「よう、ジローたち。どうした?朝から不景気そうな顔してんな」
ジローが教室の席に着くなりクラスメイトで俺たちの友達の黒瀬が話しかけてきた。
意気消沈のジローの代わりに俺が答えてやろうと思って、しゃべりだした。
「実は今日のジローは……」
「不潔です」
その言葉に見事に間の手を入れる姫華。
「ちょっと待て、それだと俺が汚いみたいじゃないか!」
「「「えっ、違うの?」」」
適当な会話なのに黒瀬は話に乗ってくれる。相変わらずノリのいい奴だ。
「違うに決まってんだろ! 今日は朝からみんなして酷いな」
「まあそんな事は置いといて」
「そんな事!?」
「ジロー、今日スバル様と登校してきたってホント? あと、ヨルも奏様と登校したらしいな」
ぶはっ
とは行かなかった、ジローも同じようだ。
ていうかなんで知ってんだ?
「来る途中に偶然会っただけだよ。別に仕組んだ訳じゃない」
「俺は奏のストーカーしてみたらバレただけだ」
「翁牙様!?」
そんな驚くなよ、ていうか姫華は知ってるよな?
「だよな、そんな事だろうと思った」
「待ってくれ、冗談だ。誰か突っ込んでくれ」
「いや、今回の本題はそこじゃないんだよね」
「本題って何だ」
「ジローがゲイか? ってこと」
ぶはっ
今度こそ吹いた、ジローが。
「あっ、やっぱ違った?」
「当たり前だ!」
「もしかして、バイ?」
「ざけんな! なんでだ! どうしてそんな根も葉もない噂があるんだよ!」
「…………?」
「…………!」
長くなりそうだったので、無視して姫華と一緒に自分の席に着いた。
ちなみに姫華は隣の席だ。
あれ以上あそこにいるのはちょっとね。
だってねぇ、ゲイだのバイだの言われても俺違うし。スバルと一緒にいなかったからファンクラブに目も付けられてないしね。
というか単純に、ジローに巻き込まれたくなかったから。
さっき、あんなにいい話したのに……、と思わなくもないけどな……。