小説『めだかボックス 〜From despair to hope 〜』
作者:じーく()

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第69箱 「罰は当人が受けるモンなんだよぉ。」



























劉一が叫んだと殆ど同時だ。

冷酷な笑みを浮かべていた雲仙は。

「はっはは!バレたみてーだな?オレは 化物が2人いるから厳重にコーティングした改良版を持ってきたってのによぉー!テメーはあんな簡単にわかっちまうなんてなぁ!嗅覚までサイボーグってことだなぁ!それに引き換えオレはダメだなー手品下手すぎだ!さっきの言い訳も苦しかったしよぉー!だがな、仕込みはギリギリ終わってる!」

袖から、今度は手に持ちきれないほどのマッチ箱を取り出していた!



「ははっ!それに黒神!テメーが甲賀卍谷ならオレは伊賀鍔隠れの里のしのびってわけだ。これは炸裂段『灰かぶり(シンデレラ)』!実はな!スーパーボールよりこっちの方が オレの本筋でな。一個ありゃ老朽した壁くらいならヨユーでブチ抜けるシロモノだ!」

持ちきれない程のマッチ箱を撒き散らせながらそう言う。


「ッ!!」


劉一は、まず無数の爆弾(ボール)に驚愕する。

床面余すことなく転がっているのだ。

一つで壁を壊す……。

これらが全部爆発したら……。




「…………密閉状態の部屋でそんなの爆発させたらキミもただじゃすまないよ。」

もがなも……冷静に見ていたが、冷や汗は止まらない。

そして、

「そうだ!子供っぽい脅しはやねろ!悪ふざけにしても度を越している!」

阿久根先輩もだ。

だが、そんな言葉は……。

「テメーらニュースとか見てねーのか?ダッセエな 最近のガキは何考えってかわかんねーんだぜ?」

聞く耳を持たない。


「さーどーするお前ら?こっからオレを見事改心させてみるんだろ?補佐のテメーも会長の方針にゃー下側ねえとなぁ?それともお願いしてみるか?『やめてください』ってよぉ?」

火をつけようと構えた。

「………やめてくだ「おせェよ」ッ」

めだかがそう言おうとした時!


“ボォッ!!”


火をつける!!

が………。




「ッ!!!」




“ボッ!ヒュッッ!!”





「はぁっ?」

雲仙は驚く!

なぜなら……火をつけたはずのマッチ棒が消えているのだ。

それだけじゃない。

「なん……だ?(いきなり突風が吹いてきやがった……。)」

そう、突風で火が消え……そして マッチ箱も吹き飛ばされていたのだ。

「………テメエか。補佐ぁ。」

雲仙は、突風が来た方向を睨みつけるように見る。

そこには……怒りを表し拳を突き出した劉一がいた。

「……。いい加減名を覚えてほしいって思ったけど、それどころじゃないね……。」

劉一は、突き出した拳を構えなおす。

「……友達なんだ。皆。」

そう言って皆を見渡す。

「僕の……大切な…… そして 僕を救ってくれてる友達なんだ。……傷つけるって言うなら……絶対に君を許さない。」

拳を……雲仙にロックオンしたように構える。







「りゅういちくん……」

もがなは…ちょっと驚きながら……そして顔を赤くさせながら見ていた。

命を救われたって言っても過言じゃないのだ。

「キミの凄さはしってるつもりだったけど、やっぱり凄いね。助けられたありがとう。」

阿久根先輩も礼を言っていた。

「うん……。」

劉一は、雲仙から目を離さないように、返事を返した。

「流石だ。劉一、私からも礼を言うぞ。」

警戒をしながら、めだかも劉一の傍にやってきてそう言う。

「だが……喜界島同級生を誑かすでないぞ!」

当然!……いつも通りに…… 苦笑

「……うん。勿論だよ。」

劉一は、ただ相槌を打つ程度で、こちらはいつも通りじゃなかった。


「劉一……。」

そんな中……善吉だけ、なぜか不安な表情でいた。



そして…。

「ははっ……テメーはやっぱハンパねーな。化物の男……。大化物ってとこか?拳圧だけでここまで離れた火を消すのか?いや…風を操れんのかよお前は。」

雲仙は驚愕な表情こそ…していたが、既に消え……笑みを浮かべていた。

「……そんなの もうどうでもいいけど。どうするの……?……今度は外さないよ。」

そう言って睨みつける。

「そうだな…… 手品ってのは種を見抜かれたらそれまで、幕を下ろさなきゃなんねーしなぁ。しょうがね〜か。」

雲仙はしゃがみこんだ。




「……何してるの?」



劉一はそんな雲仙を見ながら言う。

「あん? 片付けてんだよ。これ。」

何言ってんだ?っといわんばかりに言う。

「…………」

劉一は黙っていた。

他のメンバーも同様だ。

「お前はしらねえかもしれねえが、【コレ】だって額が結構するんだぜ?もう 爆発できねーってんなら、片付けなきゃなんねーだろ?しらねえの?燃焼の三要素ってやつ。火がねえと燃えねんだ。だったら処理しとかねえとな。お前らに武器を渡すわけにもいかねえし。」

