彼、すなわち草影光(クサカゲ・ヒカル)と出会ったのは一年ほど前になるだろうか。
その一年前に、私が働いている会社にひょっこりと、新人社員としてやってきたのが光。
何人もの新人たちの中でも光は目立っていた。
『ねーねー! あの草影君って子、可愛くない?』
『思った〜! 子犬みたいにかわいぃんだけど〜、』
同期の女の子達はなぜか、彼に色めきだっていた。
彼のどこがいいのか、全く私は理解できていなかったのだけれど。
そんな、深い疑問を抱いていれば隣にいた女の子が私に話しかけてきた。
『雪乃〜、草影君良くない? あのクリッとした目が超キュートだわぁ。雪乃は草影君どう思う?』
どうって……。
「―――スッゴイ童顔の持ち主だなーって思ったよ」
――――――――――――――――――。
私がそう言った瞬間、自分の周りが静かになったのはすぐわかった。
どうやら思っていたよりも私の声が大きかったらしくこの有様。どうしよ、目の前真っ暗クーラだあぁぁあ!
それになんとなく、痛い視線が刺さってきてるのは気の、、、真実でしたー。
だって、さっきまでニコニコしてた同期の女の子達が絶対零度の眼差しを………!
男らは目を左右に泳がしてるだけで何もしないし!! 余計気まずくなるだけっつーの!
でも、だってあのクリッとした目でしょ、肌も男にしては綺麗だし、まつ毛も多いし、どう見たって草影君童顔じゃない!
「あの、水野さんでしたよね」
いきなり草影君が、社内をブリザード状態にしてしまった私に話かけてきた。
突然の事に、ヒヤッとしたけれど何とか平常心を保つことができた。
「は、はい」
「――水野さんって面白い人ですね、僕は草影といいます。これからよろしくお願いします」
私に簡単な挨拶をし、胸ポケットから薄緑色の名紙を一枚だし、渡された。
そして彼は、社員達を見渡しながらこう言った。
「これからどうぞ、よろしくお願いします。精一杯皆さんの役に立つように頑張ります! ……あ、あと、僕のチャームポイントはこの童顔ですのでこちらもどうか、よろしくお願いします」
一礼後には、満面の笑みをさらす彼は堂々としていて、立派なものだった。
彼と同じ、新人達はポカーンとしていたが、他の社員達は先ほどのブリザード状態とは打って変わって暖かい雰囲気になっていた。
むしろ、チャームポイントは童顔っと言っていたところでドッと笑いがあがっていた。
なんて、新人だ…。私は驚きのあまり、口が一向にふさがらなかった。
その草影は今、同期の女の子達に囲まれている。
【この時から、彼をもう少し疑っていればよかったのかもしれないなと、今になって焦ってるとかね】