小説『めだかボックス 〜From despair to hope 〜』
作者:じーく()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第74箱 「お前は何も悪くねえ!オレが保障する!」



























それは、善吉が劉一をおぶって病院へ向かう途中……



「うっ……ん…………。」


背から……声が聞こえる。

劉一が……目を覚ましたのだ。


「劉一っ!」


それに直ぐに気がついたのは後ろにいためだかだ。

すぐさま駆け寄る!

「よかった。気がついたのだな?」

満面の笑みだ。

でも……劉一の顔は優れない。

「劉一…?大丈夫か?」

善吉も……心配そうにそう言う。



さっきの劉一は……。

あの話し方だったら、恐らくは別の人格なのだろう。

そう解釈した。

二重人格……そう言う事例は多々あることだ。

主にそう解釈していたのは阿久根先輩とめだかちゃんだが……。

だから、今の劉一は……恐らくあの事を覚えていないのだと……。



「……僕…は………。」


劉一は……呟く。

そして、善吉には直ぐに異変に気がついた。

その身体は震えていたからだ。

「りゅっ…りゅういちッ!?」

善吉は直ぐ劉一をおろし、座らせた。

「おい!大丈夫か?しっかりしろ!」

身体に異変があるのか?

アレだけの力だった。

そんな代償があっても不思議じゃないほどだから無性に心配になった。

それはめだかも同様。

「りゅういち……」

頭を撫でながら……そっと抱きかかえる。

そして……劉一は……震えながら話し出した。

「めだ……かちゃん…… ぜ……ぜんきち…くん……みんな……僕……ま……またっ……」

震える声でそう言う。

【また】……その意味は直ぐに理解は出来なかったようだ。

だが、後の劉一の言葉で理解する。


「あ……あの時だって…… 僕……こんな風になって………わからなく……なって……ま……また……傷……つけて……」


【傷つけた】


その言葉から……めだかと善吉はすぐに思い出した。

あの時……劉一が話してくれた過去の話……



13年前の………。



長い年月をかけて……心の隅へと追いやった罪悪感が……再び……劉一に……。


「うっ……うあ……うああああああああああああああああああああああああああっ!」


劉一はめだかの胸の中で……叫び声をあげた。

「りゅ……劉一っ……!」

めだかはその悲痛な叫びを……慟哭を間近で聞いて……あの13年前……劉一がいったいどんなおもいだったのかが……わかった気がしていた。





劉一という男について……。

それは、どういった経緯を持つ男なのか……

それは一切知らなかった。

だが、初めは勿論興味があった。

それはそうだ、自分を……退ける相手などこれまでにいたためしがないのだ。

どんな者であってもだ。

視野が狭かったのかもしれないが……、あの時は本当にそう思っていた。

そこでめだかは、

瞳先生に聞いたり、劉一自身にもそれとなく聞いたが、

劉一の深いところまではわからなかった。

ただ……瞳先生は……。

(私はね……劉一は……きっと幸せになる為に、ここにきたんじゃないのかなっ?って思ったのよ。初めて会ったあの時の目を見て……。そう思ったの。全部理解してる。今の自分の状況は理解してる。そう言う感じだった。でも……やっぱり、幸せになりたい……そう叫んでるような感じもしたんだよね。だから、めだかちゃん。善吉ちゃんは勿論、劉一くんもお願いね……?)

……そう言っていた。

優しい表情で……。



それなのに……持って生まれた異常性のせいで、人を傷つけると言う反対の事をしてしまって……

心に深い傷をつけてしまった。

それが……13年前の黒服たちの襲撃事件だ。


あの時と……同じ状況…?

なら……劉一は……ま……また………。

さっきの……【劉一】が……言って……いたように…?



「りゅういち……りゅういち!あの時とはちがう…ちがうっ!今は……わたしが……わたしたちがついてる!だから……だから………ッ!!」



めだかは抱きしめる力をあげた。

包み込む…ように、

それは…ただいつもの様に力任せに抱きつくのではないようだ。

「あ…………っ………。」

劉一は……。

今回はあの時とは違う感じがした。

あの時は……。

こうやって抱きしめてくれた人はいなかった。

こうやって……

寄り添ってくれる人たちはいなかった。

ただ……1人で抱えてしまっていた。

蹲って……蹲って……それで13年もの時が過ぎていた。



「劉一!お前は……お前はオレ達を助けてくれたんだぞ!何も悪い事なんかしてねえ!お前は悪くねえ!オレが……【家族】のオレが保障する!だから……だからよ!!」

善吉も……傍でそう言う。

「あ……っ」

こうやって……力強く言い聞かせてくれる人も……。

「りゅういちクン……」「劉一クン。」



こうやって……心配してみてくれてる人も。









「めだかちゃん………善吉くん…………みんな……」






徐々に……ではあるが、劉一は落ち着きを取り戻してゆく。

そして……

温かさの正体にも気がつく。

そう皆に抱きかかえられているから……。



「劉一……落ち着いた……?」

めだかちゃんが……そう聞く。

「う……うん。その……皆…ごめんね?その……僕……。」

俯いて謝った。

その時!


“ポカッ!”


頭に……拳骨が…

「あうっ。」

「違うであろう!言う事が。」

めだかちゃんはそう言う。

そして、皆も笑顔だった。

「そう……だね。だよね……。皆ありがとう。僕は……また 同じコトをしてしまうところだった……。」

劉一はそう言う。


「!!劉一…… いなくなったり……しないよな……?」

めだかちゃんは心配そうな顔つきでそう言う。

「それだけは……オレは嫌だぞ!劉一!」

善吉も……心配でいて……そして真剣な表情でそう言う。


「してしまうところ……だったんだよ。間違えを……さ。こんな僕でも……いてくれていいって言ってくれてるんだ。」

そして再び皆の方を見て。

「……もう一回言わせて…ありがとう。皆……。本当にさ……。」

今までの様な……暗い表情じゃない

笑顔で……そうはっきりと言う。

その笑顔をみただけで、皆……安心できたようだ。









劉一は、状態が状態だったからこの後もめだかちゃんを筆頭に皆かなり過保護気味になってたけど……。

とりあえず、問題はなさそうだった。

劉一も、いつも通りに戻っていった。

優しくて……真面目で優秀な劉一に……。

でも……問題だったのは……事後処理。

今回は規模がかなり酷い。

それもそうだ、校舎が……あの状態だもん。

「今回は……全部僕が悪いんだし……しょうがないよね……トホホ……」

劉一は……やっぱり頭を悩ます事になっていた。
















-75-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




めだかボックス 黒神めだか (1/8スケール PVC製塗装済み完成品)
新品 \4064
中古 \4980
(参考価格:\7800)