小説『コメディ・ラブ』
作者:sakurasaku()

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朝から晩まで続く撮影の合間にやっと椅子に座ることができた。

俺は座っていてもスタッフ達は走り回っているから何だか落ち着かない。

義信が缶コーヒーと携帯を差し出した。

「どなたからかメールが来てましたよ」

コーヒー片手に携帯をチェックする。

日ごろの疲労がたまり、今にも寝てしまいそうな目が生き返った。。

「あっ、俺のかぼちゃちゃん、こんなに大きくなって」

自分の子どもが小学校に入学したような気持ちになった。

「本当だ、大きくなりましたね」

「そうだろ?……あぁ駄目だ、もう眠い。」

腕を組み体重を後ろに移し、タオルを目にかけた。

周りの騒音も、照明も関係ない。ただ眠かった。

「晃さん、メール返さなくていいんですか?」

「……大丈夫」

「ただでさえ、忙しいんだからメールぐらいは……」

「……俺達は真実の愛で結ばれてるからさ。大丈夫……」

そこから先の記憶がない。

――真実の愛か

今更気付いたけれど、これほど都合のいい言葉はない。





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