小説『自由に短編[完]』
作者:ハル()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

(バカと根暗の365)


問1(もし、生意気でテンションの高い男に食い逃げされたら少女はどう対処する?)




喧騒が渦巻く正午、いつもと変わりない日常。


鼻先に甘い香りがすすりより、なんとも言えない幸福感。
徐に生クリームとチョコフレークをスプーンですくい上げた。


おおお…なんてことだ。
このしっとりとした生クリームの舌触り、サクサクとはじけてゆくチョコフレーク。
まさに魅惑の組み合わせ。


よし、今度から人を惑わせるときはこのコンビを使おう!と、小さく心の中で誓った。
だがそんな小さな幸福は数秒で終了を迎えてしまった。


「よおー地味子! ハッ、パフェ!? 何おまえパフェなんてカワイイの食っちゃってんの!? あ、でもこれ超上手いな! がちでやベーはぁ」


この男に。


「……うざい、消えろ。勝手に人の食うな、いつか身分差別で訴えてやる」


私の必死の訴えに対しこの男は、自分のブラウンの毛の中に入り混じった赤いエクステを指に巻きつけながらフフンと鼻で笑う。嗚呼、憎たらしい。


「パフェ食いながら物騒なこと言うなよ。あー可愛げのない女」

「お前に優しくする事自体がもったいない気がする」

「うわーまじかー俺げんなりー」


そう言ってアイツ、徃廈 遊馬(ユクイエ・アスマ)は足早にカフェテリアから出て行った。

また一人になった私は喧騒の中で小さく驚く。
無いのだ、さっきまでてんこ盛りに積まれていた魅惑の組み合わせたちが。


パフェの器の中は完食のあとしか見られず、激しくなるであろう怒りがふつふつと湧いた。


「(徃廈ーーーーーー!)」

食い逃げだ、アイツぬけぬけと…!
私はまだ2口しか食べてないんだぞ!?


…まあ、ここは許しておこう。というか、追いかけるのがめんどくさい。
これでいいのかって感じだけどほっといてくれ。

これが私、鈴糊 杏那(スズノリ・アンナ)の日常の一つ。










答)抵抗は一応するが、少女は犯人を追いかけてまで怒ろうとはしない。それを゛優しい゛と判断するか、゛怠け者゛と判断するかはあなた次第だ。

-15-
Copyright ©ハル All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える