そう言って、ボールを集めていく。

「本当に……?」

劉一は、確認するようにそう言う。

「あー勿論だぜ?最近のガキは何考えてんのかわかんねーかもだが、間違っても自殺願望がない限り、こんな至近距離で爆発なんざさせねーって。生憎オレ様は10歳。まだまだ若い美空なんだよ。」

凶悪な笑みでそう言う。

そして……


“パラパラパラ…………”


雲仙が大量に拾ったボールが、やはりいくつか落ちて転がり……。

劉一の足元へ行った。

「おっ?わりい。いつもはふっ飛ばしてんだが、これを集めるなんてパターン無くてよ?」

雲仙は拾い集めながらそう言う。

どうやら、拾った爆弾は袖の中にしまっているようだ。

「……そう。なら……。」

劉一はボールをつかむ。

「僕も手伝う。だから、こんな物騒なの早くしまって。」

そう言った。

「ははっ……サンキューなぁ。【助かる】ぜ?」

そう言って笑う。

劉一は……籠を取り出してそこへしまってゆく。

「劉一私も手伝おう。」

そう言ってめだかがくるが……。

「大丈夫だよ。僕だけでも、いや…彼と僕だけで。」

劉一は首を横に振る。

そして、目はめだかの方を見て………

いや、見つめてした。

「ッ…… そうか、わかった。」

めだかは、そう言うと、他のみんなの方へ。



「どうしたんだ?めだかちゃん。」

善吉はまだ不安そうだったが、素直に聞いていためだかにそう聞く。

「……劉一は 雲仙二年生を信用してないようだ。だから、危険が無くなるまで【皆を頼む】と言っておった。目で……な。」

そう言って善吉の方を見る。

狭い密室……。

まずは、入り口の鍵を開けにいく。

逃げ道をふさぐ様に雲仙が閉めたものだ。

窓の方も動揺にだ。

阿久根先輩が行ってくれた。








「へぇ〜 オレって結構信用無い見てーだな。」

雲仙はそう言いながら部員達を見る。

劉一の意図に気が付いたようだ。

「勿論だよ。……ここを爆発させようとした人を簡単に信じれるなんてこと……僕は出来ないし、めだかちゃんにもさせない。……たとえ、会長の方針でも…ね。」

劉一はそう言う。

「へー 大したもんだ。テメーは精神が弱そうだって いう風に、報告受けてたんだけどなぁ。」

ケケケっと笑いながらそう言う。

「……否定はしないよ。でも、時と……場合。状況によるよ。」

静かにそう言い返し……。

爆弾拾いを再開する。




そして




粗方拾い終わったようだ。


「わりーな。拾ってもらってよぉ。」

まだまだ、凶悪な笑みを崩さない雲仙。

「いや…いいよ。校則違反の件は僕から謝っておくから。罰があるなら僕が受ける。」

そう言う。


「ちょッ!」

「劉一!」


めだかと善吉が殆ど同時に反応した。

「ケケケ…健気だな。オメー1人被ろーってか…。」

雲仙は笑っていた。

「今時はやらねえぜ?そんなのはよ?」

そう言う。

「………。」

劉一は何も言わず、ただ雲仙を見ていた。


「それよりよー、あそこにも落ちてんだけど。アレもとってくれねえか?」

雲仙は指をさす。

その先には……棚があり、その下の隙間にいくつかもぐりこんでいたようだ。

「うん。わかったよ。」

劉一はそれをとりに向かう…。



そして……。




劉一が、それをとり……雲仙の方に向かった時。

「ああっと……言い忘れてたぜ?」

雲仙は、劉一の方を見る。




「オレに賄賂や言い訳が通用しねえ。そして、勿論。テメーがさっき【そう言った様な類】…もなぁ。」

笑顔だ……。本当に……凶悪な……




その時!!









“ドゴオオオオオオッ!!!”








教室に爆音が響き渡った。


「へっ…罰はなぁ罪ってヤツは当人が受けるべきモンなんだよ。他人が変わりに被るとかありえねえんだよぉ。」

そして……雲仙の言葉が……。

だが、皆に聞こえたかどうかはわからなかった。












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めだかボックス 第5巻 [Blu-ray]
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