小説『コメディ・ラブ』
作者:sakurasaku()

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私がてっちゃんの愚痴を聞いていたら、美香ちゃんが来た。噂のあの人を連れて。

「ごめん、こいつがさ寂しいからって無理やりついてきたんだけどさ、いい?」

美香ちゃんが嬉しそうに言う。

「無理やりじゃないだろう」

晃さんが勢いよく言う。

「何だと」

美香ちゃんが嬉しい気持ちをかみ殺しながら怒ったふりをしている。

「嘘、嘘、嘘ぴょーん」

晃さんが嬉しそう。何だか小学生みたい。

こんなに無邪気な人だったんだ。

最近親しくなって、晃さんのことでわかったことが一つあるわ。

晃さんって、頭にタオル巻いてるし、腕まくりしてるし、ジャージの上がよく似合う。

「……晃さんって普段は超ダサいのね……」




トニーでみんなで飲んだ後、コントに出てくるような千鳥足で旅館まで帰ってきた。

自分の部屋になんとか入り、布団に横になろうとした時、俺はあることに気がつく。

「カレンダー!!」

カレンダーを見ると×は6月6日で止まっている。

俺は携帯を見る。

「えっ、もう6月21日……」

この村に来てからの色々な出来事が思い出される。

川であいつに転ばされ、別な日に足を怪我し、畑仕事を手伝わされ、虫に襲われ……

「俺、さんざんな目にあってるな」

でも、そんなに悪い思い出ではない。

楽しかった……かな。

俺は不思議と寂しかった。

やっと東京に帰れるんだけれども。









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