第77箱 「全く扱いづらいですね…… 『十三組の十三人』は……。」
“カランコロンッ……カランコロンッ……カランコロンッ………。”
机の上でまるで踊りまわる……。
そのサイコロたちは止まる気配が無い。
「………………。」
「………………。」
「………………。」
三人は暫く凝視していた。
でも……。
ま〜〜〜ったく止まる気配が……。
「あ……ははは。めだかちゃん。よろしくね。」
劉一は苦笑いしながらめだかちゃんにそう言う。
「うむ。」
めだかちゃんは頷くとサイコロを素手で止めた。
「!!何をしているのですか??」
サイコロを手で止めるとは思ってなかった不知火理事は、驚きながらいっていた。
不正を嫌う黒神めだかがそんなことをするとは予測してなかったようだ。
「あっ……。その、すみません。説明不足で……。」
前に 何度もあったことだったから、構わずめだかちゃんに頼んだんだけどね。
「私もそうだったな。失礼しました。不知火理事長。その、劉一のサイコロが止まるのを待っていたら日が暮れるどころか、新学期が終わります。」
めだかちゃんは説明を続けた。
劉一のサイコロ……。
その異常性は勿論めだかちゃんは既に知っていた。
子供の頃に遊んだときもそうだった。
めだかちゃんはサイコロが積みあがってるし。
めだかちゃんの番では成立しない。
そして、その積みあがったそのサイコロを笑顔で崩していたのは善吉。
そして漸く成立するのだ。
その次に劉一の番。
そのサイコロは………まるで生きているようで……。
いつまでもいつまでも止まらなかった……。
そして、その日の遊び時間が過ぎちゃって……。
善吉も残念そうにしていた……。
次の日も……そうなってしまいそうだったので、めだかちゃんが止めてくれていたのだ。
そう言う流れがそこで生まれた。
「その……だから、めだかちゃんに止めてもらいました。何でかわからないんですが……。僕がサイコロを振ると止まらないんです。止まりかけたら……別のサイコロが当たって更に回って……その先も同じ感じで……。」
つまりは……【異質】なのだ。
「それは……なるほど。理解いたしましたよ。」
不知火理事は……表情はなるべくそのままにして言ってはいたが……。
戦慄……はしる。
そう、
あの口ぶりなら、手を加えない限り、回り続けるのだ。
宇宙空間のように摩擦が全く無い場所なら兎も角。
【目が出ない。】
異常……アブノーマル では無く……。
全く別のもの、そう感じずにはいられない。
異質……ヘテロジーニアス………。
「あの……?不知火さん?」
考え込む理事長に覗き込むように……。
「あ……いえ、すみません。考え事を少ししてました。」
不知火理事は、2人の方を向きなおした。
場所は再び食堂……雲仙先輩達の会話となる…。
「【天才がなぜ天才なのか?】それを解明し、【人為的に天才を作り出そう】ってのがフラスコ計画の最終目標でよ。俺はその為の実験体を勤めていたってわけさ。」
フラスコ計画の真の部分を皆に伝える。
当然驚きを……隠せない。
「……天才を……作る……。」
鬼瀬も動揺していた。
「教育機関が行うプロジェクトとしちゃまっとうだろ? だけどよ、ちぃとばかり内容に問題があるプロジェクトでな?正直 俺は あの2人のおかげで抜けられてほっとしてるぜー!」
ちらりと善吉の方を見てそう言う。
「………その話 もうちょっと詳しくきかせてもらっていいですか?雲仙先輩。」
「♪」
善吉は大真面目!
不知火は何やらニヤリ顔! 苦笑
「おー 人吉ィ ちょーどいいわ。オレもテメーに話があったんだよ。」
雲仙は善吉の方を見てきりだしていた……。
「フラスコ計画の定員は十三名。十三組の中から更に選抜された『十三組の十三人』が計画を進めています。」
再び理事長室に。
「雲仙君はその十三人の中の重要なひとりでしてね? 本来 一年生のうちはこのプロジェクトには参加できないしきたりなのですが。雲仙君を退けた、貴方達ならば十分に資格があるでしょう。【補佐】と言うポジュションを許可したのも 今回の事を予知していたのかもしれませんね。十三人から十四人になったとしても……。問題視はしません。黒神さんに加えそして劉一くんもね。」
理事長はそう言う。
「勿論 計画参加者には それ相応の報酬が用意されて………。」
本題に向かおうとしていた時。
「不知火理事長。お話はそこまでで結構です。」
めだかちゃんが話す。
「おお!黒神さん!では?」
決断の早いのも黒神だ。
だからこそ、期待したが……。
「いえ、申し訳ありませんが、ここで正式にお断りをさせてください。私は見知らぬ他人の役に立つために生まれてきました。私のささやかな能力の裏打ちはそれで十分です。そして天才などいない。それが私の持論であり。そのプロジェクトは そんな私が協力できる類の計画では無いでしょう。無論劉一の意見も聞きますが。」
めだかちゃんはこっちを見る。
「僕はめだかちゃんの補佐だよ?会長の方針にはしたがうよ。僕だって……天才はいない。そう思うからね?不知火さんには申し訳ありませんが……。」
深く頭を下げた。
「……雲仙二年生をリタイアさせてしまった償いは別の形でさせてください。では これで失礼します。」
「…………。」
めだかちゃんと劉一は、そういい……出て行った。
そして……。
「ふぅ、やれやれ……。こんな事なら内容を伏せたまま協力をしてもらうべきでしたかね?劉一クンは、元々お人よしですし。問題ないと思っていたのですが……。黒神さんが断った時点で、彼の参加も不可だと言う事も直ぐに理解できますからね。」
お茶をすすりながらそう考える。
「やはり 私は盲目しておりましたね……。彼……彼があれほど底がしれないものだとは……。一見するだけではわからない筈です。黒神さんの補佐……今は黒神と言う巨大な器の奥底に潜んでいたようです。」
お茶をすするその表情には……薄っすらと笑みが現れていた。
「さて……。」
お茶を……机に置く。
その瞬間!
