一応、ジローはそこにいた。
「何やってんだよ、俺たち一時間の待ってたんだぞ」
そこに広がっていたのは。
「……! ホントになにやってんだ。執事を縛ってお嬢様を侍らせて、しかも自分に手錠か? SかMかどっちなんだ」
「それに私たちは一時間待ってたんですよ」
「いや、違うんだ。勘違いだ」
「ジローくんが私を呼び出して無理矢理、スバルもいたんだけどジローくんが『動いたらこいつの……を……』とか言ってスバルを縛って、私に変態なプレイを強要するのよ」
「不潔です」
「いやいや、そんな事してないぞ。というかお前も全部言えよ、なんか卑猥な言葉みたいだろ。それにそんなこと言った覚えはない。どちらかと言うとこっちがやられそうだ。助けてくれ!」
ここでかける言葉は一つしかないな
「大丈夫、わかってるさ。俺はジローが変態でも友達のままだぜ☆」
「そんな優しい目で俺を見るな! ていうかお前わかってて言ってるだろ」
「〜〜〜〜〜〜♪ 何のことかな?」
「頼むからとぼけるのはやめてくれ、泣くぞ。それに俺の秘密ならもうバレてる」
「! …………そうか、まあ冗談はここまでだ。そうだな、お前たちがやったのは最初からわかってる。チキンなジローにこんなこと出来る訳ないからな。……涼月奏、お前たちの目的はなんだ」
「チキンって言うなよ……」
「あなたには関係ないわ。騎士野(きしの)翁牙(おうが)くん、クラスではヨルって呼ばれてるみたいね。騎士>ナイト>ヨルってとこかしら正直何のひねりもなくて残念よ。あえて言うなら、主人が騎士っていうのがおかしいわね」
「それこそ何もおかしくないさ」
「でも、もうあなたたちもただで帰す訳にはいかなくなったわ。今の私とスバルを見ちゃったから」
「そういえば、あんたは優等生で通ってたし、それにスバル様は完璧って感じだった気がするな。そう思うと、今のは致命的だ」
「それだけじゃない……というよりそれはあまり関係ないわ」
「じゃあ、何のことだ」
「気付いてないないなら別にいいわ、まだ帰ってもいいわよ?」
「それは出来ない相談だ、俺たちはジローと一緒に帰るからな」
「後悔しても知らないわよ。でもその前に絶対に誰にも言わないと約束して、誰かに言ったら文字通り社会的に殺すわ」
「そこら辺は大丈夫だ。俺たちを誰だと思ってる?」
「わかったわ、ジローくんが知ってしまったのは、スバルが女だってことよ」
「「は?」」
そんなことか、もっと重大なことだと思っていたのに。
「それなら知ってたぞ」
「残念ながら私もです」
「「「は?」」」
今度は向こうが驚く番だった。
「私は人を分析するのが得意なので、何回か見たらわかりました」
「それを俺が聞いたって訳だ」
「私は翁牙様専属のメイドですが、これくらいしか出来ませんので」
「大丈夫だってお前は俺の側に居てくれればいいんだ」
「「「ラブコメ禁止!!!」」」
「ボクの男装はもうみんなにバレているのか、えっと……」
ここで初めてスバル様が口を開いた。
「私は緋芽沢(ひめざわ)姫華(ひめか)です。それはありません。私ぐらいしか気付かないでしょう。それに、職業柄、口も固いですし」
「ということだ。そろそろジローが捕まっている理由を教えてくれないか」
「ああ、そうね。………………」
要約すると、あれからトイレに行ったジローは、ちょうどスバル様が使っている個室に入ってしまい、鍵が開いていたので中を見てしまった。
案の定女のスバル様は女物の下着をつけており、それを見たジローは色々あって逃げ、それをスバル様が追ったと。
理科室に逃げたジローは扉を塞いだが狂戦士と化したスバル様はそれを破り中に進入。
理科室での乱闘で落ちてきたビーカーからスバル様を守るためにジローは飛び込んだ。
一応守ることは出来たが、スバル様を押し倒す形になり、その反動で胸を触ってしまった。
胸を触られて、鼻血を出されて、女だとバレたスバル様はジローの記憶を消すことにした。
消化器で。
次に目を覚ましたのが保健室だ。
保健教諭の仲本先生は千円札10枚でビンタされジローを売ったらしい。廊下で会ったのはそのためだ。
スバル様は女だとバレると、執事をやめないといけないらしい。
ジローの女に触ると鼻血が出るチキン体質がバレ、それをバラさないからスバル様のことも黙ってなさいと言われ共犯を持ちかけられた。
そこに俺たちが現れたということらしい。
要約出来たか? 長いだろ。
「交換条件だ」
「どういうことかしら」
「俺の性癖を教えるから、それで手を打ってくれないか」
「……」
「返事は聞かないからな」
「ヨルやめろ、後悔するぞ」
「いいんだ、ジロー。俺の性癖は……
女の人に頭をなでられると本音が漏れる……だ」
「「は?」」
今回二度目だな。
「とにかくこれで俺も共犯だな。実はもう一つ性癖があるがそれはまた今度だ」
「えっ、ええ。わかったわ。それとスバルのことは様を付けずに呼びなさい。私のことは何でもいいわ」
「了解だ」
こんなことで、これといって日常が変わることもないだろ。
そう俺は思っていたんだ。