小説『日本式魔術師の旅〜とある魔術編〜』
作者:ヨハン()

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一が話している。

彼の判断は正しいと思う。
確かに死兵だったら周りの被害を考えることはないのだろう

しかし私たちが撃退に成功するとも限らない、
もし私たちが負け魔道書が奪われたらより大きな被害が出る
それにここで戦闘しても一般人に被害が出る確率は十分にある。


本当にこれで正しいのか私にはわからない。

純粋な善意でも偶然人を傷つけることがある。

正しいと思った行動が裏で人を傷つけることもある。


今回はどちらを選んでも人が傷つく可能性がある・・・・・

自らの選択で人を傷つける可能性が高い未来を選ばなければならない。
今までは選んだ結果偶然そのような事態に遭遇した。
しかし今回は自らがわかったうえで選択しなければならない。

怖い、自らの選択で人を傷つけるのが・・・・


本当にここで戦うことが正解なのか・・・逃亡戦の方が正解ではないのか


誰か・・・正しい答えを教えてよ・・・


「オリアナ、大丈夫ですか?」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



オリアナに声をかけてみましたが・・・・駄目そうですね
この状態では碌に戦えないでしょう


「ねえ、一?本当にこれが正しいのかしら?」

「さあ?どうでしょう?」

「どうでしょう?って」

「道徳的にいうのならば正解でしょう、しかし仕事的いうのなら不正解ですかね」


オリアナは今まで不幸な出来事に見舞われ過ぎました。
だからでしょう、何かにすがりたいと思っている。
明確な答えに、確かな基準、誰もが幸せになることのできる選択方法などですかね。


「結局のところ視点の違いによって何事も変わるんですよ」

「それで・・・それで本当にいいの!?
その結果罪もない人が傷つくかもしれないのよ!!」


私の適当ともいえる返事に怒鳴るオリアナ。
私はそれを冷静に聞き、見つめます。


「しかし誰一人傷つかないかもしれません。」

「そんなの結果論でしょ!?
私は誰かを危険にさらしたくないのよ!」

「だったら、逃亡戦にしますか?
こちらも同等以上の危険性がありますよ?」

「そ、それは」


オリアナは恐怖にさいなまれています。
そのせいで冷静な判断ができていません。

不幸な出来事の数々によって許容量を超えたのでしょう。
これは自分にとっての答えを出すか、時間がたたねば解決できませんでしょうね。


「オリアナ?私たちの生きる世界はどちらをとったとしても・・・・
いや、常に危険が付きまとう世界です。
あなたの求めるような正しい選択なんてまずありません。」

「それでも!それでも・・・・私は・・・!」


彼女は優しすぎる、それは美徳なのでしょう。
しかしその優しさは弱点にもなり、その考えは麻薬にもなる。


「その思いはよくわかりますし、考えは正しいことです。
しかしその考えに固執してはいけません。」

「固執して何がいけないの!?
私は誰かが傷つくのに耐えられないのよ!」

「固執することで見なくてはいけないものを見なくなってしまうからです。
大切にすることは結構です、夢とすることも大いに良いです。
しかし夢を、頭上にあるものを固執することで、あなたは足元を見ることができますか?」


オリアナを諭す。
これは彼女のことを知っている私が今すべきことです。
諭さなければ彼女はきっと、大きな間違いをしてしまう。


「正しい答えを、明確な基準を求め、求め、求め。
その時あなたは間違えませんか?
人を傷つけたくないために正しい答えを求め、
そして人を傷つけたくなかった人が、人をを傷つけてまで基準を求める。
そのようなことが固執することで起こり得るのです。」


「冷静に物事を見つめなさい。
さもなくばあなたは後悔することになるでしょう。」


「人が傷つくことに慣れろと言いません、慣れてしまったらそれは機械と同じです。
 心は激昂してもいいですが、頭は冷静でなければいけません。
 心を激昂させ何度でも立ち上がるのです。
 頭を冷静にすることで同じ失敗をしないようにするのです。」


