小説『短編集』
作者:tetsuya()

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 もてない男や女たちの夢を叶える『どきめき恋発展』というゲームが発売され大ブームとなった。

 このゲームはプレイヤーとなった男女が、自分の理想とする恋人像を作り、その人間とゲーム内でデートできる。

 すごいところは声や仕草、そして細かい性格までもが調整できるシステムだ。ゲーム内の世界なのに、生で付き合っているような錯覚すら覚える。そこがこのゲームのいいところだ。ゲーム価格は五万円と破格の設定だが、その後、追加料金を払う必要はなく、いろいろな業者に頼むより割安となっている。

 インターネットも全国に繋がっており、条件さえ叶えば現実の人間とゲームで付き合うこともできる。一万の性格診断のアンケートに答えると、インプットされた性格に基づきゲームが自分と相手が付き合えばどのようになるかもシチュエーションしてくれる。うまくいかないときは、どうしたらよいのかといったアドバイスももらえる。自分の恋愛を実らせるのにはもってこいなのだ。相手が偽りの性格をしていなければというのが前提だが。こればかりは現実にも起こりうるためしょうがない。

 オタク暦十三年、彼氏がまったくいない筒紀子二十八歳はゲームに没頭していた時期があった。女として売れ残りにならないために、必死に彼の設定を変更してどのような人となら上手くいくのかを追求している。彼女は三十路になるまでにどうしても結婚したかった。

 昨日までに一万人の現実男性と架空空間でデートした。だけど誰一人として上手くいかない。性格も偽りなく答えたし、年齢も収入も嘘はついていない。

 上手くいかない理由として考えられるのは、性根がすごい暗いところ。ネガティブ発言しかでてこない。プラス思考に持っていきたいのだが、どうしてもそれができない。明るくなければ恋愛も何もかも上手くいかないようだ。

 性格を無理矢理変えようとした。だけど欝にかかってしまい入院する羽目になった。あせりとここまで嫌われることへのストレスからだ。何事も無理に進めようとするとどこかでつまづく。社会はそのようにできている。
 
 退院後は自然な自分に戻ることにした。何事も成り行きに任せることが一番いい。上手くいく異性はせいぜい百人に一人くらい、上手くヒットしたら結婚すればいい。あせらずゆっくりとやっていこう。


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