小説『めだかボックス 〜From despair to hope 〜』
作者:じーく()

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第73箱 「困ったら迷わず選ばず目安箱っだよ☆」


























めだかはその劉一の言葉を聴いて……まだ、立ち上がれそうに無かった。



「りゅッ……いち……!!」



めだかは……あの時のことが、トラウマなのか…上手く体が動いてくれないようだった。


「め…めだかちゃん。わかるか…?」


善吉もそうだったが、まだめだかよりは気がはっきりしていた為か話しかけれていた。

それ以上に……めだかの顔…を見ていられなかったから……かもしれなかった。

「今のアイツには……お前と【同じ感じ】がするんだ。乱神モードのめだかちゃんと。劉一もお前と同じって事だ。人格を剥がされたら……ただの力の塊。暴風雨のように全てを根こそぎ破壊してしまうような……。そのリミッターの……タカがオレ達だったんだ……。」

そう言う。

「りゅう………いちくん。」

「ぐ…」

もがなも阿久根先輩も……出てくる。

劉一の姿を見たのは二人だけではなかった。


「めだかちゃん……オレは、アイツの傍に…いる!もう……二度とどこへもいかせねえ!あの時会って、あの保健室で考えていた事だ!二度も失うなんざゴメンだ!」

善吉はそう言うとスッと立ち上がる!

「……阿久根先輩や喜界島はどう思う?」

そして2人を見た。



「「………ッ?」」



「アイツと付き合えばこう言う事はこれからも起こるかもしれない。……一度おきた。二度起こらないなんてわけがねえんだ。……【闇】あいつが言ってた事だ。何が飛び出てくるかわからないパンドラの箱みてーな。……もし辞めるのならここらが潮時かもしれねえ。」


その言葉を聴いて……2人は驚き……驚愕していた。


「オレは……もう決まっているから。」


善吉はそう言って拳を握り締めていた。























そこは崩れた校舎。

辛うじて崩落はしてはいないが時間の問題……なのかもしれない。

「……防御は完全に崩され……攻撃は全く通じず……しまいにゃ、切り札は全く切れやしねえ……情けねー話だが、オレには何にもものこっちゃいない。でもな……」

雲仙はにやりとすると……劉一の目を見る。

「なぜならオレはてめーらに負けたなんてこれっぽっちも思っちゃいねえ、何故なら、オレはテメーは勿論、黒神がきたとしても、全く心を動かされてねえからだ!信念曲げるっつってったけどよ……根っこはそこにあんだろ……?テメーらは改心なんざできやしねえんだ。テメーは曲げたと言っても、それを掲げてる会長……黒神にとっては完全な敗北だろう…?」

そう言う。

「テメーはオレより強かった。だがそれだけだ。それだけでしかねえ、正しかったわけでも優れていたわけでもねえ!他のすべてを手折られようと……お前とは違う!オレは信念を曲げたりしねえ!オレは明日からも何も変わらずこういい続けるぜ?オレは……【人間が大嫌いだ!!】」


そういいきった。


「耳が痛いな、耳障りだ。口を開くな、それにお前は勘違いしてるぞ……。オレはオレとして、お前を潰すだけだ。めだ……黒神とは関係ない。生徒会ももう関係ない。オレは消えるんだからよ。ただ、お前が手を出してきて……それでオレがお前を潰すだけだ。あいつらの敗北はありえないんだよ。今回のは……ただの事件だ。……勝ち負けなんざねえ。」

そう言いながら、雲仙の眼前に拳を構える。


「ほーう……そりゃ失礼。お前個人のってことだったか。初めと変わってることなんざ知らなかったぜ。」

雲仙はまだ余裕の笑みだ。

絶望的な状況には変わらないと言うのにだ…。


「じゃ、もう潰しちまいな。ただの事件なんだろ?あいつらとは全く関係無いんだろう?あいつらの為にはなるんだろうがな……。間接的に大好きな人間を守る為に、あいつらを守る為に、オレを排除してみせな。」


「言わずもがな……。見上げたものだ。ここまで来てその器量とはな。……だが、振り上げた拳は収まらない。じゃあな!」


拳がさらに圧縮していくのがよくわかる。

空間がゆがんで見えちまう程に……。

(今は目が霞んでるからかもしれねえがな……)

苦笑いをしてしまう。

そして、振り下ろされる時間がスローモーションのようだ。

(へ……お前は口ではそう言っているが後々によく考えるんだな、あいつらは関係ねーっつってるが、逆にあいつらはどう思ってるのかをな……。そんな感じで割り切れる連中じゃねえだろ…?【友達】を傷つけられるのが何よりも嫌う……か、その友達にトドメをさしちまうのがお前なんだよ。)

雲仙はそう考える。

(そして、絶望しちまうだろうな……、人間にもよぉ……好きっつうのが逆転するほどにな…。あわよくば、オレになる事を祈るぜ?やりすぎの正義を受け継ぐ事をよ……。)


スローモーションとはいっても、身体は動かない。

そして、拳も止まらない。

最後の時が来たようだ。



拳が……


もう目の前に来た。


その時!!





