南側の壁が一面ガラス張りの昼下がりの事務所は電気をつけなくても夜の10倍は明るかった。
おかげで普段目につかない埃もはっきりとわかる。
姑のように指で埃をとってみたが、あっという間に埃は開いていた窓から入ってきた風に飛ばされ飛んで行ってしまった。
俺は携帯を手にとり、一向に連絡のこない携帯を空中に一回転させたが、勿論あいつからは何の連絡もない。
事務所の廊下を足取り重く応接室まで歩いていた。
応接室の扉を開けると社長と見知らぬ年配の男と優海ちゃんソファに座っていた。
「あれ優海ちゃん?」
優海ちゃんの名前を言ったはずなのに、皆一斉に俺の方を振り向く。
「そこに座りなさい」
社長がいつもよりゆっくりで真剣な顔で言った。
社長の隣の一つだけ開いているソファに座ると日光がまぶしく背中が徐々にあつくなった。
誰も離そうとしない異様な空気の中、社長が口火を切った。
「こちらはアースカンパニーの社長さん」
社長が見覚えのない男を紹介し、男は静かに頭を下げた。