俺はビールを一気に飲み干す。
佐和子が言う。
「ちょっと飲みすぎなんじゃない?」
「……なあ晃さんっていい男だと思う?」
「うん。とってもいい男だと思うわ」
佐和子はうっとりしながら答えた。
「私もね、晃さんにだったらひと夏のアバンチュールの相手になったっていいわ」
トニーのおばちゃんも会話に参加してくる。
「……ふうっ。女ってやつは。少しぐらい顔がいいからって」
俺は手で机を叩く。
「……美香ちゃんのこと?」
佐和子が興味深そうに聞いてくる。
「だから言ったのに」
おばちゃんがたたみかける。
「……でもさ、美香は9回裏2アウト10対0で負けてるんだ。どっからどうがんばったって勝てるわけがない。」
俺がそう言い、満足そうにうなづく。
「恋愛なんてすべてタイミングなのよ」
佐和子が勝ち誇ったように言う。
「じゃあ俺のタイミングはいつなんだよ!」
俺がそう言った瞬間、自分で答えが出ていることに気がついた。
その時だった。
ガラッと戸が開く音がして、入口を見ると美香と晃さんが立っていた。
「ごめん、こいつがさ寂しいからって無理やりついてきたんだけどさ、いい?」
「無理やりじゃないだろう」
晃さんが反論する。
「しつこくどこに行くか聞いてくるからさ、佐和子とてっちゃんと飲むって言ったらずっと誘って欲しそうについてくるんじゃねえかよ」
美香が少し嬉しそうに言う。
「お前がどうしてもっていうから俺は来てやったんだ」
晃さんが言う。
「誰がそんなこと言ったんだよ。いい加減にしろよ」
美香が怒る
「嘘、嘘、嘘ぴょーん」
晃さんが嬉しそうに美香をからかう。
俺は二人の様子をただ見ているしかなかった。
タイミング……。