小説『短編集』
作者:tetsuya()

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 田中幸夫はプレイヤーとなって参加できるゲームを、友達の高橋忠志と二人でやっていた。

 ゲームの魅力はなんといってもクリアしたときに入手できるお金である。一万ペラゴールドごとに現金で五千円もらえる。端数は完全切捨てである。

 クリアできなければ命を落とす、とはいってもその確率は三パーセント程度で、よほどゲームに無知でなければ攻略は簡単だとインターネット上に書かれていた。これまでもたくさんのゲーマーが挑戦し、金をゲットしてきたらしい。

 二人はいくつもの試練を乗り越え、ラスボスと対戦していた。こいつさえ倒せばゲームクリアとなり、大金を手に入れられる。

 幸夫と忠志はゲーム最強と呼ばれる武器防具を揃え、レベルも最大値まで上げていた。余裕で勝てるだろう。夢にまで見た働かずに、遊び放題の日々はすぐそこまで迫っていた。あとはラスボスを処理するだけだ。

 プレイヤー幸夫がまずラスボスに攻撃する。インターネットでは最強の武器道具を揃え、レベルも最大まで上げていたなら、一発で倒せることもあると記されていた。

 ついでプレイヤー忠志も攻撃した。勝利を確信した二人はプレイヤー同士で抱きあっていた。

「大金を手に入れられるぞ忠志」

「俺たち一生働かずにすむ」

 二人は大金を手に入れることに全神経を奪われていた。ラスボスがどうなっているのかなど、眼中になかった。すでに倒されているものだと思っていた。

 そんな二人にどこからか攻撃が炸裂した。プレイヤーの生死を左右するライフポイントがゼロになっていた。画面にはゲームオーバーと書かれている。

 ゲームオーバーとなった二人に、ラスボスは冷たい口調で見下すようにいった。

「ゲームのラスボスはお前たちの欲に比例して強くなるシステムだ。あれだけ強欲だと、いくら強力な武器防具を揃えても勝てるはずなどない」

 知らなかった。ゲームに特殊機能が取り入れられているなんて。

 強欲な二人は一生遊んで暮らしたいからと、十億ペラゴールド手に入れてラスボスに挑んでいた。現金に換金すると五億円にもなる。努力することなく、そんな大金を一度に入手しようとしたから罰が当たってしまった。

「ゲームオーバーになったプレーヤーは死んでもらう」

「うわー」

 幸夫と忠志の二人は一生帰らぬ人となった。あまりの欲深さはインターネット上で語られ続けていったたらしい。欲に負けて命を落とした哀れなプレーヤーだと。

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