第68箱 「オレ達は怪物で…化物で…似たもの同士なんだからよぉ?」
その音の発生源……それはいつの間にか入ってきていた男……。
「いやー お見事お見事! 1年以上そのテクでやってきたけど初見で見切ったヤツ、そして タネまで見抜いたのはテメーらが初めてだぜ。」
風紀委員長……雲仙冥利だった。
「「「「………。」」」」
当然、皆が唖然としている。
そして……雲仙は入り口の鍵を違和感なく……それでいて、自然に閉める。
「勿論、ただのスーパーボールじゃねえ、それじゃあ流石に話しにならねーしな?素材に機を使ったりなんだ……。武器になるようそれなりに改良は施してあるがね。」
そう言うと……、裾の中から、無数のスーパーボールを撒き散らす。
「ほらよ。こうやって、服に仕込んでんだ。でもまあ、正体がわかればそれで終わりな子供だましだよ。言うなら手品みてーなもんだ。」
そういいながら、次々と出す……。
でもね……言いたいことがある!
いったい……。
「……どれだけ入ってるのさ……。っと言うか、部屋を汚さないでよ。掃除も大変なんだから。」
劉一が自然と突っ込んでいた。
「おいおい……劉一ちょっと、空気読めって。」
善吉が、雲仙に驚いているときに劉一のいつも通りトークが聞こえてきた為……ちょっと毒気抜かれてしまったようだ。
でも……善吉は思う。
(……コイツが、あの十三組の雲仙冥利!しかし、呼子先輩にあれだけハッタリをかましたってのに……直後に大将が敵本陣に乗り込んでくるかよ!……コイツはめだかちゃん張りにフットワークの軽さだな。)
そこのところだ。
ついさっきなのだ。
あのめだかちゃんと劉一のコンビの事件?があったのは……。
「…………。」
劉一も初めこそは、軽く突っ込んでいたが……今は違った。
めだかちゃんに攻撃したことがある。それだけでも、警戒する理由がある。
めだかちゃんは攻撃を受ける理由がない、ゆえによける理由がないって言うけど……。
そんな、会長だから……支えてあげなければ。
皆で……さ?
善吉、そして阿久根先輩も意図に気づいてくれたみたいだ。
……さっきあったこと、話してるからね?
そして、男子3人は、緊張感に包まれるが……。
「何?このヒネてそーな子供。全然可愛くないんだけど…?」
……………………って!
(空気呼んで!喜界島さん!!)
(僕もここまではできないよっ!)
善吉と劉一は呆れていた…… 苦笑
そんな時、
「手品の解説に来てくれたわけでもあるまい。何のようだ?雲仙二年生。」
めだかちゃんが切り出した。
「……そういえばそれ……壊しちゃったのはちゃんと謝るよ。ゴメンね?でも、君達も結構備品壊してるし。どっちもどっち……じゃダメかな?」
劉一は心当たりを……言っていた。
「ははっ、それはそうだな。だがしかし、それが理由じゃねえさ。それによ?弁償してもらおーにも、テメーの小遣いじゃ無理だぜ?相当な額だからよ。」
そう言って嫌な笑いを浮かべる……。
「相当な……額………。」
そういえば……僕、不知火にも満漢全席……中国の最高峰のフルコースを約束されてるし……
っと言うか、軽いノリで承諾しちゃったけど……よく考えれば…いや、考えなくても…そんなお金……無い……。
それにそれに……、
武器として改良をしてるっていってるし……。
風紀委員は武装しているのは知ってる。
最新の軍備を備えてるって…………聞いた。
だから、彼が言ってる相当っていうの……きっと一般人からじゃ…………。
「あ…う………。」
事後処理が………頭の中をめぐり………。
“ずず〜〜〜〜〜〜〜ん………”
地面に座り込んでしまった。
「あん?」
雲仙は流石に驚いた?のか、すっとんきょーな声を出していた。
「りゅういちくん……しっかりしてっ?お金…大切でしょ?やっぱり!わかってくれたみたいだけど、今はしっかり!」
もがなさんが……慰めてくれてる?……いや、きっと以前にお金より大切な〜〜って言った事だろう……。
頭を撫でてくれた……。
うん……ちょっと落ち着くけど……。
「むうぅぅぅ………」
めだかちゃんは状況が状況なだけに……、いつもの様なアクションは取れてなかったけど……。
なんだか、うらやましそう?に見ていた。 苦笑
「おいおい……何また、漫才してんだ?オメーら。」
さまざまなパターンがあるのかこいつら…?
