小説『おひナイ』
作者:五月雨桜花()

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 明日はみんなでプールの日だ。

 なのになんで俺はデパートの女性用の水着売り場に来てるんだ?

 いや、理由は俺にだってわかるさ。

 姫華が明日のプールの水着を買うらしい。

「翁牙様、これはどうですか?」

「あ、ああ。良いんじゃないか?」

 ……なんで俺までついて来ないと行けないんだーーーーー!

「真面目に応えてください! 私は真剣なんです」

「わかったよ。……もう少し肌を出したらどうだ?」

 説明しよう。今姫華が着てるのは、首から上と手と足しか出ない青の全身タイツみたいな水着だ。なんでこんなもの売ってんだよ! って思うがまあいい。

「せっかく遊びにいくんだし、どうせならもっと派手な感じの方が思い出になると思うぞ」

「そうですね。じゃあ少し変えてきます」

 スタイル良いんだから、いっそのことビキニとかでいいだろ。

 とか思ってたら戻って来た。

 試着室に入って少し経って出て来た。

「ど、どうですか?」

「ブハッ!」

「大丈夫ですか!?」

「ああ。大丈夫だ、問題ない。いいんじゃないか、でももう少し露出度を落とそうな、な!」

「なんでですか!」

 なんでって、紐みたいな赤い布だぜ。俺としては大歓迎だが、その格好でプールには行かせられない。

「とにかく変えてこい、色は今のままでいい」

「わかりました……」

 残念そうにするなよ、俺も残念だ。

 しかし、いやー。

 赤っていいよな。



 てな感じでグダグダに姫華の水着選びは終わった。


「ちょっと寄ってきたいところがあるんだが、いいか?」

「いいですよ。水着選びにも付き合ってもらいましたし」

 そう言って俺はアクセサリーショップに行って、浮き輪を持った水着姿のゲコニャンのストラップが付いた髪留めを買った。

「これもプールに持っていって、いつものゴムを外してこれを付けて泳げよ。防水仕様だ」

「あ、ありがとうございます! 今日は買ってもらってばかりですね」

「そんな事気にするな。迷子にならないようにだから」

 なんだか気恥ずかしくなって、顔を逸らす。

「ふふふ、この年で迷子になんてならないですよ。翁牙様は心配性ですね♪」

 顔は終始笑顔だし、声がいつもより弾んでるな。

 こんな姫華は久しぶりだ。

 それだけにやはり、頭には不安がよぎる。

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