小説『自由に短編[完]』
作者:ハル()

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洗面所でうずくまっている雪乃を見ていると体の中心がズキズキした。

わかってる、彼女がどうして悲しんでるかなんて。原因は自分なのだから。


「・・・ごめんなさい」

うずくまっていいる雪乃にぺこりと頭を下げる。
でも、彼女はうずくまったままで返事なんてくれない。いや違う、返事が返せないんだ。













―――彼女に俺の姿はもう見えないのだ。



誠に残念ですね、ハハハハ・・・、、。
他人ごとみたいに無理やり思ってもただただ傷をえぐるだけなのはわかってる。

でも、他人ごとのように自分の現状を扱わなければこの理性は保てない気がしてしょうがないから。


この際はっきりさせよう、俺はもう彼女と繋がれることはできないのだ。ずっと。
声も聞こえなければ、動作の音も聞こえない、抱きついたってさわたって体から手が通り抜けてしまう。







つまり、俺はこの世のものではないあれになったのだ。







ゴーストってやつ。



数ヶ月前まではちゃんとした人間だったんだけどなぁ。

ハハハ、おかしー。。



あーあ、。



1か月前の俺は車を運転していた。
雪乃を家に送り届けたあとのことで、俺は家に帰ろうと少し、いつもより早くと、速度を上げていた。
それが引き金になって、事故ったんだよな。

曲がり角で大型トラックにどーんっ、って正面衝突。
バカだよなーホントにさ、。



それで、わかってるだろうけど俺死んじゃった。
即死だったみたい。

事故ってすぐに自分の意識が暗い闇みたいなのに引きずり込まれて無くなるような感覚に襲われた。
それから数日間、長く暗い迷路の中を手探りでさまよってた。
やっとそこから抜け出せたと思えば、自分は死んでてもうなんにもできませんよーみたいなさ。


耐え難い、というか耐えなきゃいけない現実が待ってたわけ。
ハハ、苦しー。


・・・俺ってストーカーみたいだな。雪乃にここにいるって気づいてもらいたくてずっと一緒にいるのに気づいてもらえないし、雪乃の私生活は丸見えだし? 


もうそろ、ここから立ち去るべきかな―――。







【君に゛あの事゛がやっと言えて嬉しくて嬉しくて有頂天になってて、事故りました。代償は自分の命と君に2度と会えなくなったこと。今更手は届きそうもない】





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