小説『短編集』
作者:tetsuya()

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 町田早紀はこれまで自分の考え方にこだわりすぎていた。完璧自分よがりの人生を二十二年間も送っていた。

 どうしてなのかは完全に解析できていないが、自分のやり方と完全に一致しなければ口を挟んでしまっていた。黙っていればよいものをヒステリックに説教までするため、クラスメイトとたびたび口論になり、ときには揉み合いに発展する。相手を広く認める心を持っていればこんなことにはならなかった。

 わたしのあまりに狭すぎる度量に、人はちっとも寄り付かない。今振り返ると至極当然のことなのだが、当時は自分が百パーセント正しい、間違ってるのは相手と決め付け、わたしの魅力に嫉妬しているのかなどといったとんでもない方向に思考を巡らせていた。天狗になるとここまでなってしまうのが人間の怖いところだ。

 知人の悪口を日記帳に記すことでストレスを解消するという悪趣味にも没頭していた。Aさんは顔が汚い、性根が腐りきっているとかメッタメッタに悪口が記されている。Bさんに対しては、鼻が垂れている、女性としての魅力がない、ろくでもない男とつるんでいるなどと書かれている。それをCさんにもDさんにも行っていた。それぞれにいいところはあるはずなのに、悪いところばかりに目がいってしまい、まるで悪口ショーである。早紀にも欠点があるにもかかわらず、よくもここまで他人を非難できたものだ。

 どうして思い通りに世界は動かないの、どうして理解してくれないの、どうして辛さや悲しさをわかってくれないの、どうして、どうして・・・・といった言葉も目立つ。今振り返ると自分は何様なのと思ってしまう。
 
 早紀はそれに気づいたからこそ、他人との協調を大切にしようと思う。失った時間は少なくはないが、これからの努力で取り戻せるはずだ。 

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