小説『鸚鵡貝は裏切らない【完結】』
作者:魚庵(ととあん)(・胡・晴・日・和・)

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「いや、だから、もう終わったもん。もういいよ」

「よくない!気持ち良くなんなくてどこが終りだ!」

「気持ちいいなんて気分になれないよ!もう疲れた」

 プイッと顔を背けたのに、頬を掴んで面と向かされる。

「阿呆!俺だって疲れてるわ!だいたい『ぎゃー』とか言われたままで終われるか!!」

「だって!メリッて、ブチッて……絶対どっか破れたよ!切れたよ!絶対血ぃ出てる!!」

 あの痛さがまざまざと思い出される。

「そッれッがッ目的だろ!?」

 ……ええ、はい、確かに……

「もう平気でしょ。て言うか、俺が治まんないから」

「何言ってんの?神経通ってないくせに……ただ遊びたいんでしょお」

「それがさぁ……不思議なんだけどさぁ」

 綾が自分の手を見ながら呟いた。

「通ったんだよね……神経。七恵ン中、全部わかったよ」

「嘘……今も、わかる?」

「うん。わかる。だからシよう!」

 私は苦笑いしながら身を委ねた。



 いだだだだだだだだ!




 ……はあっ!

 つ……疲れる!!女は凄いなあ……もう……

 ……いつか、海乃も……嫌だ!可哀想すぎる!こんな痛々しい目に遇わせたくない!

「……良かった。俺は新しい快感を覚えたわ……七恵、しばらくコレでヤろう!」

 恍惚として綾が呼びかける。

「やだ。いつものがいい」

「だって……慣れとかなきゃマズいだろ?のぶが相手だぞ!?」

「いい!どうにかなるよ」

 あんまり考えたくない。私には綾の指と唇があればいい。

「のぶのは硬いぞー!形もいいし、スタミナあるし、お前が持ってかれるぞ」

 な、何それ?

「ちょっ……!ちょっと待ってよ!!何で綾がそんなこと言えちゃうのよ?ソレも伝説!?」

「え?のぶのナニの事?……あれ?言わなかったっけ?のぶの初体験、つまり筆下ろしたの、俺だよ」

「……な!!う、嘘ぉ!?のぶの初体験て……ゲイなの!?」

「いや、女装してホステスのバイトしてたから……のぶの相手は女でヤったよ。まあ、以前から知ってたっつ

ーか……俺、お前らの中学の先輩だからさ。バスケ部OB。女子部のね」

 ……嘘ぉ……じゃあ……

「まあ、きょうだいだよね、七恵とのぶは。もうすぐ俺と七恵もきょうだいだね……目標としては、うーちゃ

んもだね」

 ……嘘でしょう?最低だわ……私のロストヴァージン……

「七恵。ありがとうね。大真面目に愛してるよ」

 甘いキスをくれるけど……

 ……最悪だわ。



 海乃ぉ……こんな私を軽蔑しないでね……




 その後、のぶとは度々飲みに行くようになった。

 私が誘いに行くと、にこやかに従う。

 でも、会えば飲んで飲んで、ずぶずぶに酔って「海乃、海乃」とクダを巻く。

 それが言いたくて、私と飲むのかと、呆れもするが……見ているのが辛くなる程、可哀想だ。

 海乃が見たら、放ってはおけないで、やっぱりずっと傍に居てやるだろう。……見せてやりたいよ。

「なあ七恵ぇ、海乃さぁ、俺のこと、好きって言ってた。ホントかなあ?」

 また始まったよ!このループが長いのよ。

「うん。海乃はのぶが大好きよ、ずっと好きだったよ」

「……それ、いつまでだよ?」

 え……?そんな事初めて言うじゃん。

「お前、いつもそう答えんだよ!!好きだったよって、既に過去形なんだよ!じゃ今は違うのかよ!?」

「今だって好きだよ!決まってるじゃない!のぶは海乃が、いつからどれだけのぶの事好きだったかわかって

ないよ!」

 酔っ払いの言うことだから、どうでもいいことなんだけど、それでものぶは私の言葉を聞き逃してはいなか

ったんだ……

「のぶは海乃が好き?愛してる?ずっとずっと好きで居られるの?」

 私にはそっちの方が、大事なんだけど……

「うん。七恵がいるから。俺は海乃を裏切らない」

 酔っ払って、赤い顔して、潤んだ目をして、それでも強く頷くのぶを信じたかった。

 私だって、このまんまで居たいのが本音だから。


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