第66箱 「戦争だ……!消す…?上等じゃねえか!」
暫くして……
今回の件の結末が、雲仙の下に届く。
「ああ?任務失敗?どいつがよ!?はぁ?全員!?」
アイフォン越しに話しているのは呼子だ。
〔はい…申し開きのしようもありません。 吉野ヶ里・国東とも連絡を取り合いましたが……〕
一瞬…言葉が詰まる。
〔援軍を含め風紀委員前線部隊44名 さながら瞬間芸の如く、あの2人にはばまれました…。黒神めだかはともかく……その…もうしわけありません。私はあの補佐を見誤っていました。〕
まるで頭を下げているのが目に浮かぶかのような口調で謝罪していた。
「……ケケケ!すげーな。マジで間に合ったのか?ってか、それよかアイツも追いついてんのかよ…どんだけバケモンだったら気が済むんだ?あの2人は。」
笑ってそう言う。
〔しかし…私は、委員長に誤った情報を…それにこの惨状…このまま引き下がるわけには……。〕
少し、後悔しているようだ。
「いーや。深追いすんな呼子。オメーの言ったように、【アイツ】自信のチカラっつーのも、ありえねーんだ。オレが直に見ても底が見えねえんだ。お前の落ち度じゃねえよ。」
そう言うと…
「考えられるか?オレ様の使ってる【アレ】の形状を…手でぐっちゃぐちゃに潰してくれやがったんだぜ。」
手に持ってる…【物】を見ながら…笑いながらそう言う。
〔それ…ほど…と…?〕
呼子もその言葉に驚いている。
【それ】を管理するのは委員長だが…
関わっている以上…よく知るものだからだ。
「そんな感じだ。…まあ、バケモンの旦那はバケモンってこった。深く考えんねーでいい。それよりもあいつ等がやられっぱなしの無抵抗主義者じゃねーってわかっただけでも収穫だよ。」
その委員長の言葉…それについては思うところがある。
〔い…いいえ、それについて意見が…。〕
呼子はそう言うと…。
〔確かに…2人は無抵抗主義者ではないようなのですが…2人がすぐに何処かへ行ってしまったのですが… 後に残った人吉善吉庶務が少々気になることを言っておりまして……。〕
思い出しながら……善吉との会話を伝える…。
【回想】
善吉は…おきた事…大体理解したようだ。
呼子の前に立ち…。
「呼子先輩勘違いしないでくださいよ。」
ある…事実を伝える。
「めだかちゃんと劉一が助けたのはオレ達なんかじゃない。むしろ助けられたのはあんた達の方なんだからな。」
言っている意味が…理解できなかった。
「どういうこと…です?」
だから、聞き返す。
「そのまんまの意味ですよ。喜界島自信はおとなしめの女子ですけども バックにはアイツを実の娘のように愛でているヤベェ2人組みがいましてね。今まで喜界島に手を出して無事に済んだ奴はいないようです。」
善吉はそう言う…。
2人組というのは…勿論あの2人の事だ。
彼女にとって、頼れる家族…と言ったところだろう。
「阿久根先輩は阿久根先輩でマジでヤベエ…どーもどーやら鍋島先輩の指導を受けてだいぶ丸くなっちまったみたいですけど…中学時代はあの人、人間を壊すのが趣味のとんでもねー悪党だったんですから。」
説明する善吉のバックに……。
玉座に座って倒れてる人山を見て怪しく笑っている阿久根先輩が…見える…。
今の彼からは想像できない… 苦笑
「そしてまあ…あいつらほどじゃなくっても、このオレだって相当ヤベエ…オレはそれがめだかちゃんの敵ならば、先輩であろうと教師であろうと容赦の出来ない番犬だ。そのふざけた鎖が俺の制服にかすりでもしてたら…アンタ、今頃自分の足で立ってないですよ。」
善吉は…睨みを利かし、そういった。
まあ、女子にそんな事…するのは…って思ったりするけど…。
まあ、呼子さんの方が悪いからね? 苦笑
「……ッ」
信じられない。と言った様子だ。
「まあ、こんな具合ですよ…。うちらに関しては…っと。」
善吉は、離れようとした…が。
何かを言い忘れたように、振り返る。
「ああ、もう一個…言い忘れてました。ってこんな事言っちゃあ怒られちまいますが。…さっき、アイツ…めだかちゃんの傍にいた男…。」
善吉が2人が離れていった方を指差す。
「劉一に関しては…普段のアイツがアイツですからね?アンタ達の目にどう映ってたかは…大体想像つきますが、その通りだと思ってんなら、訂正・修正した方が良いですよ。さっき言った阿久根先輩や喜界島たち、そして、このオレのヤベエ度からは、比べモンにならないですから。」
そう言う。
「ど…どういうこと?」
呼子は…今回は聞き返していた。
なぜなら…確かに、今回の彼のパフォーマンス…。
これまでの情報とは比べ物にならないからだ。
確かに以前行われていたプールでのイベントでは、かなりの力を見せていたそうだが……。
あくまで枠内…想定範囲内だった。
