どんなにあがいたって朝は来るもので――――・・・。
「蒼様起きてください」
耳に入った妙にツンとしたかすれ声に意識は戻される。
でも、寝床が暖かくて離れがたい。
(体がはっきりしない朝は苦手だ・・・)
蒼はまだろくにあかない目を再度つぶりベッドの中で丸くなった。
彼の意識はものの数分でまたなく無ってしまった。
蒼の様子を見て昨日からこの屋敷に来た東は、怒らず驚かずただポーカーフェイスを貫いていた。
その表情からは彼女の感情がくみとれない。
彼女の陶器のように白い肌がその無機質さをより強くしている。
結局、東は蒼を起こすという義務はせずその義務を目覚まし時計にたくし部屋を後にした。
それから一時間後に葵は目を覚ます。
恐ろしくうるさい鈴の音が鳴り響くような音でガバッと起きた。
(な、なんだ!? 一体・・・―――!)
時計の針はゆうに午前9:00をこえていた。
急いでクローゼットを開けて服を着替え、ランドセルを持ってリビングに行く。
蒼は焦っていた。現実爆発してくれー!とも思ってた。
ドアノブをひねって入るとどういうわけか、イスに見覚えのないメイドが座っている。
メイドは蒼に気づくとこう言った。
「お目覚め、ご苦労様です」
切れ長の黒目が驚きを隠せない蒼を見据える。
メイドの声には聞き覚えがあった。
蒼は息を呑んでメイドに聞いた。
「おまえは・・・昨日の・・・?」
彼女はフッと息を吐いてテレビにリモコンを向ける。
「ええ、東でございます。蒼様」
パチっと瞬間的にテレビの電源が落ちた。
そして最後に彼女は一言。
「今日は、土曜日ですね」
少しばかり微笑む東。
蒼は持っていたランドセルを床に落とした。