の手を見ながら呟いた。
「通ったんだよね……神経。七恵ン中、全部わかったよ」
「嘘……今も、わかる?」
「うん。わかる。だからシよう!」
私は苦笑いしながら身を委ねた。
いだだだだだだだだ!
……はあっ!
つ……疲れる!!女は凄いなあ……もう……
……いつか、海乃も……嫌だ!可哀想すぎる!こんな痛々しい目に遇わせたくない!
「……良かった。俺は新しい快感を覚えたわ……七恵、しばらくコレでヤろう!」
恍惚として綾が呼びかける。
「やだ。いつものがいい」
「だって……慣れとかなきゃマズいだろ?のぶが相手だぞ!?」
「いい!どうにかなるよ」
あんまり考えたくない。私には綾の指と唇があればいい。
「のぶのは硬いぞー!形もいいし、スタミナあるし、お前が持ってかれるぞ」
な、何それ?
「ちょっ……!ちょっと待ってよ!!何で綾がそんなこと言えちゃうのよ?ソレも伝説!?」
「え?のぶのナニの事?……あれ?言わなかったっけ?のぶの初体験、つまり筆下ろしたの、俺だよ」
「……な!!う、嘘ぉ!?のぶの初体験て……ゲイなの!?」
「いや、女装してホステスのバイトしてたから……のぶの相手は女でヤったよ。まあ、以前から知ってたっつ
ーか……俺、お前らの中学の先輩だからさ。バスケ部OB。女子部のね」
……嘘ぉ……じゃあ……
「まあ、きょうだいだよね、七恵とのぶは。もうすぐ俺と七恵もきょうだいだね……目標としては、うーちゃ
んもだね」
……嘘でしょう?最低だわ……私のロストヴァージン……
「七恵。ありがとうね。大真面目に愛してるよ」
甘いキスをくれるけど……
……最悪だわ。
海乃ぉ……こんな私を軽蔑しないでね……
その後、のぶとは度々飲みに行くようになった。
私が誘いに行くと、にこやかに従う。
でも、会えば飲んで飲んで、ずぶずぶに酔って「海乃、海乃」とクダを巻く。
それが言いたくて、私と飲むのかと、呆れもするが……見ているのが辛くなる程、可哀想だ。
海乃が見たら、放ってはおけないで、やっぱりずっと傍に居てやるだろう。……見せてやりたいよ。
「なあ七恵ぇ、海乃さぁ、俺のこと、好きって言ってた。ホントかなあ?」
また始まったよ!このループが長いのよ。
「うん。海乃はのぶが大好きよ、ずっと好きだったよ」
「……それ、いつまでだよ?」
え……?そんな事初めて言うじゃん。
「お前、いつもそう答えんだよ!!好きだったよって、既に過去形なんだよ!じゃ今は違うのかよ!?」
「今だって好きだよ!決まってるじゃない!のぶは海乃が、いつからどれだけのぶの事好きだったかわかって
ないよ!」
酔っ払いの言うことだから、どうでもいいことなんだけど、それでものぶは私の言葉を聞き逃してはいなか
ったんだ……
「のぶは海乃が好き?愛してる?ずっとずっと好きで居られるの?」
私にはそっちの方が、大事なんだけど……
「うん。七恵がいるから。俺は海乃を裏切らない」
酔っ払って、赤い顔して、潤んだ目をして、それでも強く頷くのぶを信じたかった。
私だって、このまんまで居たいのが本音だから。