“ガシッ!!!!!”





身体中を掴まれている感覚が走る。


「やめろ……劉一!やりすぎだ。」


その声は……聞き覚えがある。

誰だったか……。

「劉一……。」

また……この声って……。

心が安らぐ。

思い出した。

何で忘れていたのかがわからない程だ。


「……離せ。お前ら。……これ以上関わるのは嫌だろう。」

劉一は……静かに……それでいて、低く…重く…そう言う。



「嫌なんかじゃない!!二度も…貴様を失う方がよほど嫌だ!もう……貴様とは離れたくない!あの時…の様にな!!」



めだかがそう言う。



「それはオレも同じだ。この13年……をまた繰り返すのか?そんなのが絶対にゴメンだ!」


善吉も……。


「あたしだって……嫌なんかじゃないよ!関わり続けたい!りゅういちくんにも!皆にも!」


「オレは、めだかさんや人吉くん程君を知ってるわけじゃない。だが!今までの君と言う人間を見てきている。嫌なんか1mmも思わないし思えない!……オレ達は君の仲間で生徒会だ!」



もがなも……阿久根先輩も……。



「……お前らは、わかっていない。御剣……いや、【劉一】と言う男をな。」


自分と劉一は違うと言うような話し方だった。


「劉一の闇は、そこが見えない。今回は【オレ】が出てきた。今後は……どうなるのかわからないんだぞ?偶々、良い方…とは言えんが、この流れになっただけだ。次は……」


最後まで言おうとしたとき!





“ギュ………!”





めだかが正面から抱きついた!


「わからないなら!これから知ってゆく!お前を含めて劉一を!お前は私達を守ってくれた!そんな男を嫌だとは決して思わない!どうなるのかわからなくたって……劉一は劉一だ!もう……1人にしない!」


めだかが……そういいきる!


「オレ達も同じだ。お前がなんといようと…。オレ達はお前を……劉一をもう1人にはしない!絶対に!!」



善吉も……。


「………………。お前らってのは…………。」




“ふぅ………”




ため息を……そして、

殺伐とした空気を纏っていた空間が消えてゆく………。



そして……。




“ドッ………。”




劉一は……力なく、仲間達に身を任せるように……崩れ落ちた。



















そして……

「劉一……。」

めだかが抱く力を強める。

その後……劉一を抱えたまま、雲仙の方を見て、




「雲仙二年生。貴様、生徒会に入らないか?」


「「「はあ!!??」」」


雲仙よりも先に生徒会メンバーが声を出していた。

ついさっきまで死闘をしていた相手だから……。

突然の提案だからだ、仕方ないだろう…… 苦笑


「………あ?」


そして遅れるように雲仙が……。


「もともと、副会長には私に敵対的な者が就いてもらいたかったのだ!不知火には断られたがな。考えてみれば、劉一とそこまでやりやった男は見た事がない!そして、劉一は私の補佐……それを敵対する!そして張り合える!適任ではないか!」


いつものノリで……。


「で…めだかちゃん!劉一のッ!?」

善吉が思わず割り込む!


「劉一の事もあって…だ!今の劉一は私達を信じられないと言った様子だった。私はそれが悔しいのでな、雲仙二年生が副会長をしてくれて そして劉一が私の補佐をしてくれる。その関係を上手くしてゆけるようにできれば…、これ以上ないだろう!信じるしかないだろう!」



天晴れの扇子を持ちながら……。

それを聞いていた雲仙は…。



「っざけんな!オレは風紀委員会会長だぞ!!誰とでも仲良くできると思ってんじゃねーよボケ!!」



申し出を一蹴。


「…………そうか、それは残念だな。だが、私はこれからも誰とでも仲良くなれると思い続ける。初めは怒りでどうにかなりそうだった。それは私の落ち度。日々精進せねばならないことだ。劉一にもやりすぎたことをよく言っておく!」


そして離れる。

「行くぞ?劉一をこのままにしてはおけんだろう。」

めだかはそう言う。

「そうですね、身体のほうも心配ですし……めだかさんも大丈夫なんですか?」

阿久根先輩がそう聞く。

「うむ、そう言う私も爆発の時にな、骨が折れたり、火傷……少々怪我を負っておる。まあ、私も病院だな。」

「「ええええ!!」」

そんな状態で少々??

