小説『めだかボックス 〜From despair to hope 〜』
作者:じーく()

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第71箱 「テメーの負けだよぉ……御剣ィ!」



























衝撃波の様なものが雲仙を貫いた後に、

その軌道上に雲仙も吹き飛び……。




“ゴッシャアアアアアアッ!!!”




3Fの校舎の壁に激突した。


「……1発でももつかどうかわからない…と言ったが、どうやらもったようだな。命があるようだ、なら そのまま死んだふりでもしていろ。死者に襲い掛かるほどまでには暴走していないようだからな。」

拳を振り切ったまま雲仙にそう言う。



“ガッシャ………。”



雲仙は1Fに落下する。

貫かれたとはいえ、それは腹部のみでまだ他の部位は白虎に覆われているため 落下のダメージはそれほど無いようだ。

だが……。

「け……けけっ、もつか…わからねえだと…?ぜん…ぜん余裕だ…。痛くもカユくもねーってんだよ…ボケぇ!」

虚勢をはっているのは目に見えるが…。

彼なりのプライドがあるようだ。

だが、文字通り衝撃は隠せない。


(この…やろう…おかしいじゃねか…… こちとらゴムの塊と全くかわらねえ衝撃吸収剤を着てるってんだぜ…それを貫いちまった…?それも一撃でか?こいつ……コイツの拳はミサイル……か?)

腹部をさする……。

服がちょうど拳大に穴があいているのがよくわかった。

一点に凝縮した破壊……。

もし、着ていなかったらと考えたら背筋がぞっとする……。


「ふ……む…… あくまでも戦争を望むか。それ程ダメージがあると言うのに、大したものだ……。」


劉一は雲仙が虚勢をはっている。

と言う事はわかっている。


………自身の鎧は砕け、そして武器も通じなかった。


そうなれば 繊維を喪失してもおかしくないのにだ。

その事は、その精神力は純粋に敬意を持つ……が。



「………残念だったな。今のオレには通じないみたいだ。……お前はやっちゃいけないことをしたから。」



雲仙の前に指を出す。



「1つ……仲間達……友達を傷つけようとした。あの刺客を送った事も叱り……だ。」



そして指をもう一つ立てて…。



「2つ……初めの爆発の時だ。お前は……信頼を裏切った。は………信じていた方がバカだと思われるかもしれんがな。」



生徒会室でのことだろう。



「3つ………。」



劉一は……目を瞑り……

見開く!!




“ギンッ!!!!!!!!!!”




「グァッ!!!」

雲仙は飛びのく事ができない。

だから、まともに威圧されてしまう。




「【俺】を起こしてしまった事だ。今の【俺】をなぁ!!」




劉一のバックに不穏な空気が逆立つ。

周りの空気が……震える……。


「へ……へっ!起こした?なんだお前…スーパーサイヤ人にでもなったってことか!?バカがッ!」


雲仙はこらえながらそう返す!


「……言い得て妙だ……。怒ってるんだからな!屠ってやるよ……。」


その目は冷徹で……人間の目じゃない。

皆が…そう感じた。


「……ケッ、なーに言ってやがる!そんな言葉にビビらされるオレだとでも思ってんのか!?返り討ちもいいトコだぜ!!」

雲仙は構えながらそう言う。

気おされている……威圧されていると言うのに闘争心は全く衰えていない。

心は折れてないようだ。


「折れる必要は……無い。初めに言っただろうが……粉々にしてやるってよ。」


劉一はそう一言呟くと……

ゆっくりとした足運びで雲仙に近づいていった。


(っけ…とは言え屋外に飛び出たのは不味かったな、スーパーボールにしても炸裂弾にしてもこれは屋内専用だ。開けた場所だったらどう考えても威力も効果はも半減しちまう。)


裏腹に考えていた事はそれだ。


予測をするのが限りなく不可能なほどの弾幕・跳躍のスーパーボール。

そして、破壊力は群を抜く炸裂弾。

どちらも密室で最大の効果が得られるものだ。

スーパーボールは壁・天井・地面……面の数があるだけ、それだけ跳躍する。そして威力も増す。

何も無ければ一直線にぶつけるしか出来ない。軌道を読まれたら即アウトだ。

爆弾はボールに比べたらマシだが、密着状態でもへっちゃらなヤツを相手取るのなら話は変わってくる。


(ここは一旦詫び入れて体制を整えてから出直すってのもアリだとは思うが……だめだな。)


雲仙の頭を過ぎったのは……委員会のメンバーの顔……。


(こんなオレでも風紀委員会の看板を背負っちまってんだ!風紀委員会は正義!ゆえにテメー今この場で取り締まらねえ理由がねえ!!)


覚悟を…決めた!!