ちょっと苦笑してしまっていた。
そして、3人は“はっ!”っとして、雲仙を見なおした。
それを確認すると……。
「……話は戻すがな。お前と黒神に興味があってな?学年は違えど黒神とは同じ十三組の仲間なんだしよ?【仲良くしようぜ?黒神一年生】そして……どういうわけか、【一組に分類されてる御剣一年生】お前は一組だが、オレと同じ匂いがする、オレ達は怪物同士で化け物同士……似たもの同士なんだよぉ。それで興味もっちまってなぁ。」
雲仙は両手を広げてそう言う。
「似たもの同士……って言われたら、すっごく違和感あるけど……」
ボソッ……っと。
めだかちゃんが!!
こっちをっ!!
「あ…!いや、何でもっ!」
あわてて否定!!
あの……お二人さん?敵?の総大将が乗り込んでるのにいつもの雰囲気はちょっとまずくない……? 苦笑
さっきの漫才といい……。
「はぁ。今のテメーを見てたら、あんな事したお前とは思えねえよ。」
半分呆れる。
「あんな事?」
善吉がそう聞いていた。
「んああ、コイツが壊したっていってたろ?コイツの事だよ。」
そう言って、放り出す。
それは……。
「これが…?さっきのスーパーボールか?」
善吉がそれを拾う。
拾ったそれは……【ボール】と言える形じゃなかった。
まるでそう……プレスか何かで、思いっきり潰した丸い残骸……。
「さっきも言ったと思うが、これは、武器になるように改良を施してな……特殊な方法で精巧に作られたものだ。それを御剣がこんな風にしちまってよぉ?……まあ、まず1つ、聞いてみたい事があるんだ。御剣よぉ……。」
そう言って雲仙は、劉一のほうを見た。
「てめーは、いったい【何】だ?」
睨みつけるようにそう言う。
その目を見た周りの皆は……寒気が一瞬走っていた。
冷酷な目をしていたからだ。
10歳の子供がこんな目をできるのか……?
っと思えるほど……。
「何……って言われてもね……。」
劉一はそう聞かれても困る。そういった感じに言っていた。
それを後押ししてくれたのが……。
「劉一は私の大切な男であり、信頼にたる補佐だ。そういった物言いは不快だ……な。」
今度はめだかが……雲仙をにらめつけるようにそう言う。
「それについては、オレも同感だな。オレの親友をそんな風に言うんじゃねえよ。」
善吉も…そう言う。
めだかのようににらめつけてはいないが……。
威圧に負けないようにそう言ってくれていた。
そして、他の2人もうなずく。
(皆……。)
凄くうれしく思う。
少ない時間だったのに……特に阿久根先輩や喜界島さんは……。
それなのに……。
「おおっと、言い方が悪かったか?でもよぉ……おかしいと思わねえか?お前らも。」
そう言い、今度は窓側へ歩き出す。
「コイツの身体能力は勿論の事だ。オレは見たわけじゃねえけど、以前の水中大会?にもしかり…… さっきの風紀委員44名ごぼう抜きにしちまった事……。、全てが異質なんだよ。【黒神をフォローする】そう言ったモンとは次元が違うんだ。だからか…?テメーが一組っていうのが違和感ありまくりなんだよ。」
そういい……窓に手を伸ばし……鍵をかける。
入り口にしたようにだ。
……いったいなぜ?
「……間違いなくテメーは同類の匂いだ。興味を持つのもわかるだろう?純粋な好奇心からだ。」
にやりと笑う。
「…………」
劉一は何も言わない。
いや、はっきりと言うなら 同類って言われるのは嫌だ。
めだかちゃんは兎も角…。
「はっ……、まあ、組を決めるのはトップ……行き着けば理事長だ。何を思って一組にしたんだか……。」
そういいため息を……。
「さて、それならば、疑問は私達じゃなく、理事長に聞くべきであろう。 用と言うのはそれだけなのか?」
めだかは表情をそのままに……そう聞く。
「へっ、そもそも用が無けりゃ来ちゃいけねーのか?案外冷てーこと言うんだなぁ黒神ぃ?仲良くしようぜ?オレ達は結局 怪物同士で化物同士……所謂似た者同士なんだからよ?」
両手を広げながらそう言う……
“ボトボトボト………。”
袖の中にまだまだ入っていたのか?