劉一ほどじゃなくても、めだかも十分なけが人だったようだ。



そんないつも通り?な光景を見た雲仙は……。




(あそこまで…暴走しておきながら、戻った?意識を無理やりに絶ったってわけか?んな事、出来るわけないがそうとしか……だが!あのレベルまで暴走してる状態で、自力でOFFになんざできるわけねえ!つまり……戻されたが正しい……だとしたら…。)


思い浮かぶのは善吉と……めだかの姿。


「雲仙先輩。」

そこへやって来たのは善吉だ。


「正直に言えばオレはアンタがそれ程間違っているとは思わないんですよ。オレだって別にそんなに褒められた人間じゃありませんしね。めだかちゃんと同じくらい正しい、正しすぎるって思いますよ。なら後は好みの問題でしょ?」


そう言うと、


「オレや劉一はアンタよりめだかちゃんの方が好きだ。だから、あそこまで劉一は頑なだったんだろうさ。」


そう言うと……立ち去っていった。











残ったのは雲仙のみ……。

じゃ無かった!




「委員長!!」

「雲仙委員長大丈夫ですか!?」



暫くしてやってきたのは……。風紀委員の…。


「テメーら……帰れっつっただろうが。ボケ!」

呆れるようにそう言う。

「帰れませんよ!あんな状況から……ってなんですか!?この状況!!黒神さんは??他の生徒会の皆さんは!どうしたんです!?」

鬼瀬はそう聞く。

そして、呼子副委員長は雲仙の身体を支えた。

「あーもういいよ。生徒会執行部は取り締まり対象から外す。あいつらはただの仲良し軍団だ。制服改造の件は大目に見てやれ。」

雲仙はそう言うと……。


「そんなことより、気ィ引き締めろよテメーら。このザマじゃ、オレは暫く戦えねえ。風紀委員長が倒れたとあっちゃあ 暫く荒れるぜ?この学園。箱庭学園の平和はテメーら双肩にかかってると自覚しろ!いいな!!」

ビシッ!っとそう言うのを見ると本当に……委員長って感じがする。

容姿はあれだけど…… 苦笑

そんな言葉を聴いた2人はただ、敬礼をするしかない!


「「はいっ!!!」」

その返事を聞けたのを確認すると…。


「ケケケ!よーし いい返事だ!」

満足したように……そう言う。

そして、他に思ったこと……重要な事だ。


(それにしても、マジ心配だぜ、生徒会執行部。このオレを退場させたことの意味をわかってない。いくらあの怪物でもただじゃすまねーぜ…?ふぅ……)


なんだかんだで先輩なんだな。

心配してしまうのは……。


最後には軽く苦笑いしていた。





















場所は変わり……。


【理事長室】


「雲仙君がしばらく戦線離脱ですか………困りましたねえ。『十三組の十三人』は1人でも欠けちゃあダメなのに……。このままでは私の計画が破綻してしまいますよ。どうすればいいと思います?【袖ちゃん】。」

1人の老人が……そう聞く。

聞いている相手は……。

「どーもこーも!別に悩む必要なんかないって【おじいちゃん】!いやさ!箱庭学園理事長不知火袴総帥!困ったときは迷わず選ばす、目安箱に投書すればいいんだよ!」

不知火だった。

親戚……なのだろう。

以前も劉一が言っていた。

「それよかおじいちゃん?」

「ん?どうしましたか?」

不知火……半袖が聞く。

「劉一〜なんだけど、なんで一組なのかな?って。雲仙委員長を潰しちゃったの実際劉一だし?もう普通(ノーマル)なわけ無いと思うんだよね?」

むしゃむしゃと頬張りながら…。

「ふむ、彼については、色々と検討していたんですが……敵対するのだけを避けるように一組に入れました。彼自身も今の生徒会……黒神さんや人吉君との接触は避けるとおもいましてね?まあ……入ってしまったのは少し誤算ですが。」

そう言う。

「そして……なにより、サイコロ占いの結果が、【普通】だった。と言うのもあります。……今思えば意図的に回避した……ともいえたかもしれません。十三組に入ることを。」

袴はそう言う。

「へー…!あひゃ☆劉一だからね〜それくらいやっちゃいそう♪ そう言ってもはぐらかしそうだけど!」

笑う…。

「あ〜あ!満漢全席…また今度だね〜多分むりでしょ?」

笑いながらそう言う。

「あの〜袖ちゃん??彼のお小遣いは一応、施設の長である私ですからね??あまり無茶はしないでほしいって思いますよ??」

やれやれと笑う。

「あっひゃっひゃっひゃ♪ 無理かな〜〜だって劉一だし☆」

半袖は終始笑顔だった。





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