小説『コメディ・ラブ』
作者:sakurasaku()

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「俺今日はもう帰るよ」

そう言うと晃は窓を乗り越え本当に帰っていった。

なんだか頭を金づちで思いっきり殴られたみたいにうまく頭が働かなかった。

晃に会えたら言おうと思っていたこと、しようと思ってたことが頭の周りをぐるぐる回る。

「追いかけろよ!」

てっちゃんの一言で目が覚めた。

「でも……勝手に帰ったのあっちだし……」

この期におよんでもまだ私には意地というものがわけのわからないものが残っていた。

「お前には幸せになって欲しいんだよ。いつも笑ってて欲しいんだよ……そうしないと俺、いつまでもあきらめつかないんだよ」

てっちゃんはそういうと机に腰掛け、黒板の上にかかっている時計を見た。

「……ありがとう」

私はそう言うとすぐに窓を開け、晃を追いかけて走った。

途中何度も息が切れてもう走るのをやめようかと思ったけれど、やめなかった。やめられなかった。

秋の終わりの夜の村は虫の声さえ聞こえなかった。駅が見え電車が止まっているのがわかる。

けれどもすぐに停車中の特急電車のドアが閉まり東京へと発車していった。

ただどうしていいのかわからず、あっという間にいなくなった特急電車が止まっていた場所をいつまでも見ていた。



メイク室で髪形をセットしてもらっていた。

小山村に行ってから一週間が過ぎた。

俺は毎日携帯を持って眺めていた。

通話のボタンを押して美香にかけようとするが、最後の一つがどうしても押せなかった。

隣で子役の小学生達がクロスワードパズルをやっていた。

「わかったこれ、頭文字をとると開けゴマってでてきた」

「本当だ!凄いな」

「簡単だよ、こんなの誰でも気がつくよ」

小学生達はそういうと雑誌に向かって開けゴマと唱え始めた。

「開けゴマ」

「開けゴマ」

3回目の開けゴマが唱えられたとき、俺の頭の中が開いた。

携帯を手に取りツイッターを開く

みんなの晃だよ

かっこいいってよく言われるけどね

ごっつあんです

めんどうなことだいきらい

んんっ 

アカサカサカス

イルカショー

鹿の餌

照れちゃうよ

ルビーせしめてフランス旅行


俺は連続ツイートしてやった。

この間あいつを無理やり俺のフォロワーにしておいてよかった。

「頭文字をとれば一目両全だ!」

自分の余りの頭の良さに俺は自分で自分をほめたかった。



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