ボールがドンドン出てくるんだけど……。
「怪物……化物……否定したい単語ばかり言ってるね……。」
苦笑いしながら……散らばったボールを箒で掃いて一箇所に……。
「もう……だから、片付けるのだって大変なんだから……散らかさないでよ。はぁ…まだあるや……。」
あたりを見渡すと…。
一面一色!っとまでは言わないけど……足場が危ういほど落ちてるし。
「すまねえな?これは、オレの武器だしオレが管理するもんだから、出てく時には【綺麗消しとく】からよ?ボールを。」
そう言ってにやりと笑う。
慣れない笑顔だ。
「それにしてもよ……。御剣は最近知った同類だが、お前…黒神は違う。入学したときからだ。まるでかがみ写しのようだったぜ?」
……そんなこというけど、全然違う!! 苦笑
「…でも左右逆なんだろう?」
めだかはそう言う。
鏡写し……即ち字の如くだ。
だからこそ……。
「おうよ。そっくりだから相容れねえ。人間が好きなんだって?それも大がつくほどの。そして、他人の役に立つために生まれたとか言ってるらしいな。文字通りのお人よしって訳だ?」
歩きながら……。
そう言う。
そして、もうひとつの窓の鍵も……。
……いい加減、不自然を通り越す。
「……さっきから、何をしてるの?鍵とか閉めたり、ちょこちょこボールを蹴っ飛ばしたり。」
劉一が遮るように…そう言う。
「あん?ケケケ。テメーらといつまでも話したいからな?話が終わる前に出ていかれたら、結構傷つくんだぜ?案外俺はよ。10歳児だしな。」
そう言って笑う。筋が通るように……
それでも…ちょっとおかしくないか?
企みがあるのか?っとボールを凝視するけど……。変な感じはしない。
「それで話はもどすけどよぉ、お前のその考え方ズルくねえか?テメーは人間のキレーな面しかみちゃいねえ。人間を好きだとのたまう以上は嘘も裏切りも 罪も醜さも 妬みも未熟さも……そして争いも憎しみも、全てだ、全て人間の外す事のできねえ一部分だろうが。清濁併せ呑むのがテメーの主義なら、テメー好みに改心なんかさせてんじゃねえよ!!」
徐々にではあるが、声の質の割合が怒気に占めようとしていた。
「オレはよぉ!正義として悪を裁くが正義が悪より正しいと思ったことなんて、一度だってねえ!ルールで人を縛りはするが、それで人間が良くなるだなんて大それた事はおもっちゃいねえよ!!」
そして、めだかの前に立つと!
「言うまでもない!俺は人間が大嫌いだ。お前と違って、鏡写しだからな!だから当然!ちゃーんと嫌いだぜ?優しさも友情も!愛も奉仕も!ギリも平和も大嫌いだ!!それこそ誰彼区別無く正義の鉄槌を下せるってモンだろ?」
そう言い放つ。
「……」
劉一は……黙っていた。
確かに間違ってはいない。
私情に走って本当の悪を見逃すような事があれば……。
それを考えたら、そう言うのも間違いないのだと思う。
でも……。
「キミもめだかちゃんと同じ……だね?鏡写し、よく言ったものだと思うよ。」
そして、口を開く。
「正しすぎるって思う。どっちも…凄く。」
でも……。
決定的に違う。
「でも、僕は……“ガチッ…”え…?」
劉一は一歩…歩み寄ろうとしたそのとき。
雲仙の散らばしたスーパーボールを踏みつけてしまった。
それは…あの時のボールとは違う。
【ボールを厳重にシールしていた何かに】亀裂が入った音だ。
「ッ!!!!」
それを見て、悪寒が…体中に走る!
「皆!ここから…!この部屋から逃げてっ!これっ!違う!ボールなんかじゃない!爆弾だ!」
その叫びに直ぐに反応したのは勿論めだかだ。
叫びこそ劉一のほうが早かったが殆ど同時にそれに気がついていた。
微量な……火薬の匂いだ。
そして……。
雲仙は、不敵で…冷酷な笑みを浮かべていた。