小説『めだかボックス 〜From despair to hope 〜』
作者:じーく()

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第76箱 「十三組の異常性……んなの示すのなんざ簡単だよ。」




























場所は再び食堂へと変わる……。



「この箱庭学園で正々堂々と実力で取り締まりやってるテメーらに比べりゃ オレなんてのは小知恵が回るだけのトリックスター気取りなただのガキだ。総合店じゃテメーらの方がよっぽどスペシャルだぜ。」

雲仙はサイコロを上に投げながらそう言う。

そして……視線を机に向け……。

「【だけどそれでも!十三組……オレ達のほうがよっぽど異常なんだ!】」



“ヒュッ!カランッ……カッカッ……。”



机に向かってサイコロを放り出した。

それは……少し回りながら……やがてある事実を示す。

それは……。


「「え……!!」」


周りにいた風紀委員は気づいたようだ。

「うわっ!何コレ!?全部6!?気持ち悪っ!!」


そう……



8つあるサイコロが【全て6】を示しているのだ。



驚愕している委員達を見て雲仙は。

「ケケケ!理解できたよーじゃねーか。この通り!十三組の異常を示すのなんざ簡単だ。【何かをすれば必ずそうなる】 そう!理屈じゃねーんだよ。オレ達は。こんなの技術とかで説明の付く現象じゃねーだろ?【オレ達アブノーマルは努力も環境も運も関係なく異常で気持ち悪い結果だけを常に出しちまうんだ。】そしてこの理屈じゃない異常を理論立てて解明しようってのが……まあ、所謂フラスコ計画なのさ。」

その説明に……改めて驚くのは委員のみんなだ。

表情からは緊張も見られた。

「あー ちなみに、このサイコロ占いは計画に参加する際理事長から試された実験でな。今頃黒神や御神もやらされてるとおもうぜ?……まあ、あいつらがどんな異常な結果を出すのかなんて想像したくもねーけどよ!」

笑いながらそう言う……。

一方ちょうどその時刻。


まずは、雲仙の言うとおりめだかちゃんがそのサイコロ占いを受けていた。

その結果は……。


「すみません。昔からこうなんです。私がサイコロをまとめて振ると……なぜか こんな風に積み重なってしまうのです。」

そう……。

8つのサイコロが全て積み重なっているのだ。

アンバランスだが……、間違いなく積みあがり止っている。

「あはは……そのせいで、ボードゲームの時、大変だったよね?」

劉一は苦笑いしながらそう言う。

幼少期は、スゴロク遊びもしてたんだけど……。
このせいで……サイコロは使えなかったんだよね……。 苦笑

「ふむ。そうだったな……。」

めだかちゃんは昔を思い出しているのか、少し遠い目をしていた。

そして、その結果をみた不知火理事長は……冷や汗を流しながら……。

「………いえ、それでいいんです。黒神さん。」

驚きを隠せない不知火理事長だった。

だが……次に劉一の方を見て。

「次は劉一くん。お願いしますよ。」

「え…?僕は前にしましたけど……またですか?」

劉一は……ちょっと驚きながらそう言う。

実を言うと彼も入学した時にコレを受けていたのだ。

だから、めだかちゃんだけだと思ってたんだけど……。

「まあまあ……もう一度お願いしますよ?【今回はズルは無しで】お願いしますよ……。」

細い目で……ニヤリと……。

この後の展開も読めていたようだね……。

案の定だ。

「なに……?劉一?ズル……?」

「わわっ!!そ……っそんな事してないよぉっ!ほんとだってめだかちゃん!!」

めだかちゃんが凄く……凄い眼力で……

そんな眼で見られ……監視なんかされたら……。

「不知火理事はそう言っておるぞ……?劉一………。」

めだかちゃん……だんだん傍に……。

「う……ううぅ………。」

めだかちゃんには嘘は通じないから……。

「ご……ごめんなさい……。」

直ぐに頭を下げた。

「む……?なら ほんとうにズルをしてたというのか?」

めだかちゃんは……まだ怖い顔を…… 苦笑

「やはり、そうでしたか……。カマをかけてみたんですが、的中したみたいですね。しかしなぜそのようなことを?」

不知火さんもどうやら……不思議に思ってたようだ。

そして……不知火理事が、今回の事で……最も驚いていたのが

劉一が意図的にサイコロをコントロールしていたという所。

そう……異常性を完全にコントロールしている可能性があるのだ。

そんな事、十三組の十三人でさえ、出来ない。

いや……誰にも出来ない。

出来た試しの無い事なのだ。

黒神めだかが最も理想に近しいものだと思うが……。

その影に隠れていた御神劉一……。


否 【人吉劉一】。


その人物の輪郭だ……。

嘗て、彼のことを最大級に評価していた者もいた。

そのものは……人外であり、この学園の頂点だと言っても間違いない存在。

今は理由があるようで、その存在は確認できないが……。



「そのっ……あのね……?めだかちゃん……。」

劉一は、話し出す。

「僕……あの時、めだかちゃん達に合わせる顔なんか無いって……思っちゃってた時だよね……。」

劉一は思い出しながら……申し訳なさそうに……。

「だから……噂で聞いていたサイコロ占い。これで……この結果で十三組かどうかが決まるって聞いてね……。それ以外は何組かわかんないから……一組になったのは偶然だったけど。結果的には良かったよ。……善吉に……めだかちゃんに会えたからね。」

そういい……最後には笑みを見せていた。

「そう……だったのか。」

めだかちゃんは……

劉一の言葉を聞き全て理解した。

そもそも……自身を偽ったり、不正をしたりとはしたりしない男だ。

そもそも私が釘を刺さずとも……だ。

だが、あの時は……。

私達を守ってくれていた時の事だ。

「それならば仕方が無いな!私も納得だ!構わない!では今回は不正為しで頼むぞ!劉一!」

めだかちゃんは笑顔になっていた。

「あっ……うん。ごめんね。僕……。」

劉一はまだ気にしているようだ。

「もう良い!私の間違いだった!劉一は……私の劉一はそんな事などしない男だ!」

はち切れんばかりの……笑顔だ。

「う……うん!勿論。次は小細工なんてしないよ!」

サイコロを受け取る。

「では……頼みますよ?劉一くん。」

不知火理事も…その事実を聞いて合点がいく。

この劉一と言う男の普段の性格を考えたらそうであろう。

コントロールをしている……その点は驚愕を通り越している事実だが……。

この際は良いのだ。

結果さえ……わかれば。

「じゃあ……いきます。」

劉一はサイコロをとると…


“ヒュッ……。”


それを机の上に放り投げた。


“カランコロンッ………。”


それらは……まるで生きているかのように……。

机中を踊りまわっていた。











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