「へっ!!いいだろう!テメーが怒り任せて暴れる【獣】っつーなら!オレは人間のように戦ってやるよ!テメーらが大好きな人間のようにな!!」


指を刺しながらそう言う。


「獣……そんな生易しいものに物に見えるってんなら、とんだ幸せ者だお前は。」


劉一は…歩きながらそう言う。

拳を……握り締めて。


「……【めだか】と同じく【オレ】も人間は好きだ。【それ】は間違いない。【オレ】を救ってくれたのも人間だからな……。」





“グ……グググググ……。ゴアアアアア…………。”





圧縮されてるかの様な拳は不穏な気配を纏いだした。


(ケケケ……どっかで聞いたことあるな、【握力×体重×スピード=破壊力】ってなぁ。頷けるわアレ見たらこの服がこうなるのもなぁ。)


雲仙は劉一の拳を見てそう思う。


「ははっ!!先輩としてテメーに忠告してやるぜ!!正しい正しくないに関わらず!正義は必ず勝つんだよぉ!!」


“バッ!!!”


雲仙は飛び出した。

先ほどとは違い一直線に劉一の方へと。


「………。」


劉一は、それを無言で見届けると、完璧なタイミングで振りかぶる。

雲仙にはそれはまるでスローモーションの様に見えた

……それを見てどんだけのスピードで動こうが、フェイントをかまそうが無駄だと十分に悟る事ができた。


(まずは、第一段階だな、あのミサイルの様なありえねーパンチを…)




“バババッ!!!”




雲仙は、特服……白虎を素早く脱ぎ去る!




(あえて……喰らうッ!!)


“ドゴンッ!!!!!!!!!”




「がはああああッ!!!」


白虎を前面に出し、盾の様に使用したのだ。




“ドゴオオオオオオオオッ!!!!!。”




そして、校舎へと吹き飛んでいった。
















【校舎内】



「ッ……あっ……(わかっては…いたが、どんだけだよ……完全におしゃかか…特服がよ……。)」



ズタボロになった服を…投げ捨てる。















「……着ている物を脱いだのは驚いたな、おかげで攻撃に集中できなかったせか、威力半減だ。」


劉一は、腕を振りながら…そう呟く。

そして……奥を見ると…



“け……けけ……けけけけけ………。”



虫の息…のようだが、笑い声が聞こえてくる。

どうやら…「……入ってきてみろ。」っと言いたい様だ。


「ふん…… 小賢しい真似をしたもんだ。でも答えてやらないとな……さっき、約束したから。」


劉一は、上半身のボロボロの服を破り捨てると…。


「粉々にしてやるってな……。」


そう言いながら向かう。


「ま……まてっ!!劉一!!」


そこへ聞こえてきたのは、めだかの声。

そして、


「劉一……まってくれ!!」


善吉も……だ。




「…………。」




劉一は、一目、2人を見る。



「「ッッ!!」」



めだかと善吉は……思わず目を疑った。

あの……優しい劉一の目じゃないから……。

大好きな親友……劉一の目じゃなかったからだ。

はじめてみる……目だった。





「……やっぱし、見られたく無かったよ。皆に…2人に。」


そう言うと、目を…完全にそらせた。



「これが、【オレ】みたいだ……だから、あの時劉一は目の前から姿を消したんだろう。……普段の劉一だったら心がもたないから。」



そう言う。

そして、体に手を当てる。



「……いや、違う。……オレは劉一?違う…。じゃあ……だれだ?わからない………だが、まだまだ、わからない部分もある……。今より深い…もっと深い闇の様なものが、オレの中にある。それも出てきたらオレは…どうなっちまうんだろうな。………今のオレは2人が知っている劉一じゃない。……そう思ってくれ。それが、せめてもの救いになる……。」

劉一は、そのまま歩き出した。


「会う資格なし……か。強ち間違っていなかったな………。」


そう呟き……校舎内へと消えていった。




「ッッ!!!」












【壊れた校舎】









奥にいるのは、ボロボロの雲仙だ。

「……これがお前の策か?小ざかしいを通り越して呆れる。この程度なのか?お前は。」

見下ろしながらそう言う。

「はっ……ナメてんじゃねえ!オレはな!箱庭の十三組で1年以上生き延びてきてんだよ!それになぁっ!クラスにゃテメーレベルのエキスパートも決していなかったわけじゃねえんだ!!」


取り出したのはスーパーボールだ。



“ドガガガガガガガガガガガガガッ!!!!”



「おらああ!!!あの会長はここにゃいねえが!!受ける理由はもうあるんだろうが!避けれるなら避けて見やがれ!!!」


無数のボールの弾幕が全方位から襲い掛かってくる。


「……軌道の一つ一つを計算に入れて投げてると言うのは大したものだとは思う……。」

全てに目をやる。



“ババババババババババッ!!!!”



劉一は弾幕の全てを見切りかわしていた!

「貴様はさっきまで何を見ていたんだ!?この程度のスピードと弾幕でオレを捕らえられるとでも思っていたのか!!」

全てをかわすその動きは追う事ができない。

それ程のスピードだった。

劉一は勿論受け止めることも出来たがしなかった。

なぜなら……。


「……猶予だ。これが止んだとき、それが、お前の最後……。……精々余生を楽しめ。」


と言う事のようだ。


声だけが聞こえる。

表情は見えないのだ。

早すぎてブレてしまっているからだ…。

反対に雲仙の表情は……。







【笑み】だった











「ああ…楽しませてもらうぜ?この【瞬間】を存分によぉ…テメーの【負け】だよ御剣。」














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