そう、優秀な補佐…としか……。
情報収集は…風紀委員として、決して不足だった。と思いたくない。
…が、それでも…かけ離れて過ぎだからだ。
「オレを含めてあいつらも…めだかちゃんには【負けて】いたんですが、劉一は違う…オレが知るうちでは唯一、【めだかちゃんが】はじめっから、【負け】をみとめてんですから、まあめだかちゃんはその事は嬉しそうに言ってますがね。」
ちょっと…悔しそうに… 苦笑。
「劉一の力の底自体まだ、見えてないです。それは俺は勿論他の2人も…そして、めだかちゃんも。……だが、わかる事はありますよ。アイツは、【友達】が傷つく事・傷つけられる事が何よりも許せない。その思いが強すぎるんですよ。今回…狙われてた3人のうち、1人でも…万が一にでもどうにかなってたら……。」
善吉は…一瞬目を瞑り…そして見開いて。
「アンタ達…委員会ごと、学園から消えてたかもしれないんですからね。」
そう…言った。
脅し…といった感じじゃない。
紛れも無い事実。
そう言わんばかりに…だ。
「めだかちゃんと劉一に助けられたのは誰か…守られたのは誰か。よーく考えてみることですね。」
Side out
呼子 side
「……勿論彼の言う事の大半はハッタリでしょう。私達も連中にただ負けていたと思いません。否!あの2人の邪魔さえ入らなければ任務自体達成できていたはずです。それは私の情報不足抜きにしても必ず。しかし…その成否に関わらず、無傷ではすまなかったであろう事もまた事実!」
説明する時…。
雲仙によぎったのは、劉一が言っていた言葉。
【めだかちゃんはそう言う人だ。誰かが傷つこうとしているのに駆け出さないわけない】
その言葉の…真意…。
【誰かが…】
それは…敵味方問わず…?
「実際に2人は風紀委員の人間を誰一人として傷つけてはいません。まあ…トラウマを負ったものは数名いるようですが……。結論として…2人…否 トップの黒神めだかの行動原理は殴られたら殴り返したとか言うものでは全く無く!生徒会、風紀委員会!双方どちらからも犠牲者が出ないように事前に争いを止めたかっただけだとしか……。」
そう結論づけたその瞬間!
〔グシャ!!!〕
電話越しに……。
何かが壊れる・砕ける音がしたと思えば…。
「ッ!?…雲仙委員長……?」
そして通話は切れていたのだ。
Side out
雲仙 side
気がつけば……。
アイフォンを握りつぶしていた。
そういった感じだ。
「あーあ… 大っ好きなアイフォンがぶっ壊れちまったぜ。新型に機種変したばっかなのによぉ〜〜 誰がどう責任とってくれんだよなァコレ!」
“バキンッ!!”
バキバキに握りつぶしたそれを地面に叩きつける!
…その場にいた鬼瀬と不知火は…若干…引いていた。
いや…鬼瀬は驚愕の表情をしていた…。
「仲間を助けたかったんじゃなくて敵味方ともに守りたかった?何それ?どういう意味だよ!その聖者っぷり!なんだ?あいつら、神々にでもなったつもりか?」
たたき付けたアイフォンの残骸を踏みつけ…。
「…ただの偽善者ならテキトーにいじめた後取り込んでやるつもりだったけどな… そこまでイカレたモノホンの聖者だってんなら…ゲーム感覚で 殺戮してやんよ…。」
そして…。
出入り口は不知火がふさいでいる?から……。
“ドゴオオオオン!!”
壁を…吹き飛ばした!
「ケケケ…なるほどなるほど…確かにこんな脆い壁だっつうなら、防音設備に問題があったようだな?こんなプリティなお子様が軽くケットバシタだけで大穴が開いちまうなんでいかにも脆すぎって感じだ。…なあ?鬼瀬ちゃん?」
そうやって振り返る…。
壁には…ところどころ焦げ目がついており…雲仙委員長の何倍もありそうな穴があいていた。
「あ…は…はい……。」
鬼瀬は信じられない表情を……。
この規模の大穴をあける…。
その異常性に驚いていたようだ。
「よぉー!エアオッパイ。オレここから出て行くつもりだけど?それでもとめてみる?」
指差して笑う…。
不知火は…。
「………いやあ、あたしが任されたのは【ここ】であって…【そこ】は…管轄外かな??」
引きながら…笑っていた。
笑うのは相変わらずさすがだって思うけど…。
今回は…いくら不知火でも、扱いずらそうだ。
「あっそ。お役所ゴクローさん!あー!鬼瀬ちゃん。ひとつ伝言頼まれて☆」
「え?」
雲仙は、音楽室から出て行く前に、そう言う。
「風紀委員会総員に通告……速やかに全員帰宅せよ。明日誰かに聞かれても自分は無関係だって言い張れるようにアリバイ作っとけ。」
そう告げると……。
再び出ていく…。
「ここから先は、男一匹雲仙冥利の…個人的な戦争だ!!面白えじゃねえか……。 学園から消す?へッ…こっちのセリフ…だ。」
不吉な言葉を残して……。