小説『短編集』
作者:tetsuya()

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一つだけ願いを叶えてもらえるどんなことをお願いするだろう。今岡涼子は休日のひとときにそんなことを考えていた。

 片思いしている彼と一緒になりたい、一生働かなくてもすむお金がほしい、ずっと二十一歳のままでいたい、世界一の美人になりたいといったように欲望丸出しのことばかり浮かんでくる。

 願いをかなえられるにしてはちっぽけすぎる。何段階もスケールを大きくしたい。頭でイメージするのは自由だ。

 他人の心を読めるようになるというのは楽しいかも、と一瞬思い浮かべたもののすぐに取り消した。他人の心を知ったからといってどうにかなるものではない。一生働かなくてもすむお金がほしいというのより格段にスケールダウンしてしまっている。

 もっとスケールを大きくしたい、もっとスケールを大きくしたいと思っていると、すばらしいアイデアが浮かんできた。

 魔法使いになって世界をありのままに動かしたい。全世界の人間が私の奴隷となるのを想像する。すごく楽しそうだ。自分の命令に刃向かえば容赦なく抹殺していく。全世界の人間をオモチャのように扱うなんて夢のようだ。
 
 涼子はI am Godと何度も繰り返し雄たけびを上げる。私は全世界を支配する神。残りの下僕共は、私の前にひれ伏すがいい。

 狂気の世界に入り込んだ彼女は三時間後刑務所にいた。現実と空想の区別がつかなくなり、犯罪を犯してしまった。後々に冷静になったものの、失ったものは取り戻すことはできないだろう。

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