「どういうことですか?」
俺はもう一度相沢社長の方に向き直り言った。
「……いや、ちょっと小耳に挟んだんだがね、君が彼女のアパートから朝帰りする所を村の人が見てたんだってね」
相須社長はまた穏やかな笑顔になり、ゆっくりとしゃべり始めた。
「それでどうなったんですか?」
俺は一刻も早く結果が知りたくて早口で言った。もうこの時点でどっちが優勢かは明らかだった。
「小学校の保護者達が騒いで大変だったそうだ。ふしだらな美香先生が無理やり晃さんを酔わせて誘い込んだんだって。このままじゃ私たちの大事な息子も誘惑されかねない。教員としての資質に欠けるから辞めさせてくれって教育委員会まで動かしたって聞いたが、まあどこまで本当かわからないがね」
「俺が今すぐ言って説明してきます!そんな関係じゃない。本気で付き合ってるんだって!」
部屋を飛び出そうとした所を社長に止められた。
「おい、お前が言って本気で付き合ってるって言ったらどうなる?今は小さい村での話だけど、ネットで全国に広まるんだぞ。自分の立場よく考えろ!」
社長はすごい剣幕で怒鳴り、俺は怒鳴り声のおかげで我に返った。
そう社長の言うとおりだ。
俺には何にもできない。したところで逆にあいつに迷惑がかかってしまうってもうかなりかかってるんだけど……
「言い忘れましたが、村でも好き勝手噂されて非常に居づらいみたいですね」
相須社長が勝ち誇ったようにダメ押しの攻撃をしかけてきた。
もう戦う気力を無くし、そっと部屋を出ていった。
試合終了のゴングが鳴る。
俺の完敗だ。