小説『おひナイ』
作者:五月雨桜花()

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 日曜日。

 天気は狙ったかのようにぎんぎんの快晴だった。

 しかし俺の心は暗雲が立ち込めていた。

 まあ、雷がが鳴ろうが雹が降ろうが今日俺たちの行く施設にはあまり関係がないのだが。

 全天候型レジャー施設。

 その魅力はなんといっても充実した屋内設備だ。いくつものプールとアトラクションを完備した屋内ドーム。

 人工的に作られた常夏の楽園。

 春だろうが冬だろうがエンドレスサマー。

 なんて言うことも億劫なテンションだ。

 はっきり言うと行きたくない。

 ジローは偽だとしても女の子とのデートということでものすごいテンションになっている。

 だが……、家を出るときに。

「楽しみですね♪」

 と言っている姫華を見たらなんだか楽しまないと損な気がしてきた。

 だから。

「そうだな、久しぶりに大人数で遊ぶ機会だしな」

「ちゃんと荷物持ってきましたか?」

「おっ! なんだか今日はメイドさんっぽいな」

「ふっふっふ〜、いつまでも甘く見てもらっては困ります。私だって日々成長しているんですよ」

 ふふんっ、と胸を張った。

「……ちなみに何を持ってきたんだ?」

「えーっとですね、まずは水着と髪留めとタオルとゴーグル」

「うん、まともだな。他には?」

「うーん、携帯用スタンガンと携帯用ナイフと手錠とロープくらいですね」

「うん、ちょっと待とうか。後半なんかおかしいよね」

「そんなことないですよ。身を守るための最低限の装備ですが何か?」

「いや、姫華は武器とか使えないだろ!?」

「情熱で使ってみせます!」

「無理だろ。……没収だ」

 全部回収しました♪

「待ってください! せめてスタンガンだけでも!」

「駄目だ。そんなに警戒するな、今日は楽しむ日だろ?」

「っ……………、わかりました。もしものときは私を盾にして逃げてくださいね」

「冗談、そう言うときは逆だよ」

 みたいな会話をしながら、集合場所のレジャーランドの入り口へ向かう。


 拳銃が無いことは気にするな……。

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