私が一番嫌いな女は、恋におぼれて一日中相手のことを考えていて、自分のことをないがしろにしている女。
今私は私が一番嫌いだ。
一時間ぐらい畑の手入れをするふりをしてあいつのことを待っていたけれど、あいつは来なかった。
もう隣のクラスの花壇の草まで刈ってしまった。
もう来ないから、さっさと帰ればいいのに帰れない。
本当に私は大馬鹿だ。
気付くと花を摘んで「来る」「来ない」「来る」「来ない」
と花弁占いをしていた。重症だ。
帰る用意をして校門を出る。
「美香先生〜!!」
聞き覚えのある甘ったるい声が聞こえてきた。
振り向くと、やはり優海ちゃんがいたけれど、隣にあいつが立っていた。
部屋でテレビを見ていたらノックする音が聞こえた。
ドアを開けると、優海ちゃんが立っていた。
「優海ちゃん。どうしたの?」
「晃さん、約束どおり星を見にいきましょう」
優海ちゃんがキラキラした目で言う。
「……そんな約束したっけ」
俺は必死に思い出す。俺が女の子の約束を忘れるなんて。
「もう、晃さんったら。行きましょう」
優海ちゃんに少々強引に連れ出される。
小学校の前を通りかかると、ちょうど美香が門から出てきた。
なんだよ、もう帰るのかよ。
「美香先生〜!!」
優海ちゃんがかけなくてもいいのに声をかける。
美香が俺達に気付いた。
「今から二人で星を見にいくんです。ねぇ。」
優海ちゃんが得意げに言う。
「……ああ」
俺は小さく返事する。
「……そう」
あいつも小さく答える。
「楽しみ。晃さん流れ星に何お願いする?」
優海ちゃんがキラキラした目できいてくる。
「……えっ」
俺は返答に困った。
「優海はね、秘密。もういやだ。晃さんったら」
優海ちゃんはキラキラと俺をみつめながら言う。
「えっ?」
俺は返答に困りまくった。
優海ちゃん「それじゃあ」
俺は強引に優海ちゃんに腕を組まれ歩き出す。
俺はあいつの方を振り向き、これは誤解だと言おうとした。
けれどやめた。
今言い訳したら、俺、あいつのこと好きみたいだ。
どうして、Aランクの女と星を見にいくのをCランクの女に言いわけしなくちゃいけないんだろう。
あっあいつFランクだったのにCランクに上がったな。
なんてどうでもいいことを考えて、ずっと優海ちゃんの言葉を上の空できいていた。
二人が腕を組んで行ってしまった。
こういうことだよね。
子どもみたいにワンワン泣きたかったけれどやめた。
あと10日でロケも終わり、あいつは東京に帰る。
……あの二人お似合いだよね。
1%でも期待していた自分が恥ずかしい。
力なく歩き、アパートの前に着く。
「美香!」
聞きなれた声が聞こえてくる。
「てっちゃん」
「今日は早かったな。慰労会がてらトニーで一杯やらない?」
「なんの慰労会だよ」
「一週間のだよ」
「なんだよ。それ」
私は思わず笑ってしまった。