理事長の背後に数人の人物が……いつの間にかいたのだ。
「君達はどう思いました?」
背後に来ているのを確信した理事長は聞いていた。
「僕には理事長が言うほどたいした奴らには見えませんでしたけどね……。まあ、サイコロ占いの結果には驚かされましたが、彼女とその彼氏……僕達がここにいるのにも気づいた様子はありませんでしたし。」
☆ 宗像 形
所属: 三年十三組
血液型: AB型
験体名: 『|枯れた樹海』
「いやあ 俺の見たところありゃ、わかった上で無視してたっつー感じだぜ?とりあえずさ、5〜6回は殺そうとしたけど……全部失敗しちゃったもん。あの彼氏。相当大事にしてるみてえだな?」
☆ 高千穂 仕種
所属: 三年十三組
血液型: AB型
験体名: 『|棘毛布』
「いずれにしてもさー!あの子達?どっちなのかよく知らないけどさっ?2人掛りだとしても雲仙君に勝てたのはただのマグレだと思うよ!でもまっ 好きだね、ああいう子はさ! 男の子のほうが特に好きかな?可愛いし♪」
☆ 古賀 いたみ
所属: 三年十三組
血液型: AB型
験体名: 『|骨折り指折り』
「私は意見を有しない……。思う事など何もない……。」
☆ 名瀬 夭歌
所属: 三年十三組
血液型: AB型
験体名: 『|黒い包帯』
「いいんじゃない?あれなら人数合わせにくらいはなりそうだし?理事長がいいなら別に十四人でも十五人でもいいと思うし、結局僕と王土がいればそれでフラスコ計画はなりたつんだしさ。」
☆ 行橋 未造
所属: 三年十三組
血液型: AB型
験体名: 『|狭き門』
「うむ。女の方はあれだけの美貌だ。オレの視界に存在する事を許してやってもよかろう。男の方はよくわからんがな。」
☆ 都城 王土
所属: 三年十三組
血液型: AB型
験体名: 『|創帝』
6名……『十三組の十三人』のメンバーだ。
「ははは…… 君達にかかれば、あの化物生徒会長とその補佐も形無しですねえ。」
笑いながらも……
心中はそうでもない。
扱いづらさに多少は手を焼いているようだ。
(史上最強のモルモット集団ですからね……。しかし まあ、要求に応じてくれるだけ他の6人よりは見込みがありますか。)
「だけど 理事長さん!私としてはあの子達が計画に参加してくれたらいーなーって思うけど 誘いはつれなく断られちゃったじゃん!どーすんの?」
天井からぶら下がっている古賀がそう聞く。
「心配ありませんよ古賀さん。君達がそうであったように……直ぐに参加させてほしいとあちらから頼んでくるでしょう。劉一くんに関しましては彼女が参加ならば来てくれると確信できます。」
目を大きく開いてそう言う。
「んー まーそーか!あんまり素直に応じられてもノーマルな感性だしね?やっぱ あの男の子……そうなんだね〜♪そこもまた可愛いかも♪」
あははは〜と笑いながらそう言っていた。
「それよりも、彼女達の身が気がかりです。フラスコ計画は十三組性の中でも秘中の秘ですが、それでも 知っている者は知っていますからねえ。……あの2人を潰せれば参加することが出来ると考える輩もいるかもしれません。」
そう心配?をしている……。
本心でそう思ってる訳は無いと思うが……。
その不知火理事の危惧は的中する事になるのだった……。
「ふぅ……。」
劉一はため息をしていた。
「ん?どうかしたのか劉一?」
そんな劉一に気が付いたのかめだかちゃんは、歩く速度を落としこちらをみる。
「え……っと、不知火さんだけど、ちょっと慣れなくてね……。変に緊張しちゃったんだ。」
たははは……と笑いながらそう答えた。
「そうか。」
めだかちゃんも思うところがあるのだろう。
その辺りは言及せず、ただ笑っていた。
そんな時だ。
「394854……?09801762950……。」
何やら数字を呟く声が……。
「ん?」
劉一がふと前を見ると…。
自分の頭上に何かが降ってきた!
“ズガァァァァァァァァァッ!!”
それが鉄球だと言うのはこの時はわからなかった。
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