オリアナは納得ができないと怒鳴る。


「そんな、そんな方法で!
 初めての失敗だったからと、初めてそのような事態になってしまったからと!
 その時傷ついた人に謝れというの!?」

「誰もそうは言っていないでしょう。
 絶対に失敗するということはないのですから。」

「失敗しないことなんてありえない!」

「そうかもしれません。
 しかし私たちが生きる世界はありえないことがありえないんですよ?
 そして絶対という言葉はこの世には存在しないんです。」


私はこの世の摂理ともいえるような法則を言う。
その言葉に彼女は黙ってしまう。

それはそうです。この世界にいるのならば想定外、予想外など
ありえないことが起こることは日常茶飯事ともいえます。
また絶対は存在しないなんて生きていたらわかること、
そもそも彼女の願い自体が絶対がないことによって苦しめられていますしね。


「でも・・・それは低い確率で・・・」

「そうですね、低い確率です。
 しかしあなたの思いはそのような数字だけで諦めれるものなのですか?」

「・・・・・諦められないわよ」

「ですよね。
 ならばそのとても低い確率を目指すが大切なんじゃないでしょうか?
 理想ばかりを見るのではなく、現実を。
 今を見つめ、何度も転んだとしても。
 今後失敗することが、人が傷つけることのないようにと抗い続けるのです。」

「それは・・・大変そうね」

「ええ、大変でしょうね。
 ですが生きている人は皆理不尽を抱えて生きています。
 そしてあなたの目指すのは周りに人よりちょっと大変なだけです。」

「そうね、ありえないことがありえなく、また絶対という言葉は存在しないんだものね。
 私の求めるものが存在しない通りはないわよね。」

「但し、夢を目指してはいけませんよ?
 私たちが目指すのは目標。
 例え全てを助ける夢が不可能だとしても、
 一人が99人を助けることを、一人が残りを助けるのを目標とすれば良い。
 夢が不可能でも、それを目標に貶めれば良いのです。」

「貶める?」

「そうです。
 夢という崇高なもので考えず、目標という現実に貶める。
 分けてしまうことで、不可能を可能にしてしまえばいい。」

「結果を見るのではなく、過程をみて
 道を模索する・・・か」

「ええ、
 しかし道は、夢は探し求めるのではなく・・・」


私はオリアナの目を見つめます。
彼女もまた私を見つめ返す、その眼には不安はなかった


「「自らの手で作り掴むもの」」

「ふふ、よくわかりましたね。」

「そりゃぁ、わかるわよ。
 お姉さんはそこまで馬鹿じゃないもの。
 ふふっ、お姉さんは少し焦りすぎたのかしらね。もしくは不幸に当てられちゃったのかしら?
 でも一のおかげで目を覚ませたわ。
 夢ばかり見ていたらいけないわよね、私だけが怠けてちゃいけないわ。」


そういうと彼女は単語帳を千切り、罠を仕掛け始めた。

もう・・・大丈夫そうですね


「お姉さんのせいで時間を使っちゃったからね。
 めいいっぱい働くわよ〜!」

「そうですね。
 ああ、そうですオリアナ」

「ん?何かしら?」


オリアナは作業を行いながらも返事をする。


「あなたの夢は素晴らしいものですが苦難も多いでしょう。」

「そうね、でも諦めるわけにはいかないわ」

「ですから、人に頼るということも覚えなくてはいけませんよ?
 あなたの夢は素晴らしいものです、きっと支えてくれる人もいます。」

「そう、かしら?」

「ええ、少なくとも私はあなたを支えたいと思っていますよ?
 それにオリアナのような女性を見捨てることなんてできませんからね。」

「なっ//////////」


オリアナは顔を赤くしながら驚きの声を上げる。
先ほどまであった不安そうな顔はなく、顔を赤くしている姿はとてもかわいらしかった。


「私は今あなたのパートナーですが、
 この仕事が終わったとしてもそれだけで縁は終わりませんし見捨てるようなことはしません。
 パートナーじゃなくなったとしてもこちらにいる間は自由に頼ってください。
 また私は研修を終えたら日本に戻ってしまいます。
 しかしあなたの話を聞き、相談に乗ることはできます。
 それにオリアナのためならば可能な限り手伝いもしますよ。
 私はオリアナを支えたいと思っています。
 オリアナは今まで一人で頑張ってきたんです、存分に甘えてください。」

「あ、ありがとう////////」

「いえいえ、どういたしまして。」



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修正しました〜

まあ、あまり変わりませんが・・・・

コメントをよろしくお願いします。

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