【 第10話 】
姫様の歌は実にすばらしかった。
今でも俺の頭に残っている。
「ひー夜はやっぱり寒いなぁー」
無事、姫様のコンサートも終わり俺は今、姫様が出てくるのを待っていた。
エクレとリコは先にビスコッティに帰っていった。
と言うことで俺は今、1人で寒い中待っている。
「勇者ココロさま〜」
俺が待っていた方と違うドアから姫様が出てくる。
「早く来てください姫様ぁ」
俺は少しイジメるような感じで言ってみる。
「ごめんなさいです勇者ココロさま」
「こちらこそこんなところで姫様とお話が出来るなんて」
「私もです」
「ここは寒いので帰りながらでもしゃべりましょう」
「そうですね、ここは寒いです」
姫様はここまで連れてきてもらったらしいので、俺が姫様が着替えている間に話しておいた。
俺と姫様は門を目指して歩く。
「あっそうそう、姫様にはココって呼んでほしいな」
「いいんですか?ココって呼んでも」
俺はこの世界に来てココロorココと呼んでくれる人がいない。
勇者、勇者と言われ続けてなんか疲れていた。
「姫様だけですから!」
「嬉しいですココ!」
姫様にココって呼んでもらえるとなんか嬉しい気持ちになれるなぁ〜。
シンクとは違ってな。
「さあ。姫様こっちに来てください」
門に着き姫様は歩いて帰ると思っていたのか少し前に歩き始めていた。
姫様は俺の横に戻ってくる。
「さあ。勇者列車で帰るとしましょう!乗りますか姫様?」
一応、俺は姫様に聞く。
「はい!」
姫様は笑顔で答えてくれる。
俺の予想ではエクレとリコ達が帰ったのが30分前くらいだから……
追いつこうと思えば追いつけるはずなんだけど……
今は姫様と2人っきりだし、話をいっぱい聞きたいからゆっくり行こう。
俺はトルネイダーを呼び出し姫様を乗せゆっくりとビスコッティへと帰る。
「今日の活躍すごかったです」
「ありがとうございます」
「これからもビスコッティの勇者としてよろしくお願いします」
姫様にそれを言われると俺の話が終わってしまう。
俺は帰れるのかを聞きたかったのに……
とにかく俺の聞きたかったお話は終了してしまった。
「喜んで!」
俺は苦笑いして答える。
「姫様、今ならエクレやリコに追いつけますよ」
俺はそう言って姫様の返事を聞かず輝力を集中させトルネイダーのスピードを上げる。
トルネイダーはローラーよりもものすごい速さで進む。
「ココ、輝力の使いすぎには気を付けた方が……」
「わかっていますよ姫様!」
俺は速度を下げずビスコッティへ向かって進んでいく。
「もう神剣パラディオンは使えるようになったのですね」
「おかげさまで」
「あの〜お願いがあるのですココ」
「なんですか姫様?」
「そのですねこれから毎朝お散歩を一緒にして頂けないかと」
「いいですよ姫様、俺が姫様と散歩が出来るなんて」
姫様の笑顔で喜んでくれる。
そうこう話しているうちに前に人影が見えてきた。
トルネイダーをちょっと上向きにし空を飛ぶ。
「わぁぁ〜」
姫様は驚いたようで嬉しがっているような顔をする。
「姫様、上を見てください」
俺はそう言い姫様と上を見上げ雲一つない夜空をみる。
「星、きれいですね」
姫様は俺の方を見る。
こっちを見たときの姫様は素敵だった。
星々に照らされいてさっきとはまた違う輝きを放っていた。
「姫様もきれいですよ」
ついつい言ってしまった。
姫様は頬を赤くする。
「さあ。おりますよ」
俺は気を逸らせるため下に下りることにした。
正直恥ずかしかった。
俺と姫様を乗せたトルネイダーは地面の少し上に下りさっきと同じスピードで走り出す。
さっき見えた人影がはっきりと見えてきた。
そう、エクレとリコだった。
2人は仲良く話をしながら帰っていた。
トルネイダーのスピードを下げ2人の横で進めるようにする。
「姫様!エクレとリコがいましたよ」
「本当ですかココ、2人とお話は出来ますか?」
「はい、出来ますよ!待っててください」
俺はトルネイダーを2人の横に走らせる。
「よっエクレ、リコ!」
「2人ともこんばんはです」
「ゆっ勇者ぁに姫様!」
エクレは俺がいたことに驚き、そこにいた姫様を見てもう一度驚いた。
「姫様、こんばんはであります」
リコは姫様にだけ挨拶をする。
そうして姫様は楽しそうにエクレとリコとお喋りをする。
俺もたまに話に入りながら……
こうして話しているうちにビスコッティの街が見えてきた。
「さあ。姫様、もうすぐ着きますよ!」
そう言って少しずつスピードを下げ門の前に着く。
「ありがとうございますココ」
俺は姫様を降ろしてトルネイダーをしまう。
「ところで姫様、俺はどこで寝たらいいんですか?」
「フィリアンノ城でココの部屋は用意してあります」
なんと!
俺は城で寝れるのか。
「ありがう姫様」
俺は姫様の頭をなでる。
「いっいえ///」
姫様の尻尾が左右に揺れる。
可愛いなぁ〜。
会って1日目なのに俺の心がこんなにバクバクするなんて。
俺はバクバクの心を抑えながら姫様